異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

武具屋「ヴァルカンズ・ファーネス」

未だ金槌の音が鳴り響く中で上がった上階で、啓斗は言葉を失っていた。

「こ……れは……」
「二ヒヒ、すっげーだろ。この武器のほっとんどを下にいるオレの親父が作ったんだぜ?」

啓斗とラビアが現在立っているのは、一般家庭の居間の約1.2倍ほどの大きさのスペース。
部屋をぐるりと囲うように商品の陳列棚らしきものがならんでいるのだが、そこに所狭しと、しかしきっちりと種類ごとにきれいに並べられた武器が無数にあった。

「んで、わざわざこんな路地裏に構えてる店に来たってことは、なんか武器買いに来たんだろ? なんなら色々要望聞くけど?」
「いや、実は……」

啓斗はここまで来た経緯を簡単に説明した。
この近くに魔物が沸いたので明日討伐しに行くこと、一緒に行く友人(ゼーテ)に準備をしろと言われ、武器を買っても良いと言われたこと、そして自分は武器を買うのは初めてなのでどうすればいいか全く分からないことを話した。

「ほー、なるほどな。ってことはお兄さん騎士見習いかなんかだな? よし、オレが特別サービスで武器を見繕ってやるよ」

真っ黒なススを両頬に付けた顔で二パッと笑うと、ラビアは棚の武器を取り出したりしまったりとガチャガチャやりだした。

「んで、どんなのがご入り用? 軽くて扱いやすいのがいいならナイフとか片手剣がオススメだし、ちょっと使いにくくてもよくていいから威力が欲しいって言うんなら槍とか斧が良いけど」
「魔法触媒の系統はあるのか?」
「ショクバイ? ああ、杖のことか。あるけど値ぇ張るぜー? 魔法の威力を増強させる効果のある木とか鉱物とかは原価が高いからさー」

と言いながら、ラビアは棚の一つから木の棒を一本取りだして啓斗に投げて渡した。

「一番安いのでその「ウッドスタッフ」だな。原理はオレはよく知らんけど、魔法を強める力を持つ木が生える森があって、そこに生えてる若木を伐採したのを買って加工したのがそれ」
(片手で簡単に扱えるくらいの棒に何か彫刻がされている。一見簡素な作りだが、専門家の技巧が感じられるな)
「お値段は5000ルーンポッキリ。耐久力もまちまちだけど、修理代をウチは取らないからかなり安い方だと思うぜ?」

その後、ラビアは別の杖をまた一本取りだしてきた。
その杖は啓斗が今持っているウッドスタッフと同じく木で作られているようだが、一目見ただけでレベルの違いが分かった。
その杖はラビアが両手で持ち上げなければならないほど大きく、さらに木の材質もがっしりしているようだった。

「上級になるとこういう両手杖も使えるようになるんじゃないか? まあ正直言って、3属性以上の超級魔法をバンバン撃ちたいくらいの人間じゃないと使わないけどな。素材も相当だから、10万ルーンとかするし」

ラビアは少し慎重な手つきで両手杖を棚にしまい直すと、別の棚から今度は比較的小さめの剣を取り出した。

「んじゃまあ、武器のチョイス始めていくとしますか。あ、杖はその辺に適当に置いといて良いぜ」

啓斗に呼び掛けながらラビアは剣を持たせてくる。
杖を手近の棚に置きながら、啓斗は杖を持っていない方の手で剣を受け取った。

「この国の皆はけっこう勘違いしてる人が多いけど、しっかり使えば魔法剣よりも威力出せるんだぜ、こういう本物ってさ」
「そうなのか? 魔法剣の方が実物より強いイメージがあるが……」
「まあ、そのイメージは間違ってない。実物の武器が魔法剣よりも強くなるのは、本物の使い手が振るう時だけだからな」

そう言うとラビアは、一番奥の棚に置いてあった、何やら豪華な装飾がされた横長の箱を取ってきた。

「ウチのお得意さんが刃こぼれを直してくれって親父に頼みに来た逸品だ。修復は終わってて、明日納品する予定なんだけど、見せるだけなら良いだろ」

ラビアが箱を開けると、そこにはクッションのようなものの上に置かれた細身の剣だった。
細身と言ったが、実際にはそれどころではない。究極まで細く、鋭利にされたと思わしき剣身と、漫画でしか見た事のないようなレイピアの柄。
どこからどう見ても異様なその剣の姿に、啓斗は何故か見覚えがあった。

「こんな剣を入れる鞘は無いからさ、こうやって丁寧に梱包して納品するわけ。この剣スゴイんだよ。あの人が使ったらんだから」

「貫く」というワードに、啓斗の記憶が反応する。
つい最近、そのような状況を目にしたような覚えがある。

「知ってるだろ? この国の最強騎士様の1人、ゼーテ様だよ」

剣を愛おしそうに眺めながら、ラビアは啓斗に向かってそう言った。

(そうだ、思い出したぞ。暴走したルカと戦っている時にゼーテは剣を2本使っていた。その2本目の方だ)
「いやー、この剣の凄い所と言ったらもう挙げきれないくらいなんだけどさ? まずこの剣の材質だよ! この国で「オリハルコン」を使ってる武器なんかこれ含めても片手で数えられるレベルだ!」
「な、なぁ、そのゼーテについてなんだが……」
「いやー、この形状も半端ないんだよ。剣としてのアイデンティティであるはずの「斬る」っていう能力を捨てて刺突攻撃の貫通力に極限までこだわった造形! 並の加工屋じゃ、ぜ〜〜〜っっったいに無理だろうな!」
「お、おい、ちょっと?」
「これを扱えるゼーテ様も半端ない人さ! これで敵を倒すなら急所を完璧に突かなきゃならないんだから。逆に言うと、弱点突いた瞬間にほとんどの魔物相手だったら勝負ありだろうね」

この剣を見せたことでラビアの変なスイッチが入ったらしく、その後も啓斗の話を聞かずに喋り続けた。
結局この後、啓斗は30分にも渡ってこの少女の解説話を聞かされ続ける羽目になった。

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