万物《オムニア》を統べる者 -禁忌の双極-
従妹がいたって、知ってた?
「あっくん......私と、付き合って下さいっ!」
「......別に、構わないが」
―ピン、ポーン......。
鈴莉の突然の告白に被せるようにして、リビングにはチャイムの音が響き渡った。だが鈴莉はそれどころではないらしく、更に言葉を続ける。
「今すぐに返事を、ってワケじゃないよ。あっくんの意思が固まってからでいいから―え?」
「......だから。いいよ、付き合ってやる。......あ、今度は電話か。ちょっと待っててな、鈴莉」
「ちょ、ちょっと―」
スマホを弄りつつ玄関へと行こうとする俺に、鈴莉は何か言いかけて止めた。それは俺が人差し指を口に当て、『静かに』の意を示したから。
―鷹宮家のルール・1。『電話、来客が来た際は私語を慎むべし。破ったらおやつ抜き』
これは昔から俺が親に言われてきた事で、長年同棲している鈴莉にも同様に適用されている。子供だろうが高校生だろうがおやつ抜きにされては堪らないので、鈴莉は口を押さえてコクコクと頷いた。
 そんな鈴莉を見届けてから、俺は玄関へと続くドアを開け、まずは着信のお相手を。
『もしもし?鷹宮結衣だけれども』
「もしもし。こんな時間にとは珍しい」
『ちょっとね。ってーか、出るまでのウエイトが長い。長すぎる』
「あー、悪いね。色々あったんだよ」
『生憎あ、こっちも用があるのよ』
スピーカーから聞こえてきた大人びた声の主は、鷹宮結衣―俺と同年代で、はとこに当たる人物だ。
 色々接点があるとはいえ、彼女がこの時間帯に電話するのは珍しい。
『蒼月。アンタ―従妹いとこさんが居たってのはご存知かしら?』
「......いんや。大体、俺の近しい血族の人間は―叔父と、アンタだけだと思うんだが」
鈴莉からの告白で浮かれていた顔の熱が、急速に冷めていく。顔全体から血が抜けていく感じだ。
『アタシも最初はそうだと思ってたんだけどねぇ。どうやら違ったみたいよ。でも―』
―ピン、ポーン......。
「あぁ、悪いね。今、来客が来ててさ。どうせセールスマンか回覧板だとは思うが」
『っぽいわね。待っててあげる』
偉そうに......。と思いながら、俺は覗き穴から来客とやらを確認する。だが、それはセールスマンでもなく、回覧板でもなかった。玄関の扉の前に立っていたのは、1人の少女だったのだから。
「結衣さん。まさかとは思うが、この茶髪のツインテのちょっと可愛らしい子が......俺の、従妹だと?」
あぁ、俺よ。どうやら今だけは自分の脳を恨まなければならないようだ。何時もは動かないくせに、こういう時だけ敏感に働くなど―不便すぎる。
『そう。茶髪のツインテのちょっと可愛らしい女の子が―アンタの従妹よ』
―ピン、ポーン......。ピン、ポーン......。ピピピピピピピピピン、ポーン......。
俺が中々出てこない事に苛立ちを覚えたのか、彼女は覗き穴を凝視しながらチャイムを連打する。
 だが結衣さんはそれが聞こえているであろうにも関わらず、その従妹とやらのプロフィールを淡々と告げていった。
『鷹宮天音ちゃんって言うんだけど、どうやら先週に母親が病気でお亡くなりになったそうよ。母方の兄弟姉妹の娘さんだっけね。それで近しい親族のところに預けようって事になって―』
「白羽の矢が立ったのが、俺たち鷹宮本家だと」
『ご名答。どうやら、その件に関しては上―お父さんや一部の大人とかで前もって決めていたそうよ。アタシは窓口役みたいなモンだから』
......鷹宮家、俺のいないところで勝手に話を進めやがって―!
「で、俺にその子を引き取れと?」
『そうね、頼んだわよ。んじゃあね』
「ちょ、ちょっと―」
一方的に言うだけ言った結衣さんは、それだけ残すと電話を切ってしまった。
そして俺の耳に聞こえてくるは、無慈悲な電子音と、けたたましいチャイムの音だけだった。
「どうしろってんだよ......」
~to be continued.
「......別に、構わないが」
―ピン、ポーン......。
鈴莉の突然の告白に被せるようにして、リビングにはチャイムの音が響き渡った。だが鈴莉はそれどころではないらしく、更に言葉を続ける。
「今すぐに返事を、ってワケじゃないよ。あっくんの意思が固まってからでいいから―え?」
「......だから。いいよ、付き合ってやる。......あ、今度は電話か。ちょっと待っててな、鈴莉」
「ちょ、ちょっと―」
スマホを弄りつつ玄関へと行こうとする俺に、鈴莉は何か言いかけて止めた。それは俺が人差し指を口に当て、『静かに』の意を示したから。
―鷹宮家のルール・1。『電話、来客が来た際は私語を慎むべし。破ったらおやつ抜き』
これは昔から俺が親に言われてきた事で、長年同棲している鈴莉にも同様に適用されている。子供だろうが高校生だろうがおやつ抜きにされては堪らないので、鈴莉は口を押さえてコクコクと頷いた。
 そんな鈴莉を見届けてから、俺は玄関へと続くドアを開け、まずは着信のお相手を。
『もしもし?鷹宮結衣だけれども』
「もしもし。こんな時間にとは珍しい」
『ちょっとね。ってーか、出るまでのウエイトが長い。長すぎる』
「あー、悪いね。色々あったんだよ」
『生憎あ、こっちも用があるのよ』
スピーカーから聞こえてきた大人びた声の主は、鷹宮結衣―俺と同年代で、はとこに当たる人物だ。
 色々接点があるとはいえ、彼女がこの時間帯に電話するのは珍しい。
『蒼月。アンタ―従妹いとこさんが居たってのはご存知かしら?』
「......いんや。大体、俺の近しい血族の人間は―叔父と、アンタだけだと思うんだが」
鈴莉からの告白で浮かれていた顔の熱が、急速に冷めていく。顔全体から血が抜けていく感じだ。
『アタシも最初はそうだと思ってたんだけどねぇ。どうやら違ったみたいよ。でも―』
―ピン、ポーン......。
「あぁ、悪いね。今、来客が来ててさ。どうせセールスマンか回覧板だとは思うが」
『っぽいわね。待っててあげる』
偉そうに......。と思いながら、俺は覗き穴から来客とやらを確認する。だが、それはセールスマンでもなく、回覧板でもなかった。玄関の扉の前に立っていたのは、1人の少女だったのだから。
「結衣さん。まさかとは思うが、この茶髪のツインテのちょっと可愛らしい子が......俺の、従妹だと?」
あぁ、俺よ。どうやら今だけは自分の脳を恨まなければならないようだ。何時もは動かないくせに、こういう時だけ敏感に働くなど―不便すぎる。
『そう。茶髪のツインテのちょっと可愛らしい女の子が―アンタの従妹よ』
―ピン、ポーン......。ピン、ポーン......。ピピピピピピピピピン、ポーン......。
俺が中々出てこない事に苛立ちを覚えたのか、彼女は覗き穴を凝視しながらチャイムを連打する。
 だが結衣さんはそれが聞こえているであろうにも関わらず、その従妹とやらのプロフィールを淡々と告げていった。
『鷹宮天音ちゃんって言うんだけど、どうやら先週に母親が病気でお亡くなりになったそうよ。母方の兄弟姉妹の娘さんだっけね。それで近しい親族のところに預けようって事になって―』
「白羽の矢が立ったのが、俺たち鷹宮本家だと」
『ご名答。どうやら、その件に関しては上―お父さんや一部の大人とかで前もって決めていたそうよ。アタシは窓口役みたいなモンだから』
......鷹宮家、俺のいないところで勝手に話を進めやがって―!
「で、俺にその子を引き取れと?」
『そうね、頼んだわよ。んじゃあね』
「ちょ、ちょっと―」
一方的に言うだけ言った結衣さんは、それだけ残すと電話を切ってしまった。
そして俺の耳に聞こえてくるは、無慈悲な電子音と、けたたましいチャイムの音だけだった。
「どうしろってんだよ......」
~to be continued.
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