万物《オムニア》を統べる者 -禁忌の双極-

お前が1番だよ-鈴莉

さて、あの後。何故か鈴莉に拉致られてベッドの上で四つん這いになられてるワケですが、その理由が分からないという危機に陥ってます。


「で、さっきの返事―本当に私の事好きなの!?」


激昴しながらペちペちと俺の膝を叩いてくるしろくまパジャマを身にまとっている鈴莉だが、如何せんその手には力が篭っていない。元々身体能力が低い、というのもあるが、俺の発言がそんなにショックだったか。


「別に、構わないが。......何その言い方。あっくんにとってそんなに私は軽い存在なの!?」


べちべち。


「一世一代の必死の告白をサラッと受け流しちゃってさぁ......!」


家具はベッド、テーブル、クローゼット諸々―といった至ってシンプルな鈴莉の寝室だが、終始変わらず鈴莉の顔は怒りか、はたまた羞恥の為か、赤い。
 俺はそんな鈴莉を宥めるように、その小さな身体を抱き寄せ、耳元で囁く。


「そんな事ない。俺も鈴莉の事、大好きだよ」


「......ホント?その場のノリとかでオーケーした、っていうのは―」


「無い。それに俺は誓って他の女に移ったりしないし、移ろうとも思わない。鈴莉が―最初で、最後」


我ながら何を口説いているのかと思ったが、本心からの言葉故にこれしか言い様がない。そしてそれは、留まる事を知らず。


「俺だって前々からお前の事は好きだったし、告白しようとも思ってたよ。ただ、問題があったから―」


「問題、って......?」


「神凪家だ。......もし、両親に反対されたら。もし、鈴莉に拒絶されたら。そう思うと怖くなってさ」


「だから、私からの告白を待ってたの?」


「そう、なる。だから告白された時は本当に嬉しかったし、それと同時に恥ずかしくもあった。だから電話と来客を口実に逃げちゃった―のかもね」


ったく、女々しいにも程があるだろうに。

鈴莉は一連の俺の弁明を聞き届けると、最後に俺の本心を確認するかのように聞いてきた。


―あっくんは、私の事......好き?


と。

それに俺は「勿論」と応じる。寧ろそれ以外の選択肢は無い。それを聞いた鈴莉は嬉しそうに目を細めると、四つん這いの体勢を解き、俺にのしかかるように抱きついてきた。


2つの果実は布1枚で隔てられ、かつ、手を伸ばせばすぐのところにある。今までは抑えてたが、唯一無二の関係正式な恋人となった今日からは、歯止めなくいかせてもらうぞ―?


「んっ......」


俺が2つの果実を下からすくい上げるように撫でれば、鈴莉の唇から甘い声が漏れ出す。それを塞ぐように、俺の唇が鈴莉の朱を引いたような唇へと近付き、触れる。

そのままむき出しの雪肌へ、パジャマのボタンへと手を伸ばし、躊躇いなく開けた。そして出てきたのは、鈴莉の体型には不釣り合いとも言える胸。それを包み込んでいる布へと更に手を伸ばした、時―


「あのー、お二人とも。お楽しみの最中で悪いんですが、部屋―どうしましょうか?」


扉の向こうから、我が従妹の声が聞こえてきた。
 それと同時に、高ぶっていた俺たちの心は一瞬にして萎んでしまう。


「......お楽しみを邪魔しやがって。分かってるならほっとくって選択肢もあるだろうに」


「まぁまぁ、他ならぬ妹ちゃんのお願いだから聞いてあげようよ。それに、まだ時間は沢山あるでしょ?」


「ま、それもそうか」


といった鈴莉の心優しい妹思い意向のもと、俺たちは天音の部屋割りをする事となった。




「―お兄ちゃんが1人、天音とお姉ちゃんで相部屋......でどうですかね?」


従妹が襲来してきた事により食べ逃した夕食をつまみつまみで食べながら、その本人が部屋割りの案を提案してきた。

だが、その案には1つの欠陥点があるんだよなぁ。


「すると、俺と鈴莉がイチャラブしてるのを高確率で目撃するハメになるが」


いいのか?と視線を天音に送る。

コイツと数十分とはいえ話してて分かった事だが、我が従妹、天音は―初心うぶだ。

俺たちが平然と行っているスキンシップでさえ顔を赤くして目を背けているというのは、こちら側としては目に毒である。裏を返せば、それだけ純粋って事だが。


「すみませんやっぱり1人部屋でいいです!」


「おぉー、あっくん凄い。一言で天音ちゃんを土下座させるとは......!」


「何に感嘆してるんだお前は......」


―といった議論の末に、


「天音が1人部屋、お兄ちゃんたちは夜通しイチャラブしてるので、相部屋......と。それでいいんですね?」


「色々とツッコミたいが、そういう事だ」


さて、と俺は鈴莉に視線を向け、鈴莉の部屋の荷物をこっちに持ってくるようにと告げる。

ムダに張り切って階段を上った鈴莉がコケておでこを強打したという事件もありつつも、無事に引越しは終えられた。手際の良い天音のおかげというのもあり、9時に回る頃には全てが終わっていた。


その後、天音は夕食をかき込んで「少し出掛けてきます」と俺たちに言い残してから、何処かに行ってしまった。特に興味も無いので詮索はしないでおいたが、保護者として知りたいところではある。

しかし鈴莉の愛らしい誘惑に負け、明日が学校なのも忘れ、夜通し仲良く遊んでました。後悔はしていない。


ただ、アレは予想外だった。

―まさか彼女が、こっち側の人間とは思っていなかったのだから。



~to be continued.


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