異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

VS ランドグリーズ 2

啓斗の体がランドグリーズの槍の射程範囲に入ったその瞬間、啓斗の姿が溶けるように消えた。

「なっ……」
「はいはい後ろ注意ねぇ!!」

いつの間にか背後に回っていた啓斗がランドグリーズの首に【マジックナイフ】を突き立てる。
やはり甲冑のせいで致命傷には至らないが、出血したところを見るとダメージはあったようだ。

「がっ………この!」
「ハズレー!」
「このガキ、私を弄ぼうというのか!!」
「ははっ!もぐら叩きは苦手みたいだねぇ、ヴァルキリーさん!!」

啓斗は現在、ランドグリーズの周囲四方八方から出現し、一撃加えては溶けるように消えて隠れて向こうの攻撃を躱している。


SRスキル【瞬間影縫い】
「シノビ」シリーズのスキルの1つ。
物体の影の中に潜み、敵の目を欺くと共に影と影を移動して敵を翻弄するスキル。
一度に隠れていられる時間は最大で約2秒ほど。


上記のスキルに加えて、啓斗は魔法ナイフに【貫通増強】を付与して更にはもう1つスキルを併用している。


SRスキル【緋色クリムゾン連鎖チェイン
緋色クリムゾン」シリーズのスキルの1つ。
最大HPの30%以下の状態でのみ発動できる。
攻撃力・俊敏性が3倍になる。更にその後、5%減少するごとに倍率が+1倍ずつ加算される。
現在HP:25%
能力上昇値:4倍


『瀕死であることを逆手に取った超猛攻。 このままいけば啓斗様のHPが尽きる前にあのヴァルキリーをぶち殺してガチャを回すくらいの時間は稼げますかね』
『しっかし啓斗様、ちょっと血を撒き散らし過ぎじゃないですかね? 何か血だらけですっごいコワッ!』

ものすごい緊張の中でナビゲーターがそんなことを考えている最中、啓斗はまたランドグリーズの甲冑にナイフを突き刺していた。
貫通力が強化された魔法のナイフは、甲冑を破壊はしたが本体にダメージを与えるところまではいかない。
更に、ランドグリーズも巧みな体捌たいさばきで甲冑を破壊された箇所には攻撃を喰らわないようにしている。
ランドグリーズの作戦は単純。ただ、耐えること。
既に啓斗の腹には致命傷が与えられている。
よって、ランドグリーズから無暗に攻撃してカウンターを喰らう危険を冒すより、このまま防御に徹して相手の自滅を待つ方が良いという判断を下したのだった。

(大方、焦った私の大振りを誘って強力なカウンターで倒す、などという一発逆転を狙っているのだろうがそうはいくか)
(自身と仲間の被害を最小限に抑えて戦うのが我々のやり方。下手に追い打ちなどかけんよ)

そうこうしているうちに啓斗の残HPが10%を切る。
能力自体は7倍に跳ね上がり、もう人間の域を遥かに超えたものになったのだが………

「フフ、もう限界のようだな。異世界人」
「ハァー……ハァー………うぐっ」
「膝をついたか。もう貴様の勝ちは無い。一発勝負に賭けたのだろうが、残念だったな」

啓斗は既に両膝をついてしまい、一歩も動けない状態に陥ってしまう。
その頭に、ランドグリーズは狙いを定めて槍を投擲する構えを取った。

「せめてもの情けだ。出血多量で無様に血を垂れ流しながら死ぬ前に、私が楽にしてやろう」
「ハハ……いやー、参った参った。確かにこのナイフ攻撃じゃボクはアンタを倒せなかった。でもさ………って言ったらどうする? しかもとびきり強力な、ね」
「ハッタリはやめておけ。見苦しい時間稼ぎが丸見えだぞ?」
「まあまあ聞きなって。いや、この戦法は1回ボクじゃない僕・・・・・・・がとある人に使って通じなかった作戦なんだけどさ、正直けっこういいセン言ってたと思うんだよねー………」
「だってズルいじゃん、魔法を無効化する「眼」なんて反則だと心底思ったよ。でも、アンタはそんな特殊能力持ってないでしょ? だから効くと思うんだよね」
「………何の話をしている? 気でも違ったか?」
「いいや、いたって正気さ。まあ、避けてみなよ。全方位からの【緋色クリムゾン銃弾バレット】をさぁ!」

瞬間、地面にまき散らされていた啓斗の血液全てがランドグリーズに襲い掛かる。
前後左右はもちろん、足元も含めた全方向から血の弾丸の一斉射撃。こうなると、回避するには上に逃げるしかない。

「なにぃぃぃぃ!?」

驚愕しながらもランドグリーズは咄嗟に上空へと飛び、足元からの攻撃を回避しながら啓斗と距離を取る。

(射程距離外へ、逃げなければ!!)
「ふーむ、予想通り。いやー我ながらこすずるい作戦だね全く」

そう言うと啓斗はパチンと指を鳴らした。
すると、ランドグリーズの視界が上下逆転した。

(くっ………!体を反転させられたのか!?急いで体勢を整え………っ!?)

ランドグリーズが体を回転させて上空へと更に上昇しようとしたその時、全身を極太の針のようなもので突き刺されたような感覚があった。
見ると、体中に微細な穴が開き、そこからごぼごぼと血があふれ出ている。
何が起きたのか理解する前にランドグリーズの意識は途切れ、2度と目覚めることはなかった。





「はは、大成功ダイセーコー……」

ランドグリーズの死体が落下していくのを眺めながら、啓斗はほくそ笑んだ。

『完璧に騙されてましたね、あのヴァルキリー』
「ボクの勝ちー……あー、めっっっさ疲れたぁぁぁぁ」


SRスキル【視覚逆転】
対象の視界を一瞬だけ180度回転させることができる。


「冷静に考えて対処すればこんなの小細工なのに、見事に引っかかるんだもんなー」
『ええもう、焦りすぎて逆に地面に接近して自分から血弾喰らったの見て、不覚にも………クスクス………笑いが………』
「よし、じゃあ勝ったことだし、急いで怪我治そう」
『ええ、ちょっぱやでリカバリースキルガチャ引いて、出たUR使えば死にはしないと思います。ほら、急いだ急いだ!』

血だまりの中、啓斗はまだ笑みを浮かべながらも失血による青ざめた顔でガチャ画面を開いた。

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