異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

追放処分された「天使」

「聞きたいことというのはだな、貴様が「ナビゲーター」の役職を超えた対応を異世界人にしているという報告が入っているのだ。その確認に来た」
「ははあ、さてはメタトロン様直々の遣いですね?」
「察しがいいな。その通りだ。それで、どうなのだ? 返答次第では貴様を尋問せねばならん」

そう言うとミカエルはおもむろにサーベルを抜き、ナビゲーターに向けた。

「おー、怖い怖い。いきなり構えないでくださいよ。私だって戦いたくはないんですから」
「ならばさっさと答えろ。私は貴様の命をどうしても良いという許可も得ている」
「うーん、それはですねぇ……そのぉ……」

口ごもりながら遠くを見始めたナビゲーターに向かってミカエルは怒気を飛ばした。

「さっさと答えろ! 首を撥ねられたいか!?」
「……私は、この場所に来てから7060名の異世界人の方々をナビゲートしてきました」

ミカエルの怒声は無視して、ナビゲーターは話し始める。

「そうして、何度も後悔と挫折、そして絶望を味わい続けました」
「何度も、何度も」
「何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も」
「何度も!何度も!自己紹介からやり直して、例の「ガチャ」の説明をして!最後に非情なルールの犠牲になった方々の魂を安らかに消滅させてきました!!」
「何回「この人なら」と思ったでしょうか!何度「これなら魔王を倒せる」と希望を抱いたでしょうか!」
「しかし、結果は全てが異世界人の死。更に、異世界人は死んだらこの世界の生物全ての記憶から自動的に消去される。そのせいで幾度辻褄合わせのために面倒なことをさせられたことか!」

ナビゲーターは怒りと憎しみ、悲しみなどが大量に混ざり合った表情をして語る。

「もう何度諦めかけたことでしょうか。魔王を討伐できそうな素質を持った異世界人をピックアップしてはあの「上様」に提出して、転移させて…………死なせて」
「今考えれば、「上様」もといメタトロン含めた天界全体で私の苦しむ姿を観て楽しんでたんでしょうね」

一転してナビゲーターはふてくされた顔になる。

「はあ……100年もあんな悪夢みたいな場所で過ごさせられて、やっと出られたと思ったら待っていたのは追放処分」
「翼をもぎ取られて、リングも消されて堕天させられ、そして天界に戻ることすら叶わない」
「それでも、どうにかこの世界の役に立とうと魔王を倒す手助けにためにあんな機械を作って、プログラムして………」
「気づけば、もう何百年あの時から経ったか覚えてないですよ。しかも、私は愚かだった」
「ずっと前から思いつくことが出来たであろう「スナっち」のアイデアすら最近まで思いつかなかった」
「まあ、この世界中の情報集めて整理整頓して内容確認しての作業が終わったのが3、4週間前の話だっていうせいもありますけど」

ナビゲーターは疲れ切った顔になったあと、不敵にニヤッと笑った。

「そんな長い長い準備と試行の期間を終えて、ようやく見つけたんですよ。本物の「希望」になりうる人間を」
「それが彼、「藤崎 啓斗」! 既にあのベルフェゴールとマモンに襲われたのに死ななかった! ヴァーリュオンの双子騎士の信頼を勝ち取った!」
「呪われた幼女を救った! 暴走した半龍人の少女を沈静化させた!」
「彼には他とは違う何かがある! だから、私は決めたんです! 彼に最大最高のナビゲートをする代わりに、これを最後の挑戦にすると!」

ナビゲーターの声はみるみるうちに、希望に満ちた明るいものに変化していく。

「私は、彼を最初で最後の「主人公」に決めたんです。正真正銘ファイナルトライです。ですから、どうか、どうか……」

そして、笑顔が一瞬にして冷たい威嚇の表情に変わる。

「私達の邪魔をしないでください。ミカエル様がお帰りになったら、もう一切の来訪者を私は敵とみなします」
「ですから……そう、お伝えください。あの威張り腐った野郎にね」

一通り喋り終わると、ナビゲーターはミカエルに背を向けて歩き始めた。


「待て。追放処分を受けたほどの大罪人の貴様が、何故にそこまで一方的に条件を述べる? そんな戯言ざれごとに我々が耳を貸すと思うか? なあ、「イヴ・アズライール」」

背後から投げかけられた言葉、特に自身の下の名にあたる箇所の言葉に過敏に反応した。

「黙れ……!!  その嘘をつき慣れた薄汚ねぇ口で、私の名前を呼ぶんじゃあねぇですよ!!」
「さっさと帰りやがってください!それであのゴミ大天使に私の意見を伝えろって言ってんですよ!」

その明らかに激昴した様子を見て、ミカエルはサーベルを構え直す。

「このミカエル、我らの主たる上様への冒涜を見過ごす訳にはいかん。1度貴様に教えておこう。我ら天界軍と貴様に、どれほど力の差があるか」
「へぇ……良いですよ!試してみて下さいよ!でも、逆に言葉を返させていただきますよ!?」
「どうせ血筋で「ミカエル」になっただけだろう貴方の力なんかたかが知れてんですよクソガキが!」
「他の天使たちがどうしてもどうしても殺処分出来なかったから追放せざるを得なかった私に、1対1で勝てるとでも!?」

ブチ切れモードでそう叫んだイヴは、この空間に響き渡るほどの大きさで指を鳴らした。

「いいでしょう! 戻った後のお土産話をあげますよ!いかにして私に叩きのめされたのか、天界の皆さんにお話ください!!」

見渡す限りの純白の世界、その地面とも床とも言えない足元。
そこが「ガコン」という大きな音を出しながら開いていく。
そして、ナビゲーターとミカエルを囲むように無数のレーザーガンが出現した。

「ここは追放者が最後に送られる虚無の場所でした。でも、逆に何も無いから改造するのは簡単でしたよ?」

ナビゲーターが手を振りあげると、一斉に銃口がミカエルに照準を合わせる。

「最後の警告です。今すぐお帰りを。さもなくば貴方の肉体の粉末を天界に届けることになりますよ」

口に笑みを貼り付けてそう言ったナビゲーターの目は、笑っていなかった。

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