万物《オムニア》を統べる者 -禁忌の双極-

万物の創造者

さて、騒がしい朝も過ぎ、今は平穏な朝食の時間―となる、ハズだったのだ。本来なら。


「天音。説明してもらえるか?」


鈴莉がこぼした醤油の拭き掃除を終えた俺は、目玉焼きを1口入れながら天音へと問う。

俺の問いかけに天音は小さく頷いてから、饒舌にその詳細を語り始めた。


「万物創造、ですか」


「......それがお前の異能名だな?」


「ですです」


万物―どうやら、聞き間違えじゃないらしいな。

これは本当に、詳しく掘り下げる必要がありそうだ。


「天音のおじいちゃんおばあちゃんが付けてくれた名前らしいんですよ。厨二臭いとは思いますが、割りと気に入ってます」


「おじいちゃんに、おばあちゃん......ねぇ」


そのネーミングといい、その2人といい、更に思い当たる節が出てきたのだから、厄介極まりない。

隣で牛乳を飲みながらの鈴莉がこちらに身体をすり寄せてくるが、思考は―無理だわ。この状況で考え事とか無理だわ。

えぇい、ままよ。いっその事弄りながら考えるか。


「それにしても、これだけ異能者が揃うって......なんか珍しくない感じだねー」


「珍しくないって事は、お姉ちゃんもですか。......あ、お兄ちゃん。これみよがしに頭撫でてんじゃありませんよ」


げ、注意された。いいじゃん別に。鈴莉の頭撫でてたって。お前が初心過ぎるんだろ。

といった俺の毒吐きも何処吹く風か。天音は淡々と言葉を紡ぐ。


「お姉ちゃんも、異能者。お兄ちゃんも、異能者......と。稀有な存在とは到底思えなくなってきましたね」


「それだけ感覚が麻痺ってるんだよ。......で、万物創造だったか?どんな異能なんだ」


「ふむ。小難しい説明より、見せた方が早いですかね」


天音はそういうと箸を置き、虚空に手を翳す。刹那、


「......ほぉ」

「へぇー」


天音の手には、1つのワイングラスが握られていた。文字通り、瞬きの瞬間に。


「形、用途、名前を指定して天音が一致できたモノは、このようにして創造出来るんですよ。少しばかりの制限はありますがね」


って事は、部屋の家具とかも―

といった俺の考えを読んでいたかのように、天音はそれについても説明してくれた。


「昨日、出掛けると言ったのは......ああいう物を創り出すのに必要な設計図を組み立ててたんですよ。わざわざ家電販売店まで行って、パソコンとかの機能を確認してました」


まぁ、眠かったのですぐに戻りましたが。

と付け加えた天音だが―コイツの異能、『万物創造』は、今まで俺が見てきたどの異能よりも、次元が違う。まさに『万能』と呼ばれるに相応しいモノだ。


「で、何を媒体にして創ってるんだ?」


「脳内設計図さえあれば創れますが、何でしょうかねぇ......。生命力なのか、魔力的なモノなのか、ぶっちゃけ不明ですね」


色々とツッコミたい異能だが、そこは一先ず置いといて。


「まぁ、食べ終えたのなら学校行く―」


「え、まだ時間あるじゃないですか。ここから徒歩10分ですよね?」


8時15分には教室に着けばいい。今は、8時。

天音の言う事もそうなんだが......。お前の場合は、すべき事があるだろうが。

それを悟った鈴莉が、天音へと向き直り、教える。


「天音ちゃんって転校生ちゃんでしょ?だから新人さんなワケで。......先生たちに挨拶しに行かなきゃじゃない?」


「......それを早く言ってくださいってばぁ......!」


―この後。涙目になった天音が猛スピードで支度をし、家を飛び出したのは言うまでもないだろう。



~to be continued.



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