異世界スキルガチャラー
第一試合 トレーサーウルフ:ゼクス
「グルルルル……」
「くそっ、狼にはいい思い出が無いって言うのに」
『あー、そういえばそんなこともありましたね。ですが今回はラッキーですよ、5分間つまり300秒の間逃げ回ってれば何とかなるってことですから。無理に戦わず、要所要所でスキルを使って切り抜ける感じで』
「まあ、そうだな。しかし、5分って短いようで戦いの時間じゃけっこう長めだ。耐えられるかどうか……」
だが、啓斗がそんなふうに悩んでいる暇は無かった。
その間に、狼たちは瞬時に散開して襲い掛かってきている。2体が正面から、もう2体が異常なジャンプ力で跳躍して空中から、残り2体はなんと壁を走って啓斗を挟み撃ちにしてきた。
背後が壁なので、事実上啓斗に逃げ場はない。
「くっそ、いきなり大ピンチか!」
『前方に防御スキルを展開しつつローリングで回避してください!』
ナビゲーターの言葉に従い、啓斗は飛び込みざまに【ジャストシールド】を発動しながら派手に前転する。
前にいた2体が噛みつこうとしてきたが、シールドに弾かれて逆に数メートル飛び退いた。
『ほお、あっさり終わってしまうかと思いましたが、さすがはマギクニカの外から来た〈魔法〉が使える人間といったところでしょうか! 窮地をなんとか脱しました!』
『……ですが、いったい何をしたんでしょうか? こちらでいうところの反発性のバリアのようなものを使ったような感じがありましたが』
啓斗が現在進行形で命がけの戦いを繰り広げている間にも、ヴェローナとレイラの2人は楽しそうに実況中継を続けている。
「この連携、流石に機械だな。統率が完璧だし、逃げる方が逆に危険か……?」
『そうかもしれません。あ、いいこと思いつきました』
「なんだ?」
『さっき手に入れたスキルを使うんですよ! 確かアレの効果は……』
「……そうか、なるほどな。完璧な動きをする機械を完全にコピーしてやればいいわけだ」
『そーいうことです。それじゃ、いっちょかましてやりましょう!!』
「…………この地下だな、任務は遂行する。主君のために」
ジャンクヤード・ジャンキーズの住処の真上に位置する場所。そこに、漆黒の軍服に身を包んだ女が立っている。
「まずはこのマンホールの蓋のような入口を……」
と、その時。
突如背後に現れた圧倒的な威圧感と、禍々しい殺気。
女が振り向こうとした瞬間、その胸にいきなり風穴が開く。背中から胸を何かで貫かれたようだ。
「ガ……フウッ……!?」
胸から大量に出血し、口からも派手に吐血しながらその場に崩れ落ちる。
脚の力が抜け、顔から地面に倒れて意識を失う間際、巨大で長い何かの尾を見た気がした。
『おおおぉぉ!? これは、いったい何が起こっているんでしょうか!? トレーサーウルフがいきなり倍の数に増え、しかも6対6で戦っています!!』
『これは確実に魔法という物が作用しているんでしょう。挑戦者に攻撃しようとしている本物を、偽物が完璧に守っています。しかし、攻撃力が高いせいで互いにもう限界が来始めてます』
啓斗が状況打開のために発動した新スキル【敵対鏡像】は、思った以上に効果を現した。
完全にトレーサーウルフの姿を(水のような透き通った色をしている以外は)模したコピーは、啓斗を守るように行動し始めた。
そして啓斗を襲う本物のトレーサーウルフに反撃し始め、今に至る。
完璧に能力が同じということもあってか、どちらが優勢ということもなく、既に規定時間の5分のうち3分と40秒が経過していた。
『ちょっと、これじゃ視聴者の皆さんに売り込みできないじゃない! いつも通り権利書をオークション形式で販売しようと思ってたのに!』
『まあ、でも相手が相手ですから仕方ないです。ああ、ロボット製造会社や個人経営の警備会社の皆様、ご安心ください。ヴェローナが納得しなかったからと言ってオークションそのものを中止したりはしませんので』
そんな話をしているうちに、大きなブザー音が鳴る。どうやら5分間が経ってしまったようだ。
『っはー、規定時間になってしまいました。少々ヒートアップ不足ですが、第一試合はこれにて終了します。では、第二試合のための準備をしますので、ほんの少しだけお待ちください』
それと同時に狼は全て動きを止める。
『ああ、挑戦者の方に注意をしておきます。そのトレーサーウルフはあと4秒後に全て自爆しますので、回避を推奨します』
「……はぁ!?」
『では、第二試合も期待していますよ』
啓斗が全力で狼から離れた1秒後、鏡像も含めた狼が全てその場で漏れなく爆発した。
「くそっ、狼にはいい思い出が無いって言うのに」
『あー、そういえばそんなこともありましたね。ですが今回はラッキーですよ、5分間つまり300秒の間逃げ回ってれば何とかなるってことですから。無理に戦わず、要所要所でスキルを使って切り抜ける感じで』
「まあ、そうだな。しかし、5分って短いようで戦いの時間じゃけっこう長めだ。耐えられるかどうか……」
だが、啓斗がそんなふうに悩んでいる暇は無かった。
その間に、狼たちは瞬時に散開して襲い掛かってきている。2体が正面から、もう2体が異常なジャンプ力で跳躍して空中から、残り2体はなんと壁を走って啓斗を挟み撃ちにしてきた。
背後が壁なので、事実上啓斗に逃げ場はない。
「くっそ、いきなり大ピンチか!」
『前方に防御スキルを展開しつつローリングで回避してください!』
ナビゲーターの言葉に従い、啓斗は飛び込みざまに【ジャストシールド】を発動しながら派手に前転する。
前にいた2体が噛みつこうとしてきたが、シールドに弾かれて逆に数メートル飛び退いた。
『ほお、あっさり終わってしまうかと思いましたが、さすがはマギクニカの外から来た〈魔法〉が使える人間といったところでしょうか! 窮地をなんとか脱しました!』
『……ですが、いったい何をしたんでしょうか? こちらでいうところの反発性のバリアのようなものを使ったような感じがありましたが』
啓斗が現在進行形で命がけの戦いを繰り広げている間にも、ヴェローナとレイラの2人は楽しそうに実況中継を続けている。
「この連携、流石に機械だな。統率が完璧だし、逃げる方が逆に危険か……?」
『そうかもしれません。あ、いいこと思いつきました』
「なんだ?」
『さっき手に入れたスキルを使うんですよ! 確かアレの効果は……』
「……そうか、なるほどな。完璧な動きをする機械を完全にコピーしてやればいいわけだ」
『そーいうことです。それじゃ、いっちょかましてやりましょう!!』
「…………この地下だな、任務は遂行する。主君のために」
ジャンクヤード・ジャンキーズの住処の真上に位置する場所。そこに、漆黒の軍服に身を包んだ女が立っている。
「まずはこのマンホールの蓋のような入口を……」
と、その時。
突如背後に現れた圧倒的な威圧感と、禍々しい殺気。
女が振り向こうとした瞬間、その胸にいきなり風穴が開く。背中から胸を何かで貫かれたようだ。
「ガ……フウッ……!?」
胸から大量に出血し、口からも派手に吐血しながらその場に崩れ落ちる。
脚の力が抜け、顔から地面に倒れて意識を失う間際、巨大で長い何かの尾を見た気がした。
『おおおぉぉ!? これは、いったい何が起こっているんでしょうか!? トレーサーウルフがいきなり倍の数に増え、しかも6対6で戦っています!!』
『これは確実に魔法という物が作用しているんでしょう。挑戦者に攻撃しようとしている本物を、偽物が完璧に守っています。しかし、攻撃力が高いせいで互いにもう限界が来始めてます』
啓斗が状況打開のために発動した新スキル【敵対鏡像】は、思った以上に効果を現した。
完全にトレーサーウルフの姿を(水のような透き通った色をしている以外は)模したコピーは、啓斗を守るように行動し始めた。
そして啓斗を襲う本物のトレーサーウルフに反撃し始め、今に至る。
完璧に能力が同じということもあってか、どちらが優勢ということもなく、既に規定時間の5分のうち3分と40秒が経過していた。
『ちょっと、これじゃ視聴者の皆さんに売り込みできないじゃない! いつも通り権利書をオークション形式で販売しようと思ってたのに!』
『まあ、でも相手が相手ですから仕方ないです。ああ、ロボット製造会社や個人経営の警備会社の皆様、ご安心ください。ヴェローナが納得しなかったからと言ってオークションそのものを中止したりはしませんので』
そんな話をしているうちに、大きなブザー音が鳴る。どうやら5分間が経ってしまったようだ。
『っはー、規定時間になってしまいました。少々ヒートアップ不足ですが、第一試合はこれにて終了します。では、第二試合のための準備をしますので、ほんの少しだけお待ちください』
それと同時に狼は全て動きを止める。
『ああ、挑戦者の方に注意をしておきます。そのトレーサーウルフはあと4秒後に全て自爆しますので、回避を推奨します』
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