異世界スキルガチャラー
2200連目 コネクト「魂の導き手」
啓斗が起床すると、腕時計は既に朝9時を指していた。
寝ぼけまなこのまま洗面台へ向かい(王城の個室は、風呂は無いまでもユニットバス式のシャワー室はある。ここのトイレやシャワーも全てマギクニカ製と書かれていた)、冷水で顔をバシャバシャと洗う。
眠気が飛んだところで起きるのがいつもより遅めになったのを少しだけ気にしつつ、部屋に備え付けてあるクローゼットの中にある着替えを手に取る。
今日はいつも着ている綿製のTシャツと、デニムらしき生地で作られたハーフパンツのジーンズだ。
「くあぁ……ふぅ。たまにはこうやって朝からのんびりしてもお咎めは無いだろ」
『そうですねー。今日はいい天気ですし、お散歩なんていかがですか?』
いきなり聞こえてきた声に振り向くと、等身大サイズのホログラムで現れたナビゲーターが、窓の外を眺めるようにして立っている。
実際にこの部屋にいるわけではないのは分かっているのだが、粗やバグらしきものも一切ないので、ホログラムであると知らなければ彼女のリアルな動作も相まって本当にこの場にいるのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「……いや、今日は城からは出ないことにする。出発日も近づいてきてるしな」
『そうですか。では、ご予定は無いんですね?』
「ああ、無い。訓練場にも今日は行かないでおくつもりだ」
『では、私に啓斗様の時間を1日頂けますか? 昨日実装した〈ソウルコネクト〉の詳しい説明をしてませんでしたので』
「昨日さっさとやっとけば良かっただろ」
『あれ、啓斗様お気づきでない? 私が出てきてるとルカさんから何かヤバいオーラが漏れ出してるんですよ。本人も無意識っぽいんですけど』
「あーっと……つまり、どういう意味だ?」
『私と啓斗様の距離感がお気に召してないってことですよ。ちゃんと啓斗様ご自身がルカさんを接してあげないと駄目ですからね? 何が暴走のきっかけになるか分からないんですから』
人差し指を立てて啓斗に注意した後、ナビゲーターはベッドに腰掛ける(念のためにもう一度言うが、彼女はホログラムだ)。
『私は啓斗様を導くのが仕事です。ですがそういう事情の部分は私が介入する場所ではないので、お願いしますね』
「……言っている意味が本当に分からないんだが」
『っかー、マジすか! あー、こりゃダーメだ、お互いに前進しないタイプだこりゃ』
「おい、いきなり投げ出すな! ちゃんと説明しろ!」
その後はナビゲーターがのらりくらりと啓斗の質問をかわしたため、この話題は終了となった。
そうこうしているうちに空腹なのに気が付いた啓斗は、食堂に行って朝食兼昼食を食べ終えた後、訓練場に向かうという騎士団の人々に挨拶だけして部屋に戻った。
部屋では、ナビゲーターが相変わらずのニコニコとした笑顔を浮かべながらベッドに座って待っていた。
「まさか、ずっとここにいたのか?」
『ええ、まあ。ここにいても啓斗様の会話やら行動やらは全てその腕時計型デバイスを通じて把握できますから問題ありません。例えば、さっき食堂で米が無いのか聞いてたこととか、訓練場でこれからゼーテさんが他の団員に稽古つけることになってるって聞いたこととか』
「お前、プライバシーって言葉知ってるか?」
『ええ、知ってますよ。ですが、完璧なナビをするためには主人について出来るだけ把握しているべきでしょう?』
「……どこからどこまで記録してる?」
『全部ですよ全部。あ、流石に入浴の時とかは体の状態の変化を記録するだけで映像で確認とかはしてないですよ』
ナビゲーターは困ったように笑うと、悪戯っぽい目線を啓斗に向けてきた。
『さて、こんな話をしたところで……私のコネクトレベルを1上げときましょうか。基本的に私とこうして2人きりで話してくだされば上がるって覚えといてください』
彼女が指を鳴らすと、啓斗の眼前に表示が現れる。
コネクト「魂の導き手」レベル1→2
コネクトスキル【MPブースト】解放
『私のコネクトスキルは、コネクトレベルが偶数になるごとに解放されます。人によって目安は違うので、知りたかったら聞いてください。では、今日のガチャをどうぞ』
啓斗はいつも通りの手順でガチャ画面を呼び出すと、そのまま画面をタップする。
普通のガチャであれば手動で回す必要のあるハンドルが自動的に回転し、排出口から無数の光球が吐き出される。
その中に、見慣れない白色の光球があった。
『コネクトスキルは専用の色彩を持った光球で排出されます。クセが強いスキルも多いですが、ほとんどがURスキル並みかもしくはそれ以上の威力なので、有効活用してください』
啓斗は、これもいつも通りに1つだけ排出された虹色の光球と、白色の光球で排出されたコネクトスキルを表示する。
URスキル【メイルシュトローム】
指定した座標に大渦潮を発生させる魔法。
座標が海でなかった場合、渦潮は5秒間持続する。座標が海だった場合は解除するまで持続し続ける。
コネクトスキル【MPブースト】
〈常時発動スキル〉
MP最大値が20000になる。
『MPの最大値を上げときました。けっこう消費が激しいのを見てましたので』
『さて! 今日のノルマも終わったことですし、もう自由になさって結構ですよ。……そうなると私が暇ですが』
そのままじっと啓斗の方を見つめ続ける。「自由にして結構」という言葉とは裏腹に、啓斗に何かを期待しているように感じた。
「わかったわかった。今日はお前と話して過ごしてやるから、そんなに真っ直ぐ見ないでくれ」
『おおっ、啓斗様太っ腹ー! では、最近私が始めたものについての話なんですがね…………』
そうして、啓斗とナビゲーターは他愛のない雑談に時間を使った。彼女は何かしらの手段で「現代」の遊び道具やらゲーム機やらを手に入れているらしく、もっぱらゲームの話をしてきた。
啓斗も啓斗で、彼の趣味もゲームやインターネット寄りであったため、異常なほどに話が盛り上がった。
「だから、そのモンスターは最初に専用のアイテムを使って実体化させないとダメージを与えらえないんだよ」
『あー、なるほど。でも喰らうダメージも尋常じゃなかったのでレベリングも必要ですかねー』
ヴァーリュオン出発まで:あと2日
寝ぼけまなこのまま洗面台へ向かい(王城の個室は、風呂は無いまでもユニットバス式のシャワー室はある。ここのトイレやシャワーも全てマギクニカ製と書かれていた)、冷水で顔をバシャバシャと洗う。
眠気が飛んだところで起きるのがいつもより遅めになったのを少しだけ気にしつつ、部屋に備え付けてあるクローゼットの中にある着替えを手に取る。
今日はいつも着ている綿製のTシャツと、デニムらしき生地で作られたハーフパンツのジーンズだ。
「くあぁ……ふぅ。たまにはこうやって朝からのんびりしてもお咎めは無いだろ」
『そうですねー。今日はいい天気ですし、お散歩なんていかがですか?』
いきなり聞こえてきた声に振り向くと、等身大サイズのホログラムで現れたナビゲーターが、窓の外を眺めるようにして立っている。
実際にこの部屋にいるわけではないのは分かっているのだが、粗やバグらしきものも一切ないので、ホログラムであると知らなければ彼女のリアルな動作も相まって本当にこの場にいるのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「……いや、今日は城からは出ないことにする。出発日も近づいてきてるしな」
『そうですか。では、ご予定は無いんですね?』
「ああ、無い。訓練場にも今日は行かないでおくつもりだ」
『では、私に啓斗様の時間を1日頂けますか? 昨日実装した〈ソウルコネクト〉の詳しい説明をしてませんでしたので』
「昨日さっさとやっとけば良かっただろ」
『あれ、啓斗様お気づきでない? 私が出てきてるとルカさんから何かヤバいオーラが漏れ出してるんですよ。本人も無意識っぽいんですけど』
「あーっと……つまり、どういう意味だ?」
『私と啓斗様の距離感がお気に召してないってことですよ。ちゃんと啓斗様ご自身がルカさんを接してあげないと駄目ですからね? 何が暴走のきっかけになるか分からないんですから』
人差し指を立てて啓斗に注意した後、ナビゲーターはベッドに腰掛ける(念のためにもう一度言うが、彼女はホログラムだ)。
『私は啓斗様を導くのが仕事です。ですがそういう事情の部分は私が介入する場所ではないので、お願いしますね』
「……言っている意味が本当に分からないんだが」
『っかー、マジすか! あー、こりゃダーメだ、お互いに前進しないタイプだこりゃ』
「おい、いきなり投げ出すな! ちゃんと説明しろ!」
その後はナビゲーターがのらりくらりと啓斗の質問をかわしたため、この話題は終了となった。
そうこうしているうちに空腹なのに気が付いた啓斗は、食堂に行って朝食兼昼食を食べ終えた後、訓練場に向かうという騎士団の人々に挨拶だけして部屋に戻った。
部屋では、ナビゲーターが相変わらずのニコニコとした笑顔を浮かべながらベッドに座って待っていた。
「まさか、ずっとここにいたのか?」
『ええ、まあ。ここにいても啓斗様の会話やら行動やらは全てその腕時計型デバイスを通じて把握できますから問題ありません。例えば、さっき食堂で米が無いのか聞いてたこととか、訓練場でこれからゼーテさんが他の団員に稽古つけることになってるって聞いたこととか』
「お前、プライバシーって言葉知ってるか?」
『ええ、知ってますよ。ですが、完璧なナビをするためには主人について出来るだけ把握しているべきでしょう?』
「……どこからどこまで記録してる?」
『全部ですよ全部。あ、流石に入浴の時とかは体の状態の変化を記録するだけで映像で確認とかはしてないですよ』
ナビゲーターは困ったように笑うと、悪戯っぽい目線を啓斗に向けてきた。
『さて、こんな話をしたところで……私のコネクトレベルを1上げときましょうか。基本的に私とこうして2人きりで話してくだされば上がるって覚えといてください』
彼女が指を鳴らすと、啓斗の眼前に表示が現れる。
コネクト「魂の導き手」レベル1→2
コネクトスキル【MPブースト】解放
『私のコネクトスキルは、コネクトレベルが偶数になるごとに解放されます。人によって目安は違うので、知りたかったら聞いてください。では、今日のガチャをどうぞ』
啓斗はいつも通りの手順でガチャ画面を呼び出すと、そのまま画面をタップする。
普通のガチャであれば手動で回す必要のあるハンドルが自動的に回転し、排出口から無数の光球が吐き出される。
その中に、見慣れない白色の光球があった。
『コネクトスキルは専用の色彩を持った光球で排出されます。クセが強いスキルも多いですが、ほとんどがURスキル並みかもしくはそれ以上の威力なので、有効活用してください』
啓斗は、これもいつも通りに1つだけ排出された虹色の光球と、白色の光球で排出されたコネクトスキルを表示する。
URスキル【メイルシュトローム】
指定した座標に大渦潮を発生させる魔法。
座標が海でなかった場合、渦潮は5秒間持続する。座標が海だった場合は解除するまで持続し続ける。
コネクトスキル【MPブースト】
〈常時発動スキル〉
MP最大値が20000になる。
『MPの最大値を上げときました。けっこう消費が激しいのを見てましたので』
『さて! 今日のノルマも終わったことですし、もう自由になさって結構ですよ。……そうなると私が暇ですが』
そのままじっと啓斗の方を見つめ続ける。「自由にして結構」という言葉とは裏腹に、啓斗に何かを期待しているように感じた。
「わかったわかった。今日はお前と話して過ごしてやるから、そんなに真っ直ぐ見ないでくれ」
『おおっ、啓斗様太っ腹ー! では、最近私が始めたものについての話なんですがね…………』
そうして、啓斗とナビゲーターは他愛のない雑談に時間を使った。彼女は何かしらの手段で「現代」の遊び道具やらゲーム機やらを手に入れているらしく、もっぱらゲームの話をしてきた。
啓斗も啓斗で、彼の趣味もゲームやインターネット寄りであったため、異常なほどに話が盛り上がった。
「だから、そのモンスターは最初に専用のアイテムを使って実体化させないとダメージを与えらえないんだよ」
『あー、なるほど。でも喰らうダメージも尋常じゃなかったのでレベリングも必要ですかねー』
ヴァーリュオン出発まで:あと2日
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