異世界スキルガチャラー

黒烏

クレイジー・ジャンキーズ 3

ベネットが上階(といっても地下1階なのだが)に戻ると、ローグの他に男が1人と小さな少女が1人いた。
男の方は汚れた黒い服を着た長身で黒髪、死んでいるのではないかと見紛うほど真っ白な肌をして、ボサボサ髪の頭を掻きながらタバコのようなものを吸っている。
少女の方は男と同じく薄汚れた服を着ており、外見年齢15歳ほど。何やら大きなゴーグルを頭にかけている。背中には彼女の身長並みの大きさの銃火器を3つも背負っており、両手に小型のサブマシンガンを持っている。

「あ、ジェドにヴェローナ! 久しぶりだニャー!」

ベネットが笑顔で声をかけると、2人共彼女の方を見て挨拶した。

「お、ベネットじゃん。久しぶりだねー、いやホント」
「ベネットさぁん! 何日も顔出さないで何してたんですかぁ!」
「いや、ローグとはちょいちょい話してたんだけど……」
「え、そうなんですか!? ローグ兄さん、私に連絡してくれてもいいじゃないですか!」
「ご、ごめんごめん。自分の仕事の方に夢中になりすぎて忘れちゃってた」

ローグに敬語で怒るヴェローナを横目に見ながら、ジェドはベネットに話しかける。

「なあ、ベネット。そろそろ俺達の仲間に加わる気になったか? そうすりゃ取引を値引きしてやっても良いんだぜ?」
「いーや、遠慮するニャ。キミたちジャンキー達の仲間になる気は無いニャ」
「そうか、まあ気が変わったら言ってくれ。地下5階はいつでも空いてるからよ……ククッ」

ベネットの鼻先に吹きかかるような煙を口から吐き出しながら、ジェドという男は地下の階段を降りていった。

「相変わらずのヤク中野郎だニャ。まだ分かんないんだけど、どうしてアレがここのリーダーなのかニャ?」
「どうしてって、お金のやりくりが上手いからだよ。それに、彼の作るドラッグはウチの1番売れてる資金源だからね」
「ここってやっぱ変な人しか住んでないシェルターニャねー……」

ベネットは肩をすくめると、ヴェローナに小さなメモを渡す。

「送信機が家だから手書きで今渡しとくニャ。お金は後で送金しとく」
「了解ですー。わ、ベネットさん直筆の注文書! 大事にします!」
「しなくていいニャ。じゃ、ローグはその武器の改造と腕時計の解析が終わったらアタシに知らせるニャ。報酬はその時決めるニャ」
「オッケーオッケー。じゃ、またねー」

ヴェローナとローグに挨拶すると、ベネットは梯子を上って外に出て、マンホールの蓋を閉めた。

「ふー、外の空気はやっぱり悪いニャー。さてと、1回家に帰るかニャー」

ベネットは鼻歌交じりに歩いて自分の家(というふうに主張して占拠している場所)に帰って行った。


「ジャンクヤード・ジャンキーズ」
ジャンクヤードのどこかに居を構えていると言われている犯罪者集団。
マギクニカの中央街では規模・構成員ともに一切不明の組織とされているが、ジャンクヤードに住む者たちの一部は、4人の変人の集まりとして有名。

B4住まいで唯一中央街で名が知られているリーダー「ジェド」はドラッグを作って裏で販売しており、自分も常習犯である。
B3の少女「ヴェローナ」は、裏取引の銃火器を取り扱う武器商人。ただし、趣味が自分で銃をブッ放すことで、交渉が気に入らないと相手を撃ち殺すことがある。お得意様と仲間には親切。
B2の「ミリア」は自称生物研究者。日夜様々な生物をベースに謎の手法でキメラや新生物を生み出して実験を行っている。「副業」として臓器売買や整形手術なども行っており、医学の心得もあるようだ。
B1に住む少年「ローグ」は、その筋では有名なメカニックであり、ハッカー。趣味は機械いじり(主に分解)で、現在はベネットに執心している。

こうした危険人物の集まりを、この内情を知っている数人は「イカれたクレイジー中毒者ども・ジャンキーズ」と呼んでいる。

そして、このベネット・レッドクルーという少女は、彼らから依頼を請け負う仕事人として生計を立てている。
なのでジャンキーズといえばベネットもその中に入るのだが、何故か本気で仲間入りしようとベネットはしないのである。

「今日はまだイベントが目白押しだニャ。仮眠だけ取っとこうかニャっと」






「……なんか啓斗様から腕時計が離れましたねー。うっかり落としたか、もしくは誰かに奪われたか」
『主様、緊急用の手段をお使いになりますか?』
「まだいいよ。啓斗様なら自力で取り返すはずだと思うしね」
『承知致しました』

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