異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

遥か昔の物語

内容を読めはしないが、所々に挿絵があるため一応ページをめくっておく。

『えー、じゃあ行きますね。なんか著者の名前も書いてないし、説明ともの色々違和感ありますが、取り敢えずは気にせず聞いてみてください』
「了解」

啓斗が返事をするのを合図に、ナビゲーターはコホンと咳払いして中身を読み始めた。




それは昔、現在はほぼ全ての人間が初級の魔法は使えるほどの魔法大国「ヴァーリュオン」でさえも、才能がある者しか魔法が使えなかった遥か昔。
個体数が非常に少ないが、圧倒的な魔力を有する種族「魔族」がいた。
彼らはその異形の姿と魔力の高さから人々に恐れられ、同時に迫害の対象となっていた。
鍛錬を積んだ魔法使いや高名な騎士達からは、その強さと死体から採れる希少な部位から格好の獲物として追われる立場だった。

だが元来、魔族は争いを好まない種族である。人間に危害を加えるほど凶暴な者は、個体数の少ない中でも更に極小数のみであった。
しかし、この凶暴な魔族が関わった事件は全て最低でも20人以上の死者を出しているため、これが人間に「魔族は危険」だというイメージを定着させてしまったのだ。
そして平和を望む魔族たちの願いも虚しく、人の住む地域の付近を住処にしていた魔族は次々と見つけ出されては処刑され、どんどんとその個体数を減らしていった。

人間達がその容姿から判断した「恐ろしい怪物」という先入観と、ひと握りにも満たない数の残虐者のせいで魔族は人間の敵対生物と認定され、駆逐の対象となるに至ったのだ。




人間の攻撃から運良く逃れることができた魔族は、安住の地を求めて世界中を彷徨った。
だが、どこに行っても結局は見つかり、追われては逃げ、ある者は捕まって殺され、またある者は人間の奴隷として利用された。
奴隷に関しては現代でも裏で取引されており、特に人間に女性に近い姿をした者が取引値が高いことはこの本を読めるような人間なら重々承知だろう。



さて、読者の諸君が既に知り尽くしていることを書いても意味が無いことは、こうして文章を魔法で暗号化しながらペンを走らせている私も分かっている。
私が何者かという話題はどうでもいい。
私はもうすぐこの命を終えてしまうのだから。
ここからが本編だ。
私が偶然知ることになった「魔王」の秘密と、その配下7体の話をしよう。




『前段なげぇよ! いい加減にしやがれ!』
「おいおい、いきなりキレすぎだろ……」

1ページ目を読み終わった瞬間にナビゲーターが怒号を上げた。

『私はねぇ、長ったらしくて回りくどいのが大嫌いなんです! こういう要領得ない言い回しの本とかマジ嫌いですよ!』
「落ち着け。まだ話は始まってないだろうが」
『まあ、私は翻訳機としての役割を担ってるだけですから文句言う筋合いも無いですね』
「そうだ、じゃあ早く続きを読め」
『はいはい分かりましたよ』

ナビゲーターの合図でページを1枚めくると、ナビゲーターは続きを話し出す。




迫害された魔族が最後に辿り着いたのは、ある小さな島であった。
その島は地下に天然の強力な闇属性のマジック・コアがあり、その影響か太陽の光が弾かれてしまう。
更に、島自体も絶海の孤島。
普通に航海していただけでは見つけられないであろう、海のド真ん中だ。
だが、魔族たちの持つ生まれ持った感性がこの島のマジック・コアに反応し、まるで吸い寄せられるかのようにこの島に到着したのだった。

魔族たちはこの島を「常夜とこよの孤島」と名付け、定住を決めた。
この島ならば、誰にも見つからずひっそりと暮らせると考えたのだ。
幸いこの孤島は小さいわりに資源が豊富で、住居を建てるのは簡単だった。
そうして家を建て、村を作り、一時の安心を得たのは約1ヶ月後。
そこで、とある青年がこう提案した。

「この周辺に魔法の障壁を張って人間が通れないようにしよう」

青年は生き残った魔族の中で最も魔力が強く、更に容姿も端麗だった。
彼の明確な名前は誰も知らない。知っている者が全て死に絶えたからだ。
他の魔族たちも、自分たちの平和が約束されるならと青年の言葉に同調し、全員の力を振り絞って強力な障壁を形成した。

こうして「常夜の孤島」は、島の中心から半径3kmの位置に張られた障壁の中だけに領域が限定された。
それからしばらくの間、人の住む地域では魔族は確認されず、魔族は自分たち以外の種族を目にすることは無かった。
ほぼ全ての魔族が島から出なかったが、1人だけは違った。
障壁を張ることを最初に提案した青年である。
彼は、世界中に散らばる同族をかき集めては孤島へと送っていた。
時には山の奥深くの洞窟まで赴き、時には貴族の屋敷に忍び込んで仲間を救助していた。
そうして、青年の命懸けの旅の末に魔族が約500体、孤島へと逃れることができた。


魔族の中でも類まれな魔法の力、機転を利かせた柔軟な発想を生み出す頭脳、世界のどこにいるかも分からない仲間のために迷わず旅立つ行動力。
その全てが、他の魔族全員には理想の「リーダー」に見えたのだ。
そして青年は、いつしかこう呼ばれるようになった。
魔族を統べる頂点、「魔王」と。




青年が世界の隅々まで回りきり、孤島に帰還したのは旅立ってから20年後。
島に戻った青年を待っていたのは、恐怖に怯えることも血塗れになって殺されることも無く、平和に暮らす同胞達。
そして、孤島の中心に建設された小さくも美しい城であった。

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