異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

地龍鎮圧戦 1

第1部 5章 「暴走する大地の龍」




啓斗が馬車に乗り込む約1時間前。
シーヴァとゼーテは、完全に暴走状態に陥ったルカに苦戦を強いられていた。

「くっ!はぁっ!」
「ガア!ゴルルルアア!」

ゼーテもルカに攻撃を入れようと動き回りながら剣を振るうのだが、龍人状態のルカの驚異的な反射神経でほとんど回避され、更に当たっても強固な龍鱗のせいでダメージを与えられない。

「くっ……このままじゃジリ貧になるわね。でも、私が退いたらルカはどこかへ飛び去ってしまうかもしれない。一体、どうすれば……」

ルカが繰り出す爪攻撃を皮1枚で避けながら、ゼーテは突破口を模索する。
ゼーテは友人であるルカに必要以上の怪我を負わせたくなかった。
しかし、そんな甘い考えが通用するほどルカの状態は良好とは言えない。
今のルカの両眼には純度100%の狂気が宿っており、説得に応じそうには見えない。
それでも、ゼーテは微かな希望にすがりついてルカに言葉をかける。

「ルカ、お願いだから目を覚まして! 貴女を傷つけたくないの!」
「ガルア!!」

やはり、ルカはゼーテの言葉には耳を貸さない。
完全に「野生の化け物」となってしまっている。
その様子をずっと倒れながら見ていたシーヴァだったが、自分のダメージが回復したと見ると急いで立ち上がり、ゼーテに叫ぶ。

「ゼーテ!手加減して勝てる相手じゃない! 僕は【黒眼】を使うぞ!」
「ダメよ!アンタがやったら死んじゃうかもしれないじゃない!」
「しかし、この状態じゃ確実にやられる!分かってるだろう、打開策はこれしかないんだ!」
「……………っ!!!」

最後の最後までゼーテは躊躇していた。
しかし、それによって隙が出来てしまう。

「あっ……………!!」
「………ゼーテ!!!」

ゼーテの顔を、龍の爪が深く切り裂いた。
彼女の右頬から鮮血が飛び散る。
その様子を見て、シーヴァは自分の体の痛みなど忘れて飛び出した。
走りながら右手に闇の魔剣【シャドウブレイド】を作り出す。

「ルカァァ!!」

そのままルカに向かって走りつつ、5、6発連続で魔法弾を左手から連射する。

「ガアッ!!」

どうやら魔法攻撃には物理攻撃ほど耐性が強くないらしく、僅かではあるが手応えがあった。
ダメージは与えられていないようだが動揺させる効果はあったようで、大きく距離を取らせることに成功した。
その隙にシーヴァはゼーテの傍に駆け寄る。

「ゼーテ、無事か?」
「……何とかね。応急処置は自分で出来るから、ルカの動きを見てて」
「了解だ」

ゼーテが治癒魔法で顔の出血を応急処置をしている間、シーヴァはルカの動向を警戒する。

「突然動かなくなったな。何をしてるんだ?」

ルカは、シーヴァ達から10メートルほど離れた場所で上半身を屈ませている。

「ゴオオ……」
「……!ゼーテ、急げ!」
「やってる!どうしたっていうの!?」

シーヴァは、最初はルカが傷の痛みを気にしているのかと思っていた。
しかし、途中から体の震えが止まり、まるでパワーを溜めているような雰囲気を醸し出し始めたのだ。

「何か来る……!ゼーテ、避けるぞ!」
「ちょっと、まだ終わってないのに!」

ルカが大きく息を吸い込み、双子の方を向いた。

「バオオオオオオオォォォォォ!!!」

ルカの口から放たれた暴風のブレスが、地面を抉り取りながら双子に迫り来る。
2人は咄嗟に別々の方向へ跳ぶことで回避した。
ブレスは、避けた2人の間を通過して練習場の壁に到達し、その部分に深い溝を作った。

「なんて威力だ! どうやら、空気を体内で超圧縮して口から放出しているようだな」
「確かに、あんなのまともに喰らったら人間じゃ真っ二つね」

応急処置を終えたゼーテは、吹っ飛ばされた時に消してしまった【シャイニングブレイド】を作り直す。
シーヴァも【シャドウブレイド】に更に魔力を送り込んで威力を上げる。

「彼女をこのままで街に逃せば、間違いなく大惨事になるだろう」
「そうね。それに、この状態のルカに対抗出来るのは、この国じゃ私たちかくらいなレベルだし」
「応援を要請するのも手だが、どうにかして僕達だけで彼女を止めたい。軍に拘束なんてシャレにならないからね」
「そこは同意見。じゃあ、全力で行きましょう。私達で暴走を沈静化させる!」
「よし、僕達の力を見せるときだな!」

双子はお互いの目を見て、頷きあった。

「さて……」
「じゃあ……」

二人同時に深呼吸をし、精神を統一する。

「「魔眼の双騎士」の力を見せつけてやろう!」
「必ず助けるけど、怪我させたらゴメンね!」

それぞれの得意魔法を具現化した剣を持つ双子は、暴走した地龍を鎮めるため、本気の戦闘を開始した。

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