異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

双子の「戦い方」

(ゼーテ、どの強化がいい?)
(いつも通り、刺突の貫通力を増強させるやつでお願い)
(了解だ。僕も全力を尽くそう。バックアップは任せろ!)

現在、双子は「テレパシー」で脳内に直接言葉を送りあっている。
これも【異体同心スピリット・リンク】の効果の一つである。

(バックアップ……か。そういうこと言っても、結局アイツも魔法でごっつり攻撃するから、どっちかと言うと「遠距離爆弾」ね)
(……まあ、あのすっとろい援護射撃を撃つ騎士団員よりは期待出来るわよね)

ゼーテは心中で何となく毒づきながら、、腰に提げていた本物の剣を抜いた。
「貫剣・パーシヴァル」。
遥か古代の伝承から伝わる12人の騎士の名を冠する、ヴァーリュオンの宝剣の内の1本である。
ヴァーリュオンの騎士団は、基本的に実物の剣は持たない。
魔法が他国と比べて非常に発達しているこの国では、質量のある剣や弓はあまり使用されない傾向にある。
重い甲冑を着け、更に剣を装備していると、その分精度とスピードが嫌でも減退するからだ。
しかし、この「パーシヴァル」は、使用者によってはそのデメリットを克服できる性能を有している。
この剣のコンセプトは、「限界まで軽く、限界まで鋭利に」。
「7年前の事件」の際に1度破壊され、使用者もおらず長らく修復されていなかったのだが、ゼーテが近接戦闘部隊隊長になった時に修復と改造を頼んだのだ。
彼女の接近戦の才覚を持ってすれば、下級の魔物のような魔法を使うまでもない弱い相手や、魔法に耐性のある相手の場合でも実物の強力な剣を持っていれば難なく倒せるという訳だ。
魔力の節約と非常手段の両方を担えるのである。

(ゼーテ、やはりパーシヴァルを使うのか?しかし、あれは弱点を狙って攻撃するタイプだろう。あの巨体に効くのか?)
(何言ってんの。あれだけ大きいんだから、逆に狙いやすいわ。目とかね)
(なるほどな。なら、僕はしっかり隙を作ろう。なに、範囲魔法は僕の得意分野だ。合図は頼むぞ?)
(了解。じゃあ、まずは強化お願いね)

ゼーテがそう伝えると、パーシヴァルが螺旋を描くように絡み合う白黒を混ぜ合わせたような色の輝きを放ちだした。
シーヴァが早速、貫通力を上昇させる魔法を使用したのだが、ゼーテはここでも驚いた。

(片方が習得してない魔法でも融合の効果が……?)

彼女は剣に光属性を纏わせる魔法は有しているが、切断力や貫通力を上げる魔法は覚えていない。
しかし、それでも兄の魔法の中に「自分」を主張するように絡み合う白い光に、ゼーテは内心ゾッとした。

(私……そこまで………? 駄目よ、今は雑念なんていらない!)

気がつけば既に地龍ルカの懐近くまで接近していた。
地龍ルカは敵意むき出しの双眼でこちらを見つめている。
先程の攻撃で警戒したのだろうか、今度は地龍ルカの方からいきなり攻撃を仕掛けてきた。

「ゴアッ!!」

翼の羽ばたきで無数の風刃を飛ばしてくる。
しかし、ゼーテに着弾する直前に全てが壁に弾かれたように霧散した。

(サンキュ)
(おや、お礼なんて珍しいな)
(良いから素直に受け取っときなさい)
(素直じゃないのはどっちだろうな?)

テレパシーでそんな会話を交わしながら、ゼーテは更に距離を詰める。
ちなみに、今のはシーヴァが魔法障壁を生成して風刃を防いだのだ。

「やれやれ。今考えついたが、この状態のルカさんの目を潰したとして、元に戻った時大丈夫なのか?」

シーヴァは独り言を言いながら、ゼーテの位置を通過して自分にまで飛んできた風の刃を防御していた。

「さて、やはり合図を待つのは退屈な気がしてきた。僕もやるか」

ニヤリと笑ったシーヴァは、静かに両手を前に掲げ、呪文を唱えた。

でよ、【犠牲サクリファイスクロウズ】」

シーヴァの両掌から、実物のカラスと同程度のサイズの真っ黒な鳥が次々と生み出される。
その数、およそ30羽ほどだろうか。
そのまま静かに地龍ルカを指差すと、鳥達は一斉にゼーテを追うように飛んで行った。


犠牲サクリファイスクロウズ
魔法の中では使い魔の召喚に属する。
闇属性魔法に高い適正が無ければ出現させることが出来ない。
使用者(つまり「主人」)の命令を非常に忠実に聞く。
攻撃方法は、攻撃対象に接近して「自爆」すること。
自爆すると、闇の黒炎が対象を襲う。


「さあ、我が妹の止めの一撃のための崇高な犠牲となれ」

向かわせた大量の鳥型爆弾を見つめながら、シーヴァはゼーテに言葉を送った。

(僕の「鴉」、有効に使ってくれて構わないよ)
(……やっぱり。後ろからカァカァ聞こえると思ったのよね)

地龍ルカは、口から吐き出した小型の風の塊で鴉を数匹撃ち落とした。
胴体を撃ち抜かれたり、羽根に穴を開けられた鴉は回転しながら地龍ルカに向かって落下していく。
そして、落下した鴉が地龍ルカの体の何処かに触れた瞬間、大爆発を起こした。

「グガアアァァァ!!!」

龍鱗は吹き飛び、皮膚をも貫通して火傷を負わせた。

(やっぱり強力ね。もし、アイツケイトにこれも使って戦ってたら勝てたはずなのに)
(……優しさ?………ううん、ただ意気地がないだけよ、絶対そう!今は相手が異常な回復力を持ってるから安心してるだけ!)

ゼーテもその隙に一気に距離を詰めて、喉元に僅かにあった鱗の隙間を狙い、思い切り剣を突き刺した。
刺した部分から鮮血が吹き出し、それをモロに浴びてしまう。
それでも躊躇うことなく、1度引き抜いた剣をもう一度寸分違わぬ場所に突き込む。
鴉の大群も、地龍ルカの眼前に迫っていた。







焼け落ちた森の中で、啓斗は地龍ルカを見ていた。

「なあ、あとどれくらいだ?」
『取り敢えず、今でもう50%は削りました。さあ、北の森へ行きましょう!』

啓斗はマリーの手を取ると、また駆け出す。
ナビゲーターは心底楽しくてたまらないという表情で周囲をまじまじと見ていた。

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