異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

龍の力と天の使者

啓斗は、ナビゲーターが示した座標にある家屋に入っていた。
中を少し探索すると、今と思わしき部屋のテーブルに少年が寝ているのを見つける。

「この子か。ナビゲーター、バイタルは?」
『あー、そのぉ、非常に言いにくいんですが……』

ナビゲーターは苦笑いしながらスマホを眺めている。

「おい、なに笑ってるんだ」
『いや、何も面白くはないんですけどね。その人、もう手遅れみたいです』

斜め上を見ながらナビゲーターはそう言った。

『もう致命傷です。彼の腹部を見れば分かるでしょう?』

啓斗が慌てて上着をめくると、腹部からおびただしい量の血が流れでていた。
少年はもうほとんど呼吸もしていない。どう見ても治療する手立てが無いことは明らかだ。

『なので、私から1つ提案がございます』
「何だ?」
『あのですね、そ……』

言いかけた瞬間に、天井が轟音を立てて吹き飛んだ。

『……えぇ!?』
「なっ……」

呆気にとられて上空を見上げる。
振り続ける雨の中、黄金に輝く鎧と頭を完全に兜を身につけた「騎士」がいた。
背に翼が生えた白馬に乗り、巨大な槍を手にこちらを見ている。

「おいおい、なんだアイツは!? ナビゲーター、早く調べ……ナビゲーター?」

ナビゲーターを見ると、額に汗を浮かべて歯ぎしりが聞こえるようなレベルで表情を歪めている。

『まさか……もう送り込んできやがるとは……いや、しかし……』
「おい、ナビゲーター!答えろ!アイツは何者だ!!」
『……あれは天界の兵です。そしてあの姿から見て、「ヴァルキリー」である可能性が非常に高いですね。恐らく、啓斗様を始末するために送り込まれた刺客でしょう』
『この登場の仕方から見るに、話し合いは通じないと思われます。戦闘準備を!』

ヴァルキリーが槍を振り上げて大きく円を描いた。
するとヴァルキリーを中心にドーム状の膜が広がり、その内部だけ雨が止んだ。

『雨は視界が悪くなりますし、滑ったりなんだりありますからねぇ』
「本気で戦いに来てるってことか」

槍を啓斗に向け、ヴァルキリーが大声を張り上げる。

「邪悪な罪人にそそのかされし愚かなる異界のたみよ!我らが主たるメタトロン様の名において、貴様を罰する!」
「我、主より「ランドグリーズ」の名を賜った者なり! その魂を天へと導いてやろう!」
『来ます! 構えて!』

ランドグリーズは、馬から飛び降りざま襲いかかってきた。






同時刻、ルカは再びモンスターの群れのリーダーと戦闘を繰り広げていた。
完全な龍人の姿へと変貌した彼女は、敵の巨大熊を圧倒していた。
ブンブンと振り回してくる大斧を避け、その両脚を鉤爪で切り裂く。

「グオォ!」
「これで、どうだ!」

脚にダメージを受けたことにより、一瞬だけ動きが止まる。
その隙を的確について跳躍し、顔面に空中で回し蹴りを入れる。

「コ……ノガキ……」

熊の方も斧を振り下ろして反撃するが、振り下ろした時には既にルカはいない。
ルカは後ろに回り込んで攻撃する。左右の腕で連続攻撃し、バック宙で距離を取りざま尻尾を叩き付けた。

(風の動きが分かる……今なら、こうやって……!)

ルカが念を込めると、空気の流れが変わる。
風が彼女の周囲に集中し、形を成し始める。その形は無数の「矢」であった。

「よし、行け!」

ルカの号令と同時に、無数の矢全てが熊型モンスターに向けて音速で飛ぶ。
一瞬のうちに、矢の大群は敵の全身に無数の小さな風穴を開けた。


【風切りの矢】
魔法によって風を操り、無数の矢を形成する。
風の矢の威力・本数は風属性魔法の適性に依存する。


頭も含めて本当に「全身」に風の矢を受けた敵は、そのままバッタリと仰向けに倒れ込んで絶命した。

「……やっ……た」

一気に緊張の糸が解け、肩で息をしながらその場にへたり込む。
気がつけば、龍人状態は解除されてしまっていた。
自分の姿が元に戻ったことを確認すると、ルカは空を見上げる。
そこで異変に気がついた。

「あれ? 雨が……」

雨が止んでいる。いや、この一帯だけ雨が「せき止められている」。
不思議に思って周囲を見渡すと、つい先ほど少年を置いてきた家屋の屋根が吹き飛んでいるのが見え、更に何やら騎士のような人物が槍を構えているのが確認できた
(ルカの現在地からその家屋まで悠に500メートル以上はあるということは記しておかねばなるまい)。

「まさか、ケイト君があそこに?」
「行か、なきゃ……あうっ!」

立ち上がろうとするが、足がもつれて転んでしまう。
どうやら変身の反動でかなり肉体が疲弊してしまっているようだ。

「ちょっと……! 動いてよ……! ねえ!」

ガクガクと震える体を無理やり立ち上がらせると、ルカはフラフラしながら何とか歩き出した。

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