異世界スキルガチャラー
スターアライヴ脱出作戦 4
「……これは驚きました。あの至近距離で手榴弾7個の爆発から生き延びるとは」
爆発によって発生した煙の真ん中に、人影が見える。これは、手榴弾でルカがバラバラに吹き飛んでいないという証拠だ。
「しかし、このスターアライヴの高さは地上720メートルだったはず。こんな場所に酸素マスクやボンベ無しで、しかもあんな軽装で来られるなんて、本当に人間ですか?」
ガスマスクを着けた少女は、ルカに向かって問いかける。だが、ルカからその返事を聞く前に背筋が凍り付くほどの戦慄を味わう羽目になった。
「……ガオオォォォ!!!」
煙を吹き飛ばすほどの圧の咆哮を放ち、ルカはその姿を敵に見せた。
再び大きく広げた翼、ズボンを突き破って出現する太い尻尾。上半身の衣服をバリバリと引き裂きながら生えてくる無数の龍鱗。その全ては、森林を思わせる深緑をしている。
縦に細く収縮した瞳は爛々と輝き、姿が透明になっているはずの敵に向かって鋭くその視線を向けていた。
「光化学迷彩を発動しているはずなのに、何故こちらの位置が分かる? この変貌した姿といい、分からない事が多すぎますね……」
そうやって困惑したのはこの少女にとって致命的な判断ミスだった。
起爆スイッチを上に向かって放り投げると、筋力が増強された龍人の脚力によって、ルカは一瞬で敵に近づき、そのまま両腕を押さえつけて押し倒した。
「オ前、マダ、私ノ邪魔、スルカ!!」
敵意と殺意を剥き出しにした視線を向けながら、怒号のような声で眼前の敵に問いかける。
その答えは、言葉ではない形で帰ってきた。
「ガッ……!?」
いきなり真横から飛んできた謎の鉄塊に、ルカは吹っ飛ばされる。
数メートル吹き飛んだ後に体勢を整えると、ガスマスクの少女の方向を見る。少女はゆっくりと立ち上がると、その鉄塊に近づく。
ルカからはただの「鉄塊」にしか見えていないが、それには確かに四肢があった。
しかし、ロボットのような頭部は無い。ただ、この少女の体が「搭乗」できそうな部分があり、その窪みにはこの「鉄塊」の四肢と少女の両手両足をドッキングできるようになっているようだ。
「試作パワードアーマーNo.04の性能テストには十分な強さかもしれませんね。では、さっそく始めますか。コード『サルベージ』起動」
そう少女が声を掛けると、屋上に散乱していた武器の類が全てこの「パワードアーマー」に吸い寄せられ、収納スペースになっているらしいアーマーの両腕と両肩に収納された。
少女はアーマーに搭乗し、両手両足をドッキングさせる。そして彼女が体を動かすと、アーマーも完璧に連動して動いた。
「では、まずは銃撃戦で様子見を……コード『クアトロガトリング』起動」
アーマーの両腕両肩から4つのガトリング砲が出現し、高速回転し出す。
それに呼応するようにルカの目つきがさらに鋭くなり、爪が肥大化して鋭利になる。
「邪魔、ヲ、スルナァァァ!!!」
「そういえば、投げられたスイッチはいったいどこに行ったのでしょうか。落ちてこないのを見ると、相当上空まで飛んでいるらしいですね。落下してくる前に始末しましょう」
ルカの放つ威圧感に微塵も怯まず、少女はいたって冷静にアーマーを動かし始める。
「はい、容疑者の1人を確保しました。現在は全身が麻痺して身動きが取れなくなっています。これからもう1人の居場所を吐かせますが、念のため応援をお願いします。はい、失礼します」
ミューズ・ブルーワース巡査は、捕らえた容疑者の身柄を引き渡すための連絡を本部に行うと、耳に当てていた薄型携帯端末をタッチしてポケット(ライダースーツは解除したようで制服に戻っている)に入れた。
(間違いねぇ、ありゃスマホだ。あのナビゲーターとかいうのも持ってたし機械帝国なんて名前だからもしかしてと思ったが、技術レベルはこの国と現代が同等、いやこっちの方が数十年分くらい上か)
言うことの効かない体を無理やり動かそうなんて意味のないことはせず、ひたすらに思考を巡らせる。
もちろん、ルカが地震を起こしてパニックが発生した際にどう逃げるかを考えているのだ。
(この麻痺作用の強さは相当だ。心臓の近くに命中したらそのまま逝っちまうこともあり得るだろう。だから、作用時間自体は短いはずだ)
『全身麻痺させてんのにわっざわざ手錠掛けてんのが良い証拠だよ』
(確かにな)
ついさっき、両腕を後ろ手に回されて手錠を掛けられた。
推測の通り、恐らく麻痺が消えても逃げられないようにできる仕掛けか何かが施された特殊な手錠なのだろう。
『混乱に乗じて破壊とかできそう?』
(問題ねー。まだ【ボルテージ】は発動しっぱなしだからな。今こうやって冷静さを保ってられてるのは動いてないからってだけだ)
『そう、ならいいよ。それじゃ、もーちょっと待ってみようか。出来るだけこの騒動をヴァーリュオンのみんなと無関係の事件にするのも忘れずにね』
(了解)
爆発によって発生した煙の真ん中に、人影が見える。これは、手榴弾でルカがバラバラに吹き飛んでいないという証拠だ。
「しかし、このスターアライヴの高さは地上720メートルだったはず。こんな場所に酸素マスクやボンベ無しで、しかもあんな軽装で来られるなんて、本当に人間ですか?」
ガスマスクを着けた少女は、ルカに向かって問いかける。だが、ルカからその返事を聞く前に背筋が凍り付くほどの戦慄を味わう羽目になった。
「……ガオオォォォ!!!」
煙を吹き飛ばすほどの圧の咆哮を放ち、ルカはその姿を敵に見せた。
再び大きく広げた翼、ズボンを突き破って出現する太い尻尾。上半身の衣服をバリバリと引き裂きながら生えてくる無数の龍鱗。その全ては、森林を思わせる深緑をしている。
縦に細く収縮した瞳は爛々と輝き、姿が透明になっているはずの敵に向かって鋭くその視線を向けていた。
「光化学迷彩を発動しているはずなのに、何故こちらの位置が分かる? この変貌した姿といい、分からない事が多すぎますね……」
そうやって困惑したのはこの少女にとって致命的な判断ミスだった。
起爆スイッチを上に向かって放り投げると、筋力が増強された龍人の脚力によって、ルカは一瞬で敵に近づき、そのまま両腕を押さえつけて押し倒した。
「オ前、マダ、私ノ邪魔、スルカ!!」
敵意と殺意を剥き出しにした視線を向けながら、怒号のような声で眼前の敵に問いかける。
その答えは、言葉ではない形で帰ってきた。
「ガッ……!?」
いきなり真横から飛んできた謎の鉄塊に、ルカは吹っ飛ばされる。
数メートル吹き飛んだ後に体勢を整えると、ガスマスクの少女の方向を見る。少女はゆっくりと立ち上がると、その鉄塊に近づく。
ルカからはただの「鉄塊」にしか見えていないが、それには確かに四肢があった。
しかし、ロボットのような頭部は無い。ただ、この少女の体が「搭乗」できそうな部分があり、その窪みにはこの「鉄塊」の四肢と少女の両手両足をドッキングできるようになっているようだ。
「試作パワードアーマーNo.04の性能テストには十分な強さかもしれませんね。では、さっそく始めますか。コード『サルベージ』起動」
そう少女が声を掛けると、屋上に散乱していた武器の類が全てこの「パワードアーマー」に吸い寄せられ、収納スペースになっているらしいアーマーの両腕と両肩に収納された。
少女はアーマーに搭乗し、両手両足をドッキングさせる。そして彼女が体を動かすと、アーマーも完璧に連動して動いた。
「では、まずは銃撃戦で様子見を……コード『クアトロガトリング』起動」
アーマーの両腕両肩から4つのガトリング砲が出現し、高速回転し出す。
それに呼応するようにルカの目つきがさらに鋭くなり、爪が肥大化して鋭利になる。
「邪魔、ヲ、スルナァァァ!!!」
「そういえば、投げられたスイッチはいったいどこに行ったのでしょうか。落ちてこないのを見ると、相当上空まで飛んでいるらしいですね。落下してくる前に始末しましょう」
ルカの放つ威圧感に微塵も怯まず、少女はいたって冷静にアーマーを動かし始める。
「はい、容疑者の1人を確保しました。現在は全身が麻痺して身動きが取れなくなっています。これからもう1人の居場所を吐かせますが、念のため応援をお願いします。はい、失礼します」
ミューズ・ブルーワース巡査は、捕らえた容疑者の身柄を引き渡すための連絡を本部に行うと、耳に当てていた薄型携帯端末をタッチしてポケット(ライダースーツは解除したようで制服に戻っている)に入れた。
(間違いねぇ、ありゃスマホだ。あのナビゲーターとかいうのも持ってたし機械帝国なんて名前だからもしかしてと思ったが、技術レベルはこの国と現代が同等、いやこっちの方が数十年分くらい上か)
言うことの効かない体を無理やり動かそうなんて意味のないことはせず、ひたすらに思考を巡らせる。
もちろん、ルカが地震を起こしてパニックが発生した際にどう逃げるかを考えているのだ。
(この麻痺作用の強さは相当だ。心臓の近くに命中したらそのまま逝っちまうこともあり得るだろう。だから、作用時間自体は短いはずだ)
『全身麻痺させてんのにわっざわざ手錠掛けてんのが良い証拠だよ』
(確かにな)
ついさっき、両腕を後ろ手に回されて手錠を掛けられた。
推測の通り、恐らく麻痺が消えても逃げられないようにできる仕掛けか何かが施された特殊な手錠なのだろう。
『混乱に乗じて破壊とかできそう?』
(問題ねー。まだ【ボルテージ】は発動しっぱなしだからな。今こうやって冷静さを保ってられてるのは動いてないからってだけだ)
『そう、ならいいよ。それじゃ、もーちょっと待ってみようか。出来るだけこの騒動をヴァーリュオンのみんなと無関係の事件にするのも忘れずにね』
(了解)
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