名無しの英雄

夜廻

32話

試合は進んでいきやっとスズの番となった
「はぁ……長いな…」
只でさえフードを被って暑いのに直射日光で尚更暑い……
「早く終わらないかな…」
俺は暑さを我慢してスズの試合を見ることにした


「さぁ!次で今日の最後の試合だ!赤コーナー《戦乙女》のスズ選手!青コーナー《豊穣》のコイド選手!では、始め!」
試合が始まったけど私は相手のスキルを見るまで攻撃しない予定だった
折角だからスキルを見ないと勿体無いし…
「来ないのなら行きますけど……いいですか?」
コイドが聞いてくる
コイドはどうやらエルフのようで長い耳が髪の隙間から見える
顔は中性的すぎて性別がわからないし、声で判別もつかない…
「いいけど……女?」
「………え?僕です?」
「そう、貴方」
コイドは落ち込んだ様子で
「……男です…」
酷くガッカリしている
「……そう、分からなかった…」
コイドはまた落ち込んだ
「……はぁ、まぁいいですよ…ではやりますしょう」
そう言うとコイドはスキルを発動する
「<草よ…>」
唱えた瞬間に私の周りから植物が生えてくる
予想していたので危なげなく避けられた
「そんだけ……?」
「くっ!<木よ…>」
コイドの後ろに木が生え、枝が動き攻撃してくるが……
「……ワンパターン」
そう呟くと同時に剣で枝を薙ぎ払う
「じゃあ……次はこっち」
全力でコイドに突撃する
「くっ!?」
急に接近されコイドは戸惑う
私は大きく振りかぶり剣をコイドの頭から袈裟斬りにした
辺りに血が飛び散り返り血を浴びる
私は剣を仕舞い主人様を発見したので笑顔で手を振る
主人様は微妙な顔をしていた…
「勝者《戦乙女》のスズ選手!」
これにて2回戦終了
次は準決勝だ…強い人がいるといいなぁ
そう思いながら主人様の所に帰っていった


試合は終わって宿にて
「なぁスズよ……」
「ん?なに?主人様」
「お前手加減しないな…」
「うん、だって楽しいもん」
……なんて事だ、ウチのスズは戦闘狂みたいだ…
「な、なぁ?戦うのは楽しいか?」
「うん、楽しいよ?」
さも当然のように首を傾げてくる
「お、おう。まぁ人によるからな」
「ふーん……」
こうしてスズが戦闘狂だと分かり、夜も遅くなってきたので俺たちは寝ることにした


俺は大会の準決勝のために控え室に来ていた
「次はどんなヤツなんだろうなー……」
俺は試合を楽しむために準決勝からは相手の確認をしていない
より実戦に近い方が今の俺にはタメになる
「ではそろそろ始まりますので準備をしてください」
役員に言われリングに向かっていく
どうやら対戦相手は女性のようだ
なんかメイド服?みたいなモノを着ている
なんだアイツ?


「では準決勝です!赤コーナー《死神》選手!青コーナー《冷血》イロ選手!両方共にAランクですね!では、始め!」
イロは一言も喋らずに剣を抜き斬りかかってくる
それを鎌で受け止めるが…
「?」
簡単に弾き返せた
俺は攻撃力が少ない……なので弾き返せるのはあまりなかったりするので不思議に思う
「……」
もう一度イロは斬りかかってくるがそれを受け止めるが
「!?」
左足に痛みが走る
見ると釘のようなものが刺さっていた
イロを弾き飛ばし考える
なんで気づかなかった?
どうやって攻撃した?
……!
「……お前暗器使いか」
「……」
イロは何も言わないが少しだけ驚いたような表情をする
図星か……
「参考にさせてもらうよ…」
そう呟くと真正面から俺は突っ込んでいく
鎌を思いっきり振り下ろす少し前にイロの足元を影で拘束する
「!?」
イロはそちらに気を取られ反応が遅れたため、イロは頭から真っ二つになる
「……ふぅ、タメになる試合だったなァ」
俺は愉快そうに笑顔になる
観客席を見るとスズが滅茶苦茶喜んでいた
「帰るか……」
俺はアナウンスを聞かずに暗い通路を進んで行った

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