思い出に殺される夜
3
その週末、土曜日の朝に海釣りをして、そのあとはたいして家からも出ずにだらだらと過ごした。
家は実家で、母親と父親、母方の祖母、県外の大学に妹がいる。
僕は、ばあちゃん子で、ばあちゃんに釣った魚を渡して、ばあちゃんがその魚を料理してくれる。
ばあちゃんは家の裏にある庭で畑いじりが趣味で、僕は子供の頃から、手伝いはしないくせに、それを眺めているのが好きだった。
「ゆうちゃん、仕事はどう?」
「んー、普通だよ。」
「好きな人はできた?」
「いないよ。」
25才にもなる僕を、子供扱いする。
有野さんが、「綺麗な人」だなんていうから、少しだけ月曜日を楽しみにしている自分がいた。
そんな綺麗な人に、相手にされるわけもないんだけれど。
ばあちゃんが言った。
「夏のにおいがする。夏のにおいがすると、じいちゃん思い出す。」
ばあちゃんの汚れた手袋は、もう何年も同じものを使っている。
じいちゃんは、6年前に心不全で亡くなった。つい前日まで、近くのホームセンターに車を運転して出かけるくらい元気だった。
本当に突然のことで、家族みんなが動揺した。
僕は大学にいて、父親からそのことで電話がきた時、びっくりして言葉もでなかったのと、何より心配だったのは、ばあちゃんだった。
そんな家族の心配をよそに、ばあちゃんは通夜でも葬儀でも泣くことはなかったし、気丈に振る舞っていた。笑顔をみせることすらあった。
けれど6年経つ今でも、じいちゃんの仏壇の前で、毎朝じいちゃんに話しかけている。
「今日は、夏のにおいがしますよ。」
家は実家で、母親と父親、母方の祖母、県外の大学に妹がいる。
僕は、ばあちゃん子で、ばあちゃんに釣った魚を渡して、ばあちゃんがその魚を料理してくれる。
ばあちゃんは家の裏にある庭で畑いじりが趣味で、僕は子供の頃から、手伝いはしないくせに、それを眺めているのが好きだった。
「ゆうちゃん、仕事はどう?」
「んー、普通だよ。」
「好きな人はできた?」
「いないよ。」
25才にもなる僕を、子供扱いする。
有野さんが、「綺麗な人」だなんていうから、少しだけ月曜日を楽しみにしている自分がいた。
そんな綺麗な人に、相手にされるわけもないんだけれど。
ばあちゃんが言った。
「夏のにおいがする。夏のにおいがすると、じいちゃん思い出す。」
ばあちゃんの汚れた手袋は、もう何年も同じものを使っている。
じいちゃんは、6年前に心不全で亡くなった。つい前日まで、近くのホームセンターに車を運転して出かけるくらい元気だった。
本当に突然のことで、家族みんなが動揺した。
僕は大学にいて、父親からそのことで電話がきた時、びっくりして言葉もでなかったのと、何より心配だったのは、ばあちゃんだった。
そんな家族の心配をよそに、ばあちゃんは通夜でも葬儀でも泣くことはなかったし、気丈に振る舞っていた。笑顔をみせることすらあった。
けれど6年経つ今でも、じいちゃんの仏壇の前で、毎朝じいちゃんに話しかけている。
「今日は、夏のにおいがしますよ。」
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