クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

疑問

待つこと数十分、優は紫色のローブに身をつつんだよぼよぼのお婆さんと若い男のエルフたちをつれてきた。

「お前らはここで待っときなさい。」

若い男のエルフたちはお婆さんの指示通りに立ち止まると優はその横に並んだ。僕もなんとなくこの列に加わることにした。

「優、あの人は?」

隣の優に小声で聞くと優は耳元で呟く。

「メル婆って言って、エルフで一番偉い人だよ。もちろん魔術も超一流。」

「そうなんだ、ありがとう。」

僕は再び視線をメル婆に移す。メル婆が球体の水に触れると水は弾けとんだ。そして、痛々しいリアの傷を右手で触り、左手で木の幹に触れる。すると、メル婆の両手からまばゆい光が放たれた。

「望、失明するぞ。」

そう言って優は僕の目を手で覆い隠す。何気なく僕はその手に触れた。ゴツゴツしてて大きい…僕が堪能していると優の声が聞こえる。

「終わったから離してもらえると助かるな…。」

「ご、ごめん!」

とっさに手を離すと優の手も離れた。視界にはジャンプをする元気そうなリアが映る。

「もう大丈夫なの!?」

僕が驚くとメル婆が笑った。

「これがエルフの秘術・・じゃよ!」

メル婆が誇らしげに胸を張るとゴキッという痛々しい音が腰から響いた。すぐさま若い男のエルフが駆けつけて介抱する。その光景をよそに僕は優に質問した。

「秘術って何?」

「魔術とは違い他の生命を犠牲にするのが秘術だ。ついでに言うと自分を犠牲にするのは禁術と呼ばれてる。ほら、さっき触れてた木は枯れてるだろ?」

見るとメル婆が触れていた木は枯れ果てていた。さっきまでは緑の葉っぱが生い茂ってたのに今は無惨な姿になっている。

「じゃあこの魔法が使えればみんなが死なないね!」

キラキラしたま眼差しで優を見ると苦笑いをする。

「そうだな、でも使えるのはすごい魔力を持つ人だけなんだ。俺は使えない。」

お手上げと言わんばかりに優は両手を上にあげる。僕がしゃべろうとするとリアが会話に乱入してきた。

「さすが望の大す...」

とっさに僕は大きな声を出す。リアをにらむとリアはニヤニヤする。僕のことをもてあそぼうとしてる目だ...。

「リアの意地悪...。」

僕が頬を膨らますとリアは僕の頭をポンポンと軽くたたく。

「ごめんね、言っちゃいけないことだったね。」

嘘だ...絶対に分かってて言ったに決まってる...だってリアだから...。

リアは絶対に反省などしてないような満面の笑顔をになる。でもリアが笑うと自然と僕も笑顔になる。

「今頃なんですがリアって言うんですね。俺は望の兄で優と言います。望がお世話になりました。」

優が深々と頭を下げるとつられてリアも頭を下げる。

「いえいえ、そんなことないです。下のお世話が...」

「リ、リア!?変なこと言わないでよ!」

やっぱりリアのことだからなにかするとは思ってた。

「だいたいリアが毎日変なことしてきたじゃん!」

僕はそっぽを向く。変なことで思い出されるのはリアのむ…ハッとして首を思いっきり横にふる。けれどあの感触を思い出すとだんだんと顔が熱くなる。

「あれれ?お顔が真っ赤だよ?何を思い出したのかな?」

ツンツンと頬をつつくリアの手を払いのける。

「な、なんでもない!」

「また触りたいの?それともあの時みたいにはさまれたい?」

リアは前屈みになって胸を強調する。とっさに手で目を隠したが隙間をつくって見てしまう。

背徳感はあるのに男の性には逆らえない…。

リアはそんな気持ちをあおるかのように胸を揺らす。呼吸が乱れて心臓が異常な早さになる。

その時、優の笑い声が響いた。

「仲良しだな。そういえばあの時って何かあったの?」

「え、えっと…」

どう言うか...いきなり謝ってもたぶん優は困るはず...

あれこれ悩んでいるうちにリアが口を開いた。

「お兄ちゃんを殺したのは僕だって泣いてたんです。そう思います?」

リアは大ざっぱにあの時のことを話す。慰めてくれたことを話さないのはリアの少ない善意の心が働いたからだろう。

「当たり前だろ。微塵も思ってないよそんなこと。」

「本当?」

優はしゃがんで僕の目線に合わせる。そして、笑顔で髪の毛がくしゃくしゃになるほど強く頭を撫でた。

「恨んでたら助けにこないだろ。」

そっか…助けにこないか…あれ?じゃあ僕を森で助けてくれたのは誰だろう…黒髪でキリッとした目、あれは誰だったんだろう?

優は初対面で優と判断できないほど幼い頃の面影がない。常に笑っているような糸目で白髪。この人は本当に優なの?

「ねぇ、森で助けてくれたのも優?」

「いや、あれは仲間のヴァンスだよ。そいつから望を見たって報告あったから来たんだよ。」

「ねぇ、ヴァンスさんはどこにいるの?お礼が言いた…」

「無理だ。」

顔から笑顔が消える。さっきまでとは違い、冷たく放たれた一言。恐怖から僕は視線が定まらないでいた。

「あ、ごめんね。ただあいつはあいつで忙しいんだ。」

またいつものような笑顔。

「そ、そうだよね。無理言ってごめん。」

「二人とも!そろそろ移動するって!」

リアが近づいてくる。優は立ち上がると、手を伸ばす。

「行こっか、望。」

僕は伸ばされた優の手をつかむ。ごつごつしてて大きい手は安心感を覚える。

「うん!」


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