異世界スキルガチャラー

黒烏(クロウ)

夜:ヴァーリュオン国王

扉の奥には、若い男性が玉座と思わしき場所に座っていた。
護衛の騎士が誰もいないことに啓斗は少なからず疑問を覚えたが、シーヴァとゼーテが両脇をガッチリ固めているので、啓斗が何かしようとすれば一瞬でほふられるのだと彼は納得した。

「やあやあ!君達が民衆を守るのに一役、いやほぼ全役買ってくれたという旅人の方々だね!お名前は?」

その「王」は、威厳もへったくれもないフレンドリーな挨拶をしてきた。

「おっと、名前を聞く時はこちらから名乗るのが礼儀だな!私はこの魔法王国の12代目国王、ジェイド・ヴァーリュオンだ。宜しく」

そう言って手まで差し出してくる。
ここまで丁寧に出られては警戒すらできない。

「藤崎 啓斗と言います。ジェイド王、お会いできて光栄です」

そう言って差し出された手をしっかりと握る。

「ケイト君か!珍しい名前だな。そちらの君は?」

ジェイド王は、人の良い笑顔のままルカの方に顔を向けた。

「えー……あの、ル、ルカと言います。エルフ族で、近くの森から来ました。よ、よろしくお願いします」

逆にガチガチに緊張してしまったルカは、ぎこちない様子でペコリとお辞儀をした。

「エルフ族!?いや、オーガ族や獣人は腐るほど見てきたが、エルフは初めてだ!」

ジェイド王はまるで子供のように顔を明るくしてはしゃぎ回っている。

「王、少々落ち着いてはいかがでしょうか」

ゼーテが冷たい目でそれを見つめながら言う。

「ゼーテ君!視線!痛い!君の視線は本当に刺すようだな!……まぁ、言っていることは正しいな。少し落ち着こう」

これもいつもの光景なのだろうか。シーヴァは我関せずといった感じで自分の眼帯がズレていないか手鏡で確認している。

「……よし、今夜は盛大にパーティをしようじゃないか!君達をヒーローとして紹介させてくれ!」

そう言うやいなや、ジェイド王はパチンと指を鳴らす。
すると、どこからともなく執事らしき男性が現れた。

「今夜8時のパーティの内容を変更だ。他国の貴族達には「また今度」と伝えてくれ。民を救った双子と旅人達を盛大に讃えようじゃないか!」
「……かしこまりました」

執事は魔法で床に穴を開け、飛び降りていった。穴はすぐに塞がった。

「よし!シーヴァ君、ゼーテ君!この御二方のドレスアップをしてあげてくれ!君達のセンスならパーティまでに間に合うだろう!では、8時にまた!」

そう言ってジェイド王は軽快な足取りで王室を出ていってしまった。

王の姿が見えなくなった後、シーヴァが大笑いし始めた。

「フハハハハハ!!……クク、やはり我らが王は自由で最高だな!」
「落ち着きがなくて無責任なだけでしょ。結構遠くの国から重役さんも来てたのにねぇ」

ゼーテは苦笑い気味だ。

「よし、そうと決まれば早速ドレスアップだ!よしケイト、今すぐフィッティングルームに行くぞ!お前にぴったりなスーツがあるんだ!」

シーヴァは啓斗の腕を鷲掴みにして、走っていってしまった。
引っ張られながら啓斗は、

(ジェイド王さんとシーヴァってどこか似てるな)

なんて事をぼんやり考えていた。
取り残されたルカとゼーテは、顔を見合わせる。

「……それじゃ、私達も行こうか、ルカ。アナタ、可愛いからいい服着たら絶対モテるよ」

ちょいちょい、と指で「着いてきて」と合図し、ゼーテは先を歩き始める。
ルカは、自分が可愛いドレスを着た姿を想像し、思い描いていた「輝く場所でのパーティ」が実現すると大興奮した。
ちなみにルカが今1番ドレス姿を見てもらいたい男性は、もちろん啓斗である。





「うん、結局君はシンプルなブラック&ホワイトが似合うみたいだね」

パーティまで残り30分、シックなスーツからもはやスーツとは言えない代物まで色々と着てみたあと、結局黒のタキシードになったのだった。

「ケイト・フジサキなんていう外国の人間みたいな名前なのに、ここまでスーツが似合うとは思ってなかったよ」

そう言うシーヴァは、ダークレッドのスーツと、その下に漆黒(本人談)のシャツを着用しており、胸ポケットにバラをさしている。
かなりキザな格好だが、眼帯も合わせてよく似合っているので驚いた。
お互いにネクタイを締めあい、シーヴァが決めポーズを取る。
今日が初対面なはずの2人は、まるで昔からの友達のように笑い合いながら会場へ歩き出した。



「……ここまで緑が似合う人初めて見た」

ルカの今の状態を見たゼーテの最初の感想はこれだった。
ルカは、明るい緑の色をしたドレスを身につけていた。
髪はポニーテールに結び直し、エルフとしての特徴をしっかり見せることによって、旅装束から似合っていた緑との相性を引き立てた。

「うん!これにする!ゼーテさん、ありがとう!」

両目をキラキラと輝かせながらルカは自分の姿を鏡で見つめる。

「どういたしまして。あと、ほぼ同い年なんだから呼び捨てでいいよ」

2人は、お互いに着替えながら近況や年齢などを話し合っていた。
その無邪気な姿に、ゼーテも気づけば顔が緩んでいた。
ちなみにゼーテは真っ白なワンピース。
白い髪色と合わせ、生身の人間とは思えないような美しさを放っている。

「ケイト君、気に入ってくれるかな?」
「さっきからそればっかりね。大丈夫、絶対メロメロだから。……問題は、アイツシーヴァが変な服着せてるかもしれないことくらい」
「えー……そうなの?」
「まあ、他人のスーツ選びなら大丈夫だと思うけど」

そしてルカは、ドレスが変にはだけないようにそろそろ歩き出した。
ゼーテは、それを見て微笑みながらゆっくり後に続いた。






「お集まりの紳士、淑女の皆様!この度は
国を救ったと言っても過言ではない4人を讃えるためのパーティに来席頂きありがとうございます!」

ステージ上のジェイド王が高らかに声を張り上げる。
パーティホールには、ヴァーリュオン王国の各地区の大臣、貴族などが集まっていた。

「それでは、早速主役に登場して頂きましょう!我らが誇る双子騎士、シーヴァ&ゼーテ!そして……」

ここで大きく息を吸いこむ。

「旅人、Mr.ミスターケイトとMs.ミズルカに盛大な拍手を!」

ステージのカーテン裏で待機していた啓斗とルカは、双子に思いっきり背中を押され、表舞台に出される。
瞬間、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
2人は急いで深々と頭を下げた。ルカが頭を上げてこっちに笑いかける。
それに啓斗も笑顔で応えながらも、頭の中では

(俺、こっち来てからまだ1週間経ってないんだけどな……)

と思っていた。
流石に自重したのか、双子は啓斗達の後ろで手を振るにとどまっていた。
シーヴァは何やら飛び出そうとしてゼーテに肘鉄を入れられていたが。

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