名無しの英雄

夜廻

49話

俺達は皇帝の甥を探すためにスラムで聞き込みをしていた
「なぁ、こんな子供を見なかったか?」
そう絵を見せながら男性に聞く
「あ?知らねぇよそんなモン」
男性は絵を一瞥する事もなく答える
俺はさり気なく男性の手を取りお金を握らせる
「……あっちで見かけたぞ」
「そうか、ありがとう」
俺は礼を言って立ち去った


「主人様、あんな交渉術をどこで覚えたの?」
「………騎士団長からだ」
「あ、……ゴメンなさい」
スズは目を伏せて謝る
「大丈夫だ別にスズに怒ることはないだろ」
「うん……」


暫く行くとスラムの人が減ってくる
「人が少ないな」
「そうだね、どうしたんだろう?」
近くに女性がいたので話しかける
「なあ、ここにはなんで人が少ないんだ?」
「あんた新参者……じゃないな。ギルドのモンか」
女性は敵意を向けて警戒する
「あぁ、別に裏組織を潰そうとか、殺そうとかは考えていない」
「じゃあ何しに来た?」
「コイツを探しているんだ」
絵を見せる
「………コイツはここにはいないぞ」
「さっき聞いた奴はこっちで見たって話だったが?」
「一時期はここに居たが売られて何処へか行ったぞ?」
売られた?
「買ったやつの情報は売れるか?」
「話がわかるねぇお兄さん……そうだな売ってやってもいいぞ」
よし、かかった
「だったら売ってもらおう」
そう俺は妖しく笑った


女性から必要な情報を買った
「まさかこんなヤツがな……」
「ね、まさかだよね」
女性から聞いた情報は買ったのは貴族、かなりの地位にいる、男性、年は若い、という所だ
ここから俺は推理する
かなりの地位に居るということは大臣以上の役職だろう
しかも男性はその絞れる中で半分程だ
それで年が若いと言うと1人しかいない
「さて、コイツを殺しに行くか」
「うん!」
俺は妖しく、スズは爽やかに笑った


その日の夜、買ったと思われる屋敷に忍び込んでいた
「さて、何処にいるんだろうな?」
「地下とか怪しくない?」
「じゃあ地下に行くか」
屋敷を散策しながら地下へ行く階段を見つける
階段を降りていくと何か変な匂いが立ち込めている
「なんだこの匂い」
「………クサイ」
階段を降り終わるとそこには夥しいほどの檻が並んでいる
檻の中を見ると半分腐っているような人間だったモノがある
「………」
この屋敷の家主は趣味が悪いな…
スズは元々スラム出身のため死体は見慣れているので悲鳴や、失神などはしない
先に進んでいくとまた地下に降りる階段があったので降りる
降りるとそこにはとても頑丈に作られた檻があった
檻の中には絵と同じ顔をした少年が横たわっている
俺はそれを確認すると階段を使って引き返した
「主人様どこいくの?助けないの?」
「勿論助けるさ……依頼だからな」


翌日街中に号外で国の宰相が暗殺されたと言うニュースが流れていた
宰相は政権を握るため次期皇帝である甥を監禁していたらしい
それを騒ぎを聞きつけた騎士が見つけたと書いてある
宰相は首を切られ机の上に首が乗っていたと記事には書いており、詳細などは書いていない
俺はその記事を読んでほくそ笑んでいた

ギルドに入ると受付から
「皇帝様が呼んでいますよ?」
「わかった。今行く」
俺達は城に悠々と歩いていった

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