異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

騎士兄妹の過去 1

時は遡り、7年前のヴァーリュオンに舞台は移る。


魔法王国ヴァーリュオンの中心都市「アルミナ」の北西の閑静な住宅街に建つ豪邸。
そこは代々ヴァーリュオン王家に仕える騎士家「ナイトブライト」の館である。
そこに、双子の兄妹が産まれた。
先に産まれた男児は「シーヴァ」、数分後に産まれた女児は「ゼーテ」と名付けられた。
父の名はゼノンといい、母の名はレイナといった。
ゼノンは王国軍の将として活躍し、レイナは魔法研究者として様々な成果を上げている優秀な魔導士だった。
ゼノンは責任感が強く実直な性格で、「息子達は必ず騎士か魔導士に育て上げる」と意気込んでいた。
レイナは魔法に関しては超一流であったが、性格はほんわかとした優しいものだった。






この世界の魔法には序列があり、以下のように分かれる。

・初級魔法
ヴァーリュオンでは一部では幼稚園から、大半は小学校低学年で学ぶ。
様々な魔法の基礎となり、種類も多種多様。
威力は全体的に弱く、魔物を討伐するにはあまり向いていない。
例:【ブレイズ】【ブラスト】【ダッシュアップ】など

・中級魔法
ヴァーリュオンでは小学校高学年から中学校で学ぶ。
初級魔法よりは威力が高く、実戦でも咄嗟に使用して怯ませて逃走するくらいには使える。
回復系統の魔法は難易度が高く、最低レベルの魔法でも中級から。
例:【ヒール】【バーン】【マジックソード】など

・上級魔法
ヴァーリュオンで学ぶには、王国騎士団付属訓練学校に入学、魔法研究専門校に入学、もしくは王国軍学校に入学する必要がある。
更に実戦的な魔法になり、下級の魔物の群れや、中級の魔物とも渡り合える攻撃力を有する。
この辺りから才能の有無がはっきりし始める。
例:【バーンフレア】【エル・ヒール】【マジックエンチャント】など

・超級魔法
習得するには、ヴァーリュオン王国が作成した魔法適性試験三級を受けて合格しなければならない。
上級の魔物の群れや、下級の悪魔と戦えるレベルの魔法。
威力は高く、悪意を持って使用すれば殺人も容易となってしまう。
例:【ブラストカノン】【ハイドロストーム】【アースクエイク】など

・達人級魔法
習得するには、魔法適性試験二級に合格しなければならない。
上級の魔物の大群や、中級悪魔とも対等に渡り合える。
威力が高い代わりに、消費する魔力量もかなり増える。
ヴァーリュオン王国騎士団の第一小隊になるには、このクラスの魔法を複数習得する必要がある。
例:【イグニート】【迅雷】【グラヴィトン】など

・戦術級魔法
魔法適性試験一級に合格し、更にヴァーリュオン王国の検査人の許可を貰わなければ学ぶことも、使用も許されない。
達人級とは威力が桁違いで、乱用すれば街を破壊できる魔法も大量にある。
故に、適性+「揺るがない正義の心」が必要なのだ。
例:【融解灼熱メルトフレア】【シャイニング・レイ】【攻撃吸収パワーアブソプション】など

・厄災級魔法
正規の方法ではまず、学ぶことは出来ない。
厄災級を学んだことのある人物でなければ存在も知らない。
ヴァーリュオンにある「魔道図書館」の長である賢者に特別の許可を受ければ、一つだけ学べる。
戦術級を凌駕する威力を秘めるが、一歩間違えば取り返しのつかないことが起こる。
例:【消滅ディスパート】【ドッペルメイカー】【思考操作ブレインコントロール】など

・禁忌級魔法
古文書において存在が仄めかされているが、実際に使用できるものは現在いない。





魔法はこのヴァーリュオンか、リーデンフォン大陸にある巨大国「ツェリードナ法国」以外では学ぶことはできない。
そして兄のシーヴァは、6歳にして様々な中級魔法を会得するほどの才能を持っていた。
ゼノンはそれを見て歓喜し、レイナも目を丸くしてシーヴァを褒めた。
更にシーヴァは剣術の才能も持っており、父と行った木刀を使った模擬戦では(ゼノンが手加減していたとはいえ)一太刀を浴びせたこともあった。
その事から、ゼノンはシーヴァを溺愛するようになっていった。


妹のゼーテは、シーヴァとは正反対に才能が一切なかった。
幼稚園児でも使うことができるような初歩の魔法【ブレイズ】ですら、魔力不足として使うことが出来なかった。
剣術の方面もからっきしで、勘も鈍く動きも遅かった。
こうした経緯から、ゼノンはゼーテを「いない者」として扱うようになり、母親のレイナや周囲の人間もシーヴァの才能を褒めるばかりでゼーテには目もくれなかった。
ゼーテを気にかけるのは、この世にたった1人。
ある意味ではゼーテが無視される原因となってしまった人物である、兄のシーヴァだった。
シーヴァは、父による特訓の合間を使ってはいつもゼーテと一緒にいた。

「お兄ちゃん、お父さんと一緒にいなくて大丈夫なの?」

そう聞くゼーテに、シーヴァはいつもこう答えた。

「何言ってるんだ。可愛い妹と一緒にいること以上に大事なことなんかあるもんか」

シーヴァは子供ながらに理解していた。ゼーテが周りから存在すら認められていないのは自分のせいだと。
だからこそ、自分がゼーテと一緒にいなければならないと考えたのだ。
唯一の救いだったのは、母親がゼーテにご飯を出したり、必要なものを買い与えるといった最低限は行っていたことである。
シーヴァは入浴や睡眠の時もゼーテと一緒におり、常に彼女に話しかけたり笑いかけたりしていた。
両親からなぜゼーテといつも一緒にいるのか問われると、シーヴァは絶対にこう答えた。

「ゼーテが大好きだから」

いつも、ただそれだけしか答えなかった。
しかし、兄妹が学校に通い出すと状況は一変した。

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