異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

三面相の「主人公」

ルカとマリーが遊び回っているのを1歩離れたところから眺めながら、啓斗は物思いにふけっていた。
脳内テーマは自分の「これから」についてである。

(目標、みたいなものが俺には無いんだよな。勿論、ルカの呪いを解くことは俺にとって既に義務になっている)
(だが、俺自身のこの世界に生きるにあたっての「目的」が何も無い。チート手に入れて思いのまま?別に興味は無い)
(現代に帰還?思い残しといえば、家族……あの人・・・に何も言わなかったことくらいか。二度と会わないなら、別にいい)
(なら……そうだな。この世界を知り尽くすのを目標にしてみるのもいいかも知れない。どんな風に大陸が位置しているのか、どんな国があるのか、どんな人種がいるのかも分からない異世界。探究心はくすぐられるよな)
(そうだ、旅の日誌でもつけて最終的に本にまとめてみるのはどうだろう? 俺の考えの整理をつけるのにも役に立つ)

そんな風に考えがまとまったと自分で結論がついた瞬間、激しい頭痛に襲われる。

「ぐあっ!?」

一瞬で脳を握りつぶされるような激痛に、啓斗は抵抗する間もなく意識を手放した。








「う、ん……?」
「やや、お兄さんお目覚めだね。今日はこっちから呼んだよ」
「俺は特に用事は無ぇが、コイツが話したいって言うからな。オラ、さっさと起きやがれ」

頭を小突かれる感覚を感じ取りながら、啓斗は目眩に耐えて起き上がった。
そこには、いつか見た「ピエロマスク」と「ホッケーマスク」の2人が立っていた。
しかし、前回は牢獄の鉄格子越しで会話していたのに対し、今回は一面真っ黒な空間だった。

「ここは何処だ? 一体何なんだお前らは?」
「え、まだなんも思い出してない? マジで? うわー、こりゃ重症だね」
「だから言っただろが。コイツを説得しようなんざ無理な話だよ。俺らの存在自体忘れてんだから」
「そんなのやってみなくちゃ分からないじゃん。ボクらの存続がかかってんだよ?分かってる?」
「知るか。つーかコイツが死んだら俺らも死ぬんだから変わんねぇだろ」
「いや、だからそういうことじゃなくてさぁ……」

ぎゃいぎゃいと言い合いをする2名をぼんやりと見つめる啓斗。
やはり、彼の脳にはこの2人に関する情報は一切記憶されていなかった。

「んで、はい! 思い出した!?」
「いや、全く……」

2人の声や外見、性格をじっと観察したものの、一切頭に浮かんでくる人物はいなかった。

「はぁ……そう。じゃあもう、答え言った方が早いねこりゃ」
「普通に生きてるだけなら下らないし表に出なくてもいいかと思ってたけど、異世界転移なんて起きたんだもん、何としてでもボクはボクとして世界を見たい」

ピエロの方が啓斗を見つめながら言う。

「ここは、藤崎啓斗の頭の中。精神世界さ。
そしてボクと彼は………」

そして2人は、同時に着用していたマスクを外した。
2人には、「顔が無かった」。
頭があるべき場所は黒いモヤに包まれており、その中に光る球体が目のように浮いている。
ピエロの「目」は黄色、ホッケーマスクは赤色だった。

「君の中に抑圧された君自身だ。つまり、別の人格ってワケ」
「声が違うのは、君が勝手にボクらの雰囲気を感じ取って1番イメージに近い声を記憶から引っ張り出してるからさ」
「ボクの声、これってアニメの悪役の声だよね? 確か愉快犯の連続殺人鬼だったはず」
「俺も悪党だな。暴力的な印象を持ってる奴だったはずだ」
「2人共悪役だねぇ。自分をそんな風に思ってるからかな?」

表情(があるのかすら分からないが)は変えずに声だけでケタケタと笑うと、ズイっと近づいてきた。

「牢屋じゃなくなったのも、ボクらに対する意識が少し変わったからだと思うよ。多分君はこう思ったんだろうね。「何者か分からない謎の人物だから、扱いが分からない」、ってね。だから何も無い空間なんだと思う」
「でね、でね。話変わるけどさ、ボクらに君の体、たまに貸してくれない? たまーにでいいからさ!」

肩をぐわんぐわん揺さぶりながら嬉々とした声色でそう語る「自分」に、啓斗は得体の知れない恐怖を抱いた。

(俺はこんな性格はしていない。人格というが、本当かなのか?)
「うわ、酷いねぇ。疑うの? あ、そっか。忘れてるからか! でもなぁ、ボクが思い出させるのは出来ないからなぁ」

啓斗が何を考えているのか完璧に読み取っているようだ。

「こうすれば、分かってもらえる?」

すると、2人の体が一瞬で黒い霧に変化し、啓斗に吸収されてしまった。

「なっ、どこに!?」
『おーい、聞こえてるー?ここだよここー!』
『お前の頭ん中に入った。つっても、ここ自体頭ん中だがな』

意識に直接語りかけてくる2つの声は、霧となった彼らと同じ声をしていた。

『これから、現実でもたまにサポートしたげるよ!脳内相談とか、
『使えるスキルの数も増えるだろうな。まあ、俺もコイツも好みはあるがな』
『状況に応じて使い分けてね!あ、ちなみに我慢できなくなったら勝手に出ちゃうかもしれないけど、許してちょーだいな!』

言うだけ言い切ると、2人の声は聞こえなくなった。
その数秒後、また啓斗は酷い目眩を覚え、思わず目を閉じた。








再び目を開けると、城のバルコニーに戻っていた。
しかも、ルカが心配そうにこちらを見上げている。

「ケイト君、ボーッとしてたけどどうしたの?」
「あ、いや、何でもない。ちょっと考え事をな」
「……大丈夫?」
「心配するな。大したことじゃない」

その後も何を考えていたのかと聞いてくるルカをいなし、啓斗はまた少女2人から離れる。
すると、見計らったようにナビゲーターが現れた。

『啓斗様、何があったんです? 固有スキルを入手なさってますが……』
「なに?」

啓斗は慌てて自身のステータスを開く。


藤崎 啓斗
種族 人間(異人)
Lv0
HP:1000/1000
MP:10000/10000

P・ATK:C
M・ATK:G
DEF:D
DEX:B
SPD:C
LUK:E

魔法属性適正
火:G 水:G 風:G 土:G 光:G 闇:G 無:G

状態
正常

特殊スキル
無し

固有スキル
【スキルガチャラー】
専用デバイスを経由して「スキルガチャ」にアクセスすることができ、排出されたスキルを自在に使用できる。
既に入手したスキルがもう一度排出された場合、スキルの「レベル」が上がり、効果が増す。
「レベル」の上昇によってスキル名が変更されるケースもある。
ただし、スキルガチャからどんな威力、種類のスキルが出現するかは本人の運次第。

三面相トリプルフェイス
3つの人格を切り替えることが出来る。
副人格は主人格の意志に基づいてスイッチされるが、スイッチされた後はスイッチ以外の全権限が表面に現れている人格に移る。


『なんですかこれぇ!? え、三重人格!?』
「あー……そういうことだ。正直、自分でもよく分からないが、今後俺も色々おかしくなりそうだ」
(おかしいって酷いねぇ? 自分の人格だよ?)
「……ああ、くそっ。脳に響く!」
『あはは、これはまた面倒なことに。ちなみに、私には人格3つ分全て聞こえますので、会話についてはご安心を』
(そーなの?じゃあ、宜しくね!ナビゲーターちゃん!)
(早速絡みすぎだ。「ピエロ野郎」)
(あー!あー!聞こえなーい!すぐ手が出る君よりマシだよー!!)
「……脳内がここまで騒がしいと、色々厄介かもな」
『そうですねぇ。私は主人格の貴方を啓斗様って呼ぶのは変えませんから』

かくして、啓斗は記憶力の向上と引き換えに、脳内に巣食っていた2人の人格を解放してしまったのだった。

(あー、楽しみだなぁ!冒険、冒険!)
(るっせーぞ!テメーも、主人格になってやがるアイツもイライラすんだ!黙りやがれ!)
「お前も相当うるさいからな」
(あ!?文句あんのか!?)
「お前ら、静かに出来ないなら絶対に表に出してやらないからな」
(……チッ。わぁったよ)
(ぐむむ。仕方ないなぁ)

そして啓斗は思った。
「また面倒なことになった」と。

「異世界スキルガチャラー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く