異世界スキルガチャラー
降りしきる雨の中で 4
『ほへー、行っちゃいましたねー』
「ナビゲーター……お前が乗せたからだぞ。万が一があった時は覚悟しとけ」
『ですから、啓斗様がそういうこと言ったら冗談に聞こえないんですって……』
「そりゃそうだ、本気で言ってるんだからな」
啓斗がさも当たり前のように言うと、ナビゲーターは表情は変えないものの、ほんの少しだけ彼から離れた。
『あれ? そういえば、ルカさんが敵のリーダーを見つけたとして、どうやって連絡取るんですかね?』
「……そうだ、考えていなかった! 結局追わないとダメか!」
啓斗は明らかに焦った表情を見せ、思い切りジャンプした。
跳んだ先はまだ倒壊していない家屋のうちの一つ、つまり遠くまで状況を見渡せる「高台」だ。
「……くそっ、雨のせいで視界が悪い。これじゃ探すのは難しいな」
『ですねぇ。いやー、また厄介なことに』
啓斗がルカの行方についてもどかしく思っている頃、ルカは既にボスと思わしきモンスターのところへたどり着いていた。
といっても、建物の残骸に隠れて様子をうかがっている状態にある。
そのモンスターは、二本足で立った巨大熊といった風貌をしていた。
「大きい……7、8メートルはありそう。他のモンスターたちと比べて威圧感もすごく強そうだし、あれがリーダーじゃないかな」
少々予想外な敵の大きさに、ルカは安全策を取ることにして一旦この場から離れようと翼を広げた。
が、モンスターたちが大笑いを始めたことによって踏みとどまった。
「ギャハハハハハハ! オラ、動クンジャネェヨ!」
「ヤッパリ人間ノガキハ嬲リ甲斐ガアルゼ!」
リーダーの熊の周囲を取り巻いているゴブリン達が何か、いや誰かに蹴りを入れている。
それは、「人間の少年」だった。
「オイ、オ前ラ! 人間ノガキナンザドウデモイイ、サッサト殺セ! ヤラネェナラ俺ガ殺ス!」
リーダーの熊が、肩に担いでいる巨大な斧を振り上げる。
ルカの体は勝手に動いていた。
広げた翼を小さく畳むと、ルカは脚に神経を集中させる。
すると彼女の意識に呼応したのか、両腕両脚の龍鱗が増加してそこだけが龍に近づいた。
どうやら、完全な龍人状態になっていない「半龍人」状態だと一部を強化すると一部が弱体化する仕組みになっているらしい。
そのままモンスター達の中に向かって駆け出す。
「死ネ、ガキ!」
「させるかぁぁぁぁぁ!!!」
ルカは圧倒的爆速で少年の体を抱き抱えると、ゴブリンと熊の間を通り過ぎて逃走した。
モンスター達にはただ一陣の突風が吹いただけのように感じるほどの豪速もってして、ルカは少年の救出に成功した。
そのまま数十メートル疾走し、敵の目が絶対に届かない距離まで移動しそのまま雨の当たらない場所を探す。
「え、あ、う……?」
「うん、あそこの家がいいかな。ドア開きっぱなしだし、勝手に他人の家に入ることにはなるけど許してくれるよね」
倒壊していない家の一つのドアが半開きになっているのを確認すると、少年を抱きかかえたまま急いで中に入った。
「……ひどい。どうして、こんな事を」
「…………」
少年は既に重傷だった。
頭からは血が滴り落ちており、両足が関節と逆方向に曲がっている。
「……ここで待ってて。すぐに戻ってくるから」
それだけ言い置いて少年をテーブルの上に寝かせ、ルカは急いで外に出てドアを閉める。
そのまま身を隠して様子を見ると、どうやら少年が何者かにかっさらわれたことは敵側も理解していたらしく、明らかに先ほどより多いモンスターたちが徘徊しているのが分かる。
(一番いいのはこの無数の敵を全部倒してしまうことだと思うけど、流石に私じゃ無理だよね……)
(なら、リーダーを倒せば他は戦意喪失するかも、っていうのに賭けるしかない!)
俊敏な動きで物陰から物陰へ移動しつつ、先ほどの巨大熊の近くへと進む。少年を隠した家にまでは今のところ捜索の手は入っていないが、このままではいずれ見つかってしまうだろう。
敵数から考えて、発見されるまでの猶予は3分ちょっとと見た。
(それまでに倒す! あの熊を!)
瞬間移動まがいの俊足による移動を行い続け、仁王立ちのまま他のモンスターに声を荒げて指示を出している熊の真ん前まで近づいた。
「テメェラ、ボケットシテンジャネェゾ! 誰カ潜ンデンノハ明確ダロウガ! サッサト探シ出シテ殺セェ!」
「ヘ、ヘイィ!!」
巨大熊は周囲にいるモンスター全てを怒鳴り散らして、周囲の探索に行かせた。
それはルカにとって最も好都合な状況であった。
つまり、「あの熊型モンスターとの一騎討ち」という状況に持ち込めたのである。
「熊さん、誰か探してるの?」
「アア? テメェカァ!! 俺様ノ処刑ノ時間ヲ邪魔シヤガッタノハァ!」
「黙れ、人殺しを何とも思わない怪物が!」
「ケッ、小娘ガ粋ガッテンジャネェゾ! ブッ潰シテヤル!!」
「やってみろ! 逆にお前をぶっ潰す!!」
ルカの背中から、翼が消滅した。それと同時に他の部位が強化される。
両腕両脚全体が完全に龍鱗に覆われ、手と足の先は完全な龍人になった時と同じ状態になっていた。
手の爪が伸び、人間の皮膚なら簡単に引き裂けるであろうものに変化、足も同様に伸びたせいで靴を突き破る。尾も巨大化し、強く靱やかになった。
顔を覆う龍鱗の面積が広くなり、より龍に近くなったと言えるだろう。
「ゴアアアアァァァァ!!!俺様ニ生意気ナ口ヲキキヤガッテ!バラバラニシテクレル!」
「ガルルルルゥゥゥゥ!!! 私はケイト君の役に立つんだ! その為にも、私がお前をブッ殺ス!」
巨大熊とルカは、同時に咆哮した。
咆哮の強さは、ルカの方が数段上であった。
「ナビゲーター……お前が乗せたからだぞ。万が一があった時は覚悟しとけ」
『ですから、啓斗様がそういうこと言ったら冗談に聞こえないんですって……』
「そりゃそうだ、本気で言ってるんだからな」
啓斗がさも当たり前のように言うと、ナビゲーターは表情は変えないものの、ほんの少しだけ彼から離れた。
『あれ? そういえば、ルカさんが敵のリーダーを見つけたとして、どうやって連絡取るんですかね?』
「……そうだ、考えていなかった! 結局追わないとダメか!」
啓斗は明らかに焦った表情を見せ、思い切りジャンプした。
跳んだ先はまだ倒壊していない家屋のうちの一つ、つまり遠くまで状況を見渡せる「高台」だ。
「……くそっ、雨のせいで視界が悪い。これじゃ探すのは難しいな」
『ですねぇ。いやー、また厄介なことに』
啓斗がルカの行方についてもどかしく思っている頃、ルカは既にボスと思わしきモンスターのところへたどり着いていた。
といっても、建物の残骸に隠れて様子をうかがっている状態にある。
そのモンスターは、二本足で立った巨大熊といった風貌をしていた。
「大きい……7、8メートルはありそう。他のモンスターたちと比べて威圧感もすごく強そうだし、あれがリーダーじゃないかな」
少々予想外な敵の大きさに、ルカは安全策を取ることにして一旦この場から離れようと翼を広げた。
が、モンスターたちが大笑いを始めたことによって踏みとどまった。
「ギャハハハハハハ! オラ、動クンジャネェヨ!」
「ヤッパリ人間ノガキハ嬲リ甲斐ガアルゼ!」
リーダーの熊の周囲を取り巻いているゴブリン達が何か、いや誰かに蹴りを入れている。
それは、「人間の少年」だった。
「オイ、オ前ラ! 人間ノガキナンザドウデモイイ、サッサト殺セ! ヤラネェナラ俺ガ殺ス!」
リーダーの熊が、肩に担いでいる巨大な斧を振り上げる。
ルカの体は勝手に動いていた。
広げた翼を小さく畳むと、ルカは脚に神経を集中させる。
すると彼女の意識に呼応したのか、両腕両脚の龍鱗が増加してそこだけが龍に近づいた。
どうやら、完全な龍人状態になっていない「半龍人」状態だと一部を強化すると一部が弱体化する仕組みになっているらしい。
そのままモンスター達の中に向かって駆け出す。
「死ネ、ガキ!」
「させるかぁぁぁぁぁ!!!」
ルカは圧倒的爆速で少年の体を抱き抱えると、ゴブリンと熊の間を通り過ぎて逃走した。
モンスター達にはただ一陣の突風が吹いただけのように感じるほどの豪速もってして、ルカは少年の救出に成功した。
そのまま数十メートル疾走し、敵の目が絶対に届かない距離まで移動しそのまま雨の当たらない場所を探す。
「え、あ、う……?」
「うん、あそこの家がいいかな。ドア開きっぱなしだし、勝手に他人の家に入ることにはなるけど許してくれるよね」
倒壊していない家の一つのドアが半開きになっているのを確認すると、少年を抱きかかえたまま急いで中に入った。
「……ひどい。どうして、こんな事を」
「…………」
少年は既に重傷だった。
頭からは血が滴り落ちており、両足が関節と逆方向に曲がっている。
「……ここで待ってて。すぐに戻ってくるから」
それだけ言い置いて少年をテーブルの上に寝かせ、ルカは急いで外に出てドアを閉める。
そのまま身を隠して様子を見ると、どうやら少年が何者かにかっさらわれたことは敵側も理解していたらしく、明らかに先ほどより多いモンスターたちが徘徊しているのが分かる。
(一番いいのはこの無数の敵を全部倒してしまうことだと思うけど、流石に私じゃ無理だよね……)
(なら、リーダーを倒せば他は戦意喪失するかも、っていうのに賭けるしかない!)
俊敏な動きで物陰から物陰へ移動しつつ、先ほどの巨大熊の近くへと進む。少年を隠した家にまでは今のところ捜索の手は入っていないが、このままではいずれ見つかってしまうだろう。
敵数から考えて、発見されるまでの猶予は3分ちょっとと見た。
(それまでに倒す! あの熊を!)
瞬間移動まがいの俊足による移動を行い続け、仁王立ちのまま他のモンスターに声を荒げて指示を出している熊の真ん前まで近づいた。
「テメェラ、ボケットシテンジャネェゾ! 誰カ潜ンデンノハ明確ダロウガ! サッサト探シ出シテ殺セェ!」
「ヘ、ヘイィ!!」
巨大熊は周囲にいるモンスター全てを怒鳴り散らして、周囲の探索に行かせた。
それはルカにとって最も好都合な状況であった。
つまり、「あの熊型モンスターとの一騎討ち」という状況に持ち込めたのである。
「熊さん、誰か探してるの?」
「アア? テメェカァ!! 俺様ノ処刑ノ時間ヲ邪魔シヤガッタノハァ!」
「黙れ、人殺しを何とも思わない怪物が!」
「ケッ、小娘ガ粋ガッテンジャネェゾ! ブッ潰シテヤル!!」
「やってみろ! 逆にお前をぶっ潰す!!」
ルカの背中から、翼が消滅した。それと同時に他の部位が強化される。
両腕両脚全体が完全に龍鱗に覆われ、手と足の先は完全な龍人になった時と同じ状態になっていた。
手の爪が伸び、人間の皮膚なら簡単に引き裂けるであろうものに変化、足も同様に伸びたせいで靴を突き破る。尾も巨大化し、強く靱やかになった。
顔を覆う龍鱗の面積が広くなり、より龍に近くなったと言えるだろう。
「ゴアアアアァァァァ!!!俺様ニ生意気ナ口ヲキキヤガッテ!バラバラニシテクレル!」
「ガルルルルゥゥゥゥ!!! 私はケイト君の役に立つんだ! その為にも、私がお前をブッ殺ス!」
巨大熊とルカは、同時に咆哮した。
咆哮の強さは、ルカの方が数段上であった。
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