思い出に殺される夜

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「夏井よる、俺はおまえのこと

絶対に絶対にしあわせにする!」


ーあの頃ー


夏井よる、20歳の夏だった。

美容師になりたくて、専門学校をでたはいいものの、私は自分のやりたいことを見失っていた。

親に学費で迷惑をかけてしまった分、必死にバイトはしたけれど、結局卒業後は美容師にはならず、バイト先だった飲食店でそのままフルタイムで働くことになった。

幼馴染の道川周也(しゅうや)とは、中学3年生の時から付き合っている。

周也とは、保育園の頃から、小学校、中学生、高校までみんな同じで、家も歩いて5分くらいのところだったから、とにかく小さい頃からいつも一緒だった。

一緒にいるのが当たり前だと思っていた私と、はやくも思春期を迎えた周也は、小学校の高学年にもなると、一緒に学校へ行くのも嫌がったり、学校ですれ違っても私とは話してくれなくなった。

幼馴染だからといって、私と一緒に遊びたくなくなったんだ。と思っていた。

中学生になって、周也のまわりにはいつも沢山の男の友達がいたし、周也のことを気になる女の子たちが話せるタイミングをうがかうようにウロウロしていた。

その女の子たちと周也は普通に話していたし、私に対する冷たい態度とは明らかに違ったから、私はいつのまにか彼に嫌われてしまったと思っていた。

そして周也は、水泳部のエースだ。

昔から地元の海が大好きだった周也は、泳ぐことも大好きだった。

よく一緒に海に行ったんだけど、そんな事も、今はもうない。

どんどん背が伸びて、勉強は苦手だけどスポーツは何でもできる、話せば明るくて面白い、典型的なモテる男の子だった。

笑うと目が垂れて、情けない顔になるところも、女の子たちの母性本能をくすぐったようだ。

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