思い出に殺される夜

12

私はこんなタンクトップと短パン姿ででてきたことをひどく後悔した。

「あ、あのさ、最後の大会みにこいよ。」

「え?」

「ん。」と、大会のパンフレットを渡され、そのまま周也は家の前にとめてあった自転車に乗って行ってしまった。

「うん!ねぇ…!頑張ってね!」

と焦って大きな声で言うと、周也は振り向きはせず片手をあげて振った。

その大会は一週間後だった。
隣町だから、バスで行けるだろう。

少しシワシワの大会パンフレットは、何度も確認した。

大会の前の日なんて、ぜんぜん眠れなかったし、当日も朝からそわそわしていた。

髪の毛をアップにして、Tシャツとデニムの短パンを履いた。

陽射しの強い日だった。

安い日焼け止めを塗って、バスに乗る。

はやく着かないかなぁ…と窓から変わっていく夏の景色をみていた。

どうして、こんなに嬉しいんだろう。

どうして、こんなに胸がざわざわするんだろう。

この気持ちをなんと呼ぶのか、私にはよくわからなかった。

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