異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

(side啓斗) 最奥の遺跡

「……やれやれ、捕まるのも案外いい方に傾くんだな」

啓斗は、クモの糸に捕まった後、遺跡に連れていかれて体をぐるぐる巻きにされて吊るされていた。
だが、啓斗は脱出の手段をいくらでも持っている。
結局、【ブレイズ】で簡単に糸が焼き切れたため、すぐに逃げられた。

「力に強いが、火に弱いらしいな。まあ、糸だからか」

ぐーっと伸びをして、改めて周りを見渡す。
そこで、啓斗は驚愕した。
至る所にクモの糸で拘束されたエルフ達がいる。
しかも、ほとんどが生気を失った顔色をしており、呼吸も微弱だ。
その中で、彼は面識のある人物を見つける。
彼女を拘束している糸を焼き、落下してきたのを受け止めて地面に横たえる。
そして【ヒール】を使って応急処置を施した。

「う……ん……」
「ディーラさん、大丈夫ですか?話せますか?」

ディーラはうっすらと目を開けて、ゆっくりと上半身を上げた。

「……ケイト君か。良かった、間に合ったな」

ゲホゲホと咳き込みながら啓斗を見る。

「ルカに……これを、渡してくれ。そうすれば、この状況を打開できる……」

ポケットから小瓶を出して啓斗に握らせる。

「私や皆を救出するのは後でいい。急いでそれを……」

言い終わる前にディーラは意識を失った。

「ディーラさん、これを渡してどうすればいいんですか? そこまで言ってもらわないとこっちも困るんですよ?」

どうにか起こそうと揺さぶるが、完全に気絶してしまったディーラは起きることは無かった。

「……必ず戻ります。体をしっかり休めて下さい」

ディーラを隅に運び、啓斗は遺跡の探索を始めた。
ここは崩壊した遺跡と森が融合したような姿をしていた。
苔むした壁や崩壊した柱などが所々に散乱している。

「森の中の、崩壊した遺跡か。明らかに何かありそうだな」

壁に刻まれている解読不能な文字を眺めながら1人で喋る。
そのままひたすら辺りを探索していると、何かよく分からない、強いて言うならば祭壇と言える場所に出た。

「壁画か。これなら雰囲気で分かる」

そして祭壇と思わしき場所の両脇の壁には、巨大な壁画が描かれていた。
それは、巨大な翼を持つ龍が人と共に暮らし、そして最後には人々に見守られて大地へ還るというものだった(啓斗の解釈が正しければの話だが)。

「……これを見る限り、地龍は死んでいるようだが、どういうことだ?」

首をかしげながら祭壇の前まで進む。

「特に何かが起こる訳でもないか。儀式を行う人間が必要って訳だな」

ルカ探しを続行しようと背を向けたその時、

『待て、そこの人間』

頭の中に響くような声が聞こえた。
思わず周りを見回すが、もちろん誰もいない。

『祭壇の前に戻れ。時間が無い』

そう言われ、スタスタと祭壇の前に戻る。
瞬間、目の前が真っ白になった。






「……どこかデジャブ感がある」

視界が元に戻ると、そこは一面真っ白、地面が草原の世界だった。
そして、少し遠くに巨大な樹が生えている。

「行くしかないんだろうな」

特に警戒もせずに早足で樹の根元に到着した。
そこには、1人の男が座っていた。

「すまんな、突然こんな場所に呼び出して」

男は年齢が詳しく判断のつかない外見をしている。

「あなたが、地龍様ですか?」

なるべく早く本題に入ろうと啓斗は素早く切り出す(ルカの探索が第一優先だからだ)。

「いや、違う。俺は……そうだな。仲介役だ。地龍様は、この世界そのものさ」

そう言って親指で空を指さす。

「少年、忙しいようだな。要件だけ言うぞ。お前の役割についてだ」

次に男は啓斗が持っている小瓶を指さす。

「そいつは、巫女が飲むと効力を発揮するモンだ。んで、巫女ってのは、お前が探してるルカだ」
「だから、ルカを見つけたら有無を言わさずそいつの中身を全部飲ませろ。手段は問わない。そうすれば、あの気持ち悪いクモ共を追い払える」

啓斗が戸惑いながらも頷くと、男は最後にこう言った。

「ルカは、自分が巫女だと知らない。まあ、巫女と言っても「適合者」って事なんだがな。別に儀式とかは必要ないんだ」
「じゃあ、頼んだぞ。失敗したら……皆死ぬ。では、幸運を祈る」

アドバイスしているのか脅しているのかよく分からない男が話終えると、また視界が真っ白に染まった。





「……なんだったんだ?」

気づくと遺跡に戻ってきていた。
最近なんだか一方的に話されることが多い気がする、なんて考えながら啓斗はルカ探しを再開した。
マップを確認しながら遺跡内をくまなく捜索する。
東側は何やら石像が大量に並んでいた。
西側はクモの巣の量が多く、古代文字らしきものが書かれた石碑もあった。
1度、エルフ達の様子を確認するために来た道を戻る。




エルフは全て消えていた。痕跡一つ残っていない。

「おいおい嘘だろ……」

しっかり隅に横たえておいたディーラもいなくなっている。
言いようのない不安を感じ、直感的に祭壇まで戻る。

「……なっ」

啓斗は思わず祭壇の入口で足を止めた。
啓斗は、天井から吊り下げられるエルフ達と、手が6本ある謎の男、そして追い詰められたルカを見つけた。

「異世界スキルガチャラー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く