異世界スキルガチャラー

黒烏

ジャンキーズ・パーティナイト 2

2発の、小型だが抜群の威力を誇る(と本人が自負している)手榴弾の爆発した場所に向かって、青い塗装の手榴弾をさらに投げ込む。
間髪入れずに第二の爆発が起きた。

「さて……如何でしょうか」

素早く晴れた白煙の中から、両腕の龍鱗があらかた吹き飛びながらもダメージは負っていないルカと、無傷だが片膝をついている状態の啓斗が見えた。

「あっ……ぶなかったぁ……」
「【ジャストシールド】が間一髪……間に合ったぜ」

啓斗の両腕が白熱し始め、構えを取り直したルカの両腕には再び龍鱗がびっしりと生えた。

「やはり、この程度ではまともに太刀打ちできませんか。では、搦め手で」

少女は、腰にぐるりと巻いた手榴弾をベルトごと外すと、そのまま鞭を振るようにして大量の爆弾を飛ばしてきた。
全て赤い塗装が施された物で、2人の周囲にばら撒かれる。それは床に触れると同時に、大炎上を引き起こした。

「焼夷手榴弾かよ……! つーか、こんなに酸素薄い場所でここまで燃えるか普通!?」
「ケイト君、私が突っ切るから後ろから援護して!!」

ルカが全身に力を込めると同時に、再び全身が龍化する。そのまま、敵の少女と2人を分断している燃え盛る火炎に向かって突っ込んでいった。

「くそっ、俺も追わねぇと!」
『おい、落ち着け。ルカのように龍鱗があるならまだしも、この体は生身の人間だ。間違いなく焼け死ぬぞ!?』
「うるせぇ! さっさと行かねーとやばいだろが!」
『【ハイジャンプ】を使え! 上から奴の後ろに回り込んでルカと2人で挟み撃ちにするんだ!』
「……わぁったよ、お前の意見を聞くのはシャクだが、お前の方が戦況を見る能力に長けてるのは認めてやる!」

「啓斗」の言葉に従い、【ハイジャンプ】を発動。一跳びで火炎とルカ、ガスマスクの少女の頭上を越えると、着地と同時に前転し、そのまま方向転換して背後から襲い掛かる。

「一体どうやって背後に? まあ、私の方が一枚上手ですがね」

すると啓斗の足元から、「ピピピピピピ……」という電子音が聞こえてきた。
そこには、赤いランプが高速で点滅する超小型の地雷が仕掛けられていた。

「また爆破かよ……マジでいい加減にし」

言い終わる前に、そのサイズに見合う程度の小さな爆発が起きた。また一瞬で素早く消えた煙の跡に、右足がズタボロになった啓斗がいた。

「罠かよ……動き止めに来やがったな」
『落ち着け、動けなくてもできることはたくさんある。流れ出た血も使い方次第でいい武器になる』
「くそ、いちいち回りくどいんだよ! 俺はさっさと近づいてぶっ飛ばしてぇんだ! お前の言うことは聞かねぇ!!」

【ゼノ・ヒール】を発動させて右足を治すと、ブチ切れた表情で敵を睨みつけ、つい今爆弾に足を吹き飛ばされたことも忘れて突っ込んでいく。

『馬鹿、闇雲に突っ込むな!』
「うるせえぇぇぇ!!!」

しかし、こんな直情的な動きをしているにもかかわらず、他の地雷は次々と避けていく。そのまま第二発はもらわず、ルカとほぼ同時にガスマスクの少女に攻撃を仕掛けた。

「増援……1名到着しました」

その時、啓斗の耳はそんな言葉を聞いた。


いきなり視界の外から黒い影が現れる。そして、目の前の啓斗と背後のルカに向かって、両手に持っている拳銃の引き金を同時に引いた。
この黒い影も少女であった。本当に真っ黒な服に身を包み、露出しているのは好戦的な笑みを浮かべた顔の部分のみ。

「レイラちゃーん、大丈夫?」
「全く、来てくれるならもっと早く連絡を下さっても良いではないですか、ヴェローナさん」

突然の乱入者に意表を突かれた啓斗とルカが思わず距離を取ったのに乗じて、背中合わせに攻撃の構えを取る。
ガスマスクの少女「レイラ」はまた手榴弾を手に取り、到着した「ヴェローナ」は二丁拳銃を構えた。

「どうでしょう、勝機はありそうですかね」
「なぁに言ってるの、私たち2人がタッグを組んで戦った時に負けたことなんて無いでしょ?」
「そうですね、ではパーティを開始しましょう。もうすぐが到着しますからね」
「え?」
「おや、ヴェローナさんも予想外だったのですか? ここまでの高エネルギー反応を発しながら移動できる物体なんて、私はお一人しか知りませんが」

その時、この屋上よりも遥か上空からまた何か飛来してきた。
レイラとヴェローナが気配に気づいて一歩離れると、それとほぼ同時に2人の間にそれは着地した。

「お早いご到着ですね。ずっとローグさんのカメラから覗いてたんですか? 『ボス』」
「暴れるの好きなのは私も同じだけど、こんな場所まで飛び入り参戦してくるなんて本当に物好きなんですねー!」

2人の間に着地したのは、深紅の髪と、同色の尻尾と猫耳が目立つ背の高い女だった。
いや、啓斗とルカは「コレ」が臓器や筋肉、骨から構成されるような有機生命体ではないことを知っている。
その全身が、自分たちに致命傷を負わせるのに特化した狂気になりうることを知っている。
表面だけの皮膚が完全に元に戻り、数時間前に与えたダメージが見る影もなくなるほど元通りになったその姿を見て、改めて啓斗たちは戦慄を覚えた。

「ニャッハハハハ、 楽しそうだからついつい来ちゃったニャー。さあ、この間みたいに楽しく遊ぼうニャ、オニイサンたち!」

ベネット・レッドクルーは懐から何か筒状のものを取り出すと、それについたスイッチを押す。
ただの筒だったそれは、一瞬にして鋭利な大鎌に変形した。

「さあ、コロシアイしようニャ! 楽しませてニャー!」

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