不死者の俺は平和に生きたい

煮干

天才の女の子

立派な門、立派な塀、目の前にはあるのは和風の邸宅。

そこに棺が立てかけてある。

嫌がらせなら相当たちが悪い、特に和風に洋風というチョイス。せめて合わせて卒塔婆そとばを置いてくれ。

まあ、ここにあっても迷惑だ。とりあえず運びたいがどう運ぶか…引きずるか。


少し歩くと違和感を感じた。中でなにかがぶつかるような音が聞こえる。

「まさかな…。」

恐る恐る開けると、中には女の子…いや、人形が入ってた。整えられて、肩まである金髪。陶器のように白く透き通った肌は見るものを魅了する。

俺は思わずみとれていた。ハッとしてふたを閉めようとしたその瞬間、雲の隙間から日光が入り人形を直撃する。

「キャアアア!」

大きく目を見開き悲鳴をあげる。

俺はあまりの恐怖に悲鳴をあげ、腰を抜かした。

ほどなくして雲がまた日光を遮ると悲鳴はやんだ。だが、声を出していた人形が棺から這い出てきた。

「死ぬかと思った…。」

人形は肩を上下に大きくゆらして呼吸をする。

濁りきった目が俺をとらえた瞬間、濁りは消えて輝かしい笑顔になった。

「あら貴方は人間?」

「ああそうだ。」

「人間か…なら私の血肉になって…。」

俺は必死に抜けた腰をかばいながら後ずさる。

「逃げようなんて思わないことね。この天才ジェミーから…。」

妖艶な笑みを浮かべた時確かに見えた。

人間の犬歯のあたりに鋭い牙が…。

あっという間に俺の目の前にジェミーは来た。

顎を蹴られ仰向けにされると、俺の上にジェミーは馬乗りになった。細腕からは想像のできない力で腕を拘束され、いくら動かしてもびくともしない。

「貴方名前は?」

「…伏見明だ。」

「そう…伏見明、光栄に思いなさい。この私の血肉になることを。」

そう言うと女の子の細腕が今度は首を絞める。自由になった両手で抵抗しようとした時には遅かった。すでに頭に血が回らず、意識を失った。




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