決意

「邪魔だって言ってんでしょ」

姉のリコは私の髪の毛をつかみながら怒鳴る。
私の髪の毛が数本、ブチブチとちぎれる音がした。

抵抗しようとするが、体がうまく動かない。
人よりも体を動かすのが得意ではないからなのだろうか。

｢あんたさァ、どうしてそんなに人を苛立たせるのが得意なの？｣

｢お姉ちゃんが勝手に苛立ってるんじゃない｣

その一言で、私は殴られる。
あぁ、またか。

｢ふざけんじゃないわよ！！｣

こうしていつもの日課のように、私は姉のストレス解消の道具として扱われるのだ。
弱者を虐げ、自分よりも下の人間を見て悦に浸る。
人間の本質といえばそれまでだけど、それはなんて醜いものなんだろう。

殴られ、怒鳴られ、罵倒され。
今まさに自分の身にふりかかっていることを私は俯瞰で見る。

無意味な人生だ。
人からは要らない子と呼ばれて、人としてまともな生活も出来ずに、こうして誰かに虐げられる。
生きてる意味なんて、とうの昔に失ってる。

この世界を離れたい。

｢───────死ねばいいのに｣

その一言は、くぐもった私の心に、すっと入ってきた。

｢死んじゃえばいいじゃない！あんたみたいな役たたず！死んじゃった方がいいに決まってる！｣

簡単なことなのかもしれない。
生きてることが辛いなら、生きてる限り絶対に逃れ得ない地獄があるというのなら、自分から死を選ぶほうが、簡単なのかもしれない。

いつもの日課で、いつもの地獄の中、私はいつもとは違う決意をした。

死にたい。
私はもう消えてしまいたい。

｢ふっ、ふっふふふふふふ･･･あっはは･･･はははははははははは！！！｣

キィキィと軋む車椅子を押しながら、私は笑った。

｢何笑ってんのよ！！！｣

今だけだ。
私を叩くその手も、罵倒するその口も、いずれ見なくなる。
私の小さな命で、何か願いが叶うわけではないけれども、もし何か一つ叶うとすれば。

次生まれ変わる時は、強者になりたい。
人を虐げ、罪を押し付ける、強者に。

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