幼馴染と3人の異世界性生活

大津 千代

第17話 亀裂と失踪

3人の乗っている2頭の馬がアリスの家へと着いた。怪我を負った葵馬から降ろし、アリスが支え建物の中に入って行く。瑛斗も馬から降り中に入る。葵とアリスは治療室へと向かうが瑛斗はいつも使っているアリスの部屋ではなく、別の寝室へと向かって行った。瑛斗の階段を上る足取りはかなり重かった。


長い廊下を重い足取りで歩きその寝室へと着いた。部屋のドアを閉め装備類を全て外した。そしてそこにあるベッドに体を投げた。瑛斗は仰向けになり天井を見つめていた。


「俺…何してんだろ…。なんであんな事を…」


天井を見つめ、そう瑛斗はつぶやく。葵の目の前で何をしてしまったのだろうか、完全に我を失って刺し続けていた自分を悔やんだ。いろいろな事を思っているうちに、瑛斗の目に涙が浮かび、伝った。その状態で、1時間瑛斗はいたのだった。



誰かが部屋のドアをノックしている。うとうととしていた瑛斗だったがその音で目を覚ました。そしてドアの外で誰かが話しかけてきた。


「エイト…アオイなんだけど…。治療は終わって命には…別状は無かったよ。けど…エイトの事嫌いって言ってたよ…もう別れるって」


ドアの外で話しているのはアリスだった。治療を終え、葵の状態を言いに来たのだった。そして葵は瑛斗のやった事に対しショックを受けもう別々になろうとアリスに言ったのだった。瑛斗はその事を、表情を変える事なく聞いていた。


「わかったよ、アリス。ありがとう。葵の事よろしく頼んだよ」


部屋の外にいるアリスにそう言うと瑛斗は布団の中に入った。その後、アリスに話しかけられるが返事はしなかった。


「うん…わかった。そう伝えておくね」


アリスがそう言うが、瑛斗は布団に入っていて返事が来ることは無かった。アリスはドアを離れ自分の部屋へと向かって行った。


瑛斗と葵との間に大きな亀裂が出来てしまった。2人の関係は修復不可能に近い関係になってしまっていた。アリスもどうしていいかわからなかった。アリスはその事を考えながら部屋へと続く廊下を歩いていた。


アリスの部屋のドアを開け中に入る。中に入ると治療を終えた葵がベッドに横になっていた。アリスに気づき葵はアリスを見た。


「アリス、言ってきたよ。よろしく頼んだよ、だって」


「そうなんだ…。ありがと」


アリスがベッドに座り葵を見た。


「仲直りしないの?アオイちゃん」


「したいけど…あんな瑛斗、嫌なの。だから…別れる」


「けど…あの状況なら仕方ないと思うよ。エイトだってやりたくてやったんじゃないと思うし…。1番好きなアオイちゃんを傷つけられて、それであんな風になっちゃったんだと思うの。私はエイトがアオイちゃんの事を守ってくれたんだと思うよ」


「私の事を…守ってくれた…」


「うん、だから仲直りしなって。アオイちゃん」


アリスの言葉に葵は考え込んでいた。


――私、考えすぎだったのかな…。確かに、アリスちゃんの事はわかるし瑛斗の事は好き。やっぱり仲直りした方が…いいの?どうしたらいいんだろう…。仲直りすべき…かな…?



いろいろ考えた末、葵はようやく決めることが出来た。


「私…やっぱり出来ない…あんな瑛斗見ちゃったら…怖くて…」


「アオイちゃん…。とりあえずエイトの所に行こっか。アオイちゃんの思ってる事話したらきっとエイトもアオイちゃんの気持ち、わかってくれると思うよ」


「え…うん。そうするね。1回行ってみよっか」


アリスが葵の横で一緒に歩き、部屋を後にし、瑛斗のいる部屋へと向かって行く。葵は治療を終えたばかりで、あまり速く歩く事はできなかった。アリスの手をかり歩いていた。


瑛斗のいる部屋のドアの前に2人は着いた。アリスがドアを開け中に入る。瑛斗が居ると思い声をかけながら中に入って行く。


「エイト、ちょっと話す事が……ってあれ?いない…」


確かにこの部屋に違いない。布団がずれているのを見る。確かにここに瑛斗はいた。トイレにでも行ったと、思われたがそれなら装備や武器類が置いてあるはずだ。


瑛斗はこの部屋から消えてしまったのだった。

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