名無しの英雄

夜廻

33話

「準決勝赤コーナー《戦乙女》スズ選手!青コーナー《剣聖》クリス選手!では始め!」
クリスは《剣聖》の二つ名を貰うだけあって剣を使ってくる
それを私は受け止めるが…
「っ!?」
剣を受け止めた瞬間に体に違和感を感じ、次の瞬間には腕に傷がついていた
「……?」
ちゃんと受け止めた筈なのにまるで剣で切り裂かれたような傷がある……
「盾で受けたら……?」
クリスに突撃し、攻撃を盾で受け止める
「っ!」
今度も腕に傷がつく
「………」
何かのスキルの可能性が高いけど……
クリスは物凄く真剣にこちらを見つめていた……


俺はスズの試合を見ていた
クリスっていう《剣聖》の二つ名を持つ気障っぽい金髪の男がスズを圧倒している
「……」
俺はただ何も考えずに試合を見ているだけだった


何が起こっているの?
なんでガードしたのにダメージを受ける?
考えろ……
「ふふっ、不思議がっているね?そりゃそうだよな!」
クリスは愉快そうに顔を歪める
「じゃあ、早めに試合を終わらせようかな…?」
クリスがまた剣で攻撃をしてくる
私はその攻撃を受け止めずに体だけで避ける
クリスの剣が振り終わった後には大きい亀裂が入っていた
「………?」
何かがおかしい……
なんだろう?
「へー、これを避けられるんだ……ちょっと関心するなぁ」
そうは言うが全く嬉しくない
私は主人様に頭を撫でて褒められるために頑張っているのに…
あぁ、思い出したら顔がニヤけそうだ
気を引き締めなきゃ…!
「………」
クリスは何やら不機嫌な様子だ
「ちっ…次で決めるか」
クリスは剣を真っ直ぐに振り上げる
剣が上がりきった瞬間にはもう私の目の前にいた
「!!」
辛うじて盾を突き出し身を守るが
「っっ!」
やはり攻撃が体に届く
致命傷までは行かなかったがかなりのダメージを受けた
「これでも倒れない……か」
早くこのスキルをどうにかしないと……殺られる…
さっき違和感を感じた場所を見る
「……」
やはり何かが変だ……
…………
「!!」
剣を振った場所と亀裂の場所が合ってない!
という事は……幻惑系のスキル?
なら盾は邪魔…
盾を置く
「どうした?試合放棄か?」
私はクリスを睨みつける
「そんな訳ないか…」
大きな剣を両手で構える
クリスも呼応して剣を構える
辺りが一瞬静かになると同時に2人は高速でぶつかる
「「っ!」」
私は体を右にズラし貫通する攻撃を避ける
それと同時に剣もズラして自由に使えるようにする
これでどの角度からも攻撃できるようになった
クリスは攻撃を受け流され防御できない
ならば、と思い首に向けて攻撃する
首に当たると同時に甲高い金属音がして剣が弾き返される
「そう来ると思っていたよ?」
クリスは不敵に笑う
そしてクリスは無防備な私に向かって攻撃してくる
が、それを弾き返された衝撃を利用して体を捻り左腕を盾がわりにし、全力で剣を殴る
すると剣が横に弾かれ体には攻撃を受けない
私は回転して体の筋肉を使い下から上へ斜めに攻撃をする
クリスは反応し、腕でガードしてくるが腕を軽々と切断し首に攻撃が届く
そしてクリスの首は体を離れた
その瞬間に私は意識を手放した



目が覚めると宿屋の部屋にいた
「良くやったなスズ」
そう言って主人様は頭を撫でてくれる
顔がニヤけそうになるが我慢して
主人様に質問する
「私は……勝ったんですよね?」
「あぁ、勝ったぞ?」
「そう…ですか」
今回の試合はかなり危なかった
次は主人様だから……頑張らないと
窓から空を見ると雲が覆っていた

「名無しの英雄」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く