異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

昼:眼帯の双子

午前10時40分。
先程より人通りが少なくなった道を2人は歩いていた。
宿のカレンダーを確認したところ、今日は水曜日のはずなのだが、やはりと言うべきか、ほとんどの店が臨時休業している。
鍵がかけられたドアには、全てに
「パレード終了の午後6時まで休業」
と書かれた紙が貼ってあった。

「薄々分かってはいたが、まさか本当にジャンル問わずほぼ全ての店が閉まってるとは……」

啓斗は肩を落として呟く。ルカも頬を膨らませて拗ね始めている。
そんな状態で歩いていると、開いていると思わしき建物を見つけた。

「カフェだな」

その看板の下のメニューを見て、啓斗はそう解釈した。

「かふぇ……ってなに?」

ルカは頭の上に疑問符を浮かべている。

「カフェっていうのは、お茶とかコーヒーとかを飲んだり、軽食を食べたりする場所だ。開いてるみたいだし、入ってみよう」

洋風でかなり洒落ている扉を開け、カフェの中に入る。

「すいません、やってますか?」

念の為そう聞きながら奥に進む。
すると、店主らしき初老の男性が人の良い笑顔を浮かべながら店の奥から出てきた。

「あ、やってますよ。2名様ですね。今日みたいな日は誰もいないので、お好きな席にどうぞ」

ルカがタタッと走って窓際の席に座る。
啓斗もそれに続いてルカの向かいに座った。
ようやく落ち着いたので、ざっとメニューを見てみる。
ルカはどの飲み物もよく分からなかったので、啓斗に任せることにした。

「コーヒーと……グレープジュースで」
「かしこまりました」

注文を聞き終えた店主は、店の奥に姿を消した。


数分後、コーヒーとジュースが運ばれてきた。
「それにしてもすごい人の量ですね。凱旋パレードってそんなに盛大なんですか?」

店主に聞いてみる。

「おや、ご存知ない?そうですか、旅の方ですね。では、少々長くなりますがお話しましょうか?」

啓斗はもちろんと頷き、ルカも(何となく嫌そうな顔はしているが)頷いた。

「この国は周りに魔物の巣が多くありましてね。稀にこちらの方まで餌を求めて来ることがあるんです」
「それまでは警備兵達で問題無く対処できたのですが、最近になって統率的に攻めてくる知恵のある魔物が多くなってきたので、今年に入ってから「騎士団」を王の命令で新設したのです」
「そして今回、騎士団の方々の初陣がありまして、北の魔物の住処に攻め入ったのです」

そこで店主は顔をほころばせ、

「結果は、大勝利。住処を壊滅させたのを我々国民は映像投影魔法でリアルタイムで目撃しました。今日は、その戦果を讃えるパレードなのです」
「自分で言うのもなんですが、実はここは騎士団のあるお2人のお気に入りでして、恐らくもうすぐ来られる頃だと思いますが……」

と店主が言った瞬間、ドアが勢いよく開く。

「マスター!開いてるかい!?いや、この僕達が来るのだから開いていない訳が無い!」
「……いつも言ってるけど、マジでうるさいからやめて」

という声が聞こえてきた。
目を向けると、そこには1組の若い男女が並んで立っていた。
2人とも端正な顔立ちをしており、髪は、少年は啓斗と同じ黒、少女は完璧な白髪、いや、よく見ると「銀髪」だ。
身長は、少年は178cm、少女は165cmといったところか。
それよりも一番目についたのは、彼らの目である。
少年は左目に、少女は右目に眼帯を着けている。
黒地に金色の糸で、剣とその両脇に天使のような羽が紋様のように縫い付けられており、何か只者ではない雰囲気を醸し出している。
少女の方は啓斗達に気付いたようで、軽く会釈してきた。
啓斗も座ったままだが頭を下げる。

「シーヴァ様、ゼーテ様、お久しぶりです。最後にご来店頂いたのは1週間ほどでしたか?」

店主が笑顔で2人に話しかける。

「そうだな!この暗黒の騎士、シーヴァ・ナイトブライトが1週間経てばもう一度ここに来たくなると思える店なのだから、誇りに思いたまえ!」

少年は、なにか気取ったポーズを取りながら店主と会話している。
少女の方はかなり苦々しげな顔をしながら

「……他のお客さんいるのにフルネーム言うのやめて。恥ずかしくてしょうがないから」
「あと、暗黒の騎士なんだったらもうちょっと落ち着いたらどう?」

と続けた。
少年、シーヴァはこう言い返す。

「フッ、「暗黒の騎士だから物静か」なんて古い考えはいい加減捨てろ!あと、それに当てはめるなら煌白こうびゃくの騎士であるお前はもっと明るく振舞ったらどうだ!」

すかさず少女、ゼーテも言い返す。

「古い考えを捨てるんなら、アンタもその考えやめなさいよ!性格までギラギラしてる騎士なんて悪趣味以外の何者でもないじゃない!」

ちなみに店主は微笑ましそうに2人を眺めている。
一方、ルカは口を半開きにしながら呆然と2人を見つめている。
啓斗はこう思っていた。

(何だこの厨二病こじらせ兄妹きょうだい……本当に騎士なのか?)

と。
そんな、珍獣を見る目で2人をじっと見ていると、シーヴァもこちらに気づいたらしい。早足で近づいてきた。

「やあ、見たところ旅の人のようだね!僕は王国騎士団副団長、「暗黒の騎士」シーヴァ。こっちの白女しろおんなは双子の妹のゼーテだ。宜しく!」

そう言って手を差し出してきたので、遠慮がちに握り返す。

「俺は啓斗。こっちは仲間のルカだ。こちらこそ宜しく」

啓斗も自己紹介し、ルカもいつもの人好きのする笑顔を浮かべる。

「……ごめんね、シーヴァこのアホがうるさくて。改めて、私は王国騎士団の接近戦部隊隊長、「煌白こうびゃくの騎士」ゼーテ。よろしく」

兄のことを散々けなしている割に、自分もしっかり肩書きまで言うゼーテ。
ゼーテはルカと握手を交わした。



ゼーテとシーヴァはコーヒーのテイクアウトを頼んだ。

「本当はここで君達に僕が暗黒の騎士たる所以ゆえんをじっくり話して聞かせてあげたいが、パレードの準備まで時間が無いのでね!」

店主に手渡されたストローとフタ付きの紙コップを受け取りながら、シーヴァは心底残念そうに言う。
すると、ゼーテがポケットから何かを2枚取り出し、ルカに渡した。

「これ、余ってたし渡す人もいないからあげるわ。本当は肉親にあげる用の特別な奴だけど」

それは、Sだった。

「さっき会ったばっかりだけど、見に来てくれれば嬉しいわ」
「僕らの晴れ舞台、是非見に来てくれたまえ!いや、来なければ僕の暗黒魔法をお見舞いするから絶対に来い!いいね!」

シーヴァはそう言って高らかに笑いながら、ゼーテはコーヒーを飲みながら走って去っていった。



「なんと言うか……嵐みたいな2人だな……」

ルカに渡されたチケットを見つめながら、啓斗は呟いた。
ルカもウンウンと頷いた。
ドン引きしながらも、席取りしなくてもいいなら見に行ってみてもいいかも知れない、と2人とも思った。

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