クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

悲痛な叫び

「ハァ...ハァ...。」

いくらやっても霧は水に変わらない。作用するとしたら基本情報の属性のはず、じゃないと優が現れたことの説明がつかない。

「ノゾム!そろっと昼ごはんにしよ!」

「リアさん...。」

はっとして口をおさえたが、リアの耳にはしっかりと聞こえてたようだ。

「あ!さんづけしたから昼ごはんなし!」

「ごめん...。」

「嘘だよ、嘘。頑張ってる人にそんなことしないよ。ごほうびにあの時みたいにぎゅっとしようか?」

「そんな子どもじゃないよ!」

あの時のことを思い出して顔を赤く染める。今思えば高校生があんなことをされていたなんて恥ずかしすぎる...。いや、あれはあのときの雰囲気が悪いんだ。不可抗力だ。

「もしかしたらさ、ノゾムはもう一つの基本情報の動か不動かじゃない?」

「でももしそうなら僕を助けたのは誰?」

「……お化けとか?」

「からかわないでよ。」

僕がパンをちぎり口に運ぼうとした瞬間、遠くから爆発音とともに爆風が僕たちを襲った。木片が目の横をかすめて血がにじむ。いったい何があったんだろう?

霧の奥は当然のことながらなにも見えない。

「リア、今のは?」

「ノゾム…逃げて。説明している暇なんかないかも。」

瞬間、霧の奥が光り、目の前に火の玉が近づく。逃げろと本能がうったえても恐怖が束縛するせいで体が動かない。

「ノゾム!」

リアが突き飛ばされやっと恐怖の束縛はとけた。だが、僕を突き飛ばしたリアの足に火の玉がかすめた。かすめただけのはずなのに傷は赤黒く変色し、肉は焼けただれ、水ぶくれもできている。

「ノゾム、僕をおいて逃げて。この傷だと足でまといになるだけだから。」

「嫌だ!絶対に助ける!」

「ちょっとノゾム!?それだとノゾムまで...」

「かまわないよ。だって僕はリアに助けてもらったから...今度は僕が助ける番だから!」

リアの足の傷を懸念しておんぶはせず、僕の肩を支えにけんけんして歩いてもらうしかなかった。


森からでても気はぬけない。まだ敵は後ろにいる。そう思っていた...

「遅かったなぁ!暇すぎて家を焼いちまったぜ!」

家からは黒い煙がのぼる。男の下卑た笑みを僕はひどく不快に感じると同時に殺意を覚える。でも今の僕にはこの男を殺す力なんてないから逃げるしかない。

「待て!おい!」

男の手にはあの時の火の玉、やっぱりこの男が攻撃してきたのか。

すぐさま木の後ろに隠れる。火の玉は木に触れた瞬間、爆発した。

「リア…ここにいて。おい!こっちだ!僕を殺してみろ!」

「いいぜ、そんなに死にたいならお望み通りに殺してやる!」

一か八かだったが成功した。男は僕のやすい挑発にのって追いかけてくる。後はこのままひきつけてリアとの距離を離せばいい...。

「あんたは目が見えてるのかい?短気なうえに視野も狭いとはね…魔法使い失格だよ!」

振り向くと男の足が止まっていた。顔に青筋がたっている。

「やめろ!お前の相手は僕だ!」

男は怒りで我を忘れていて、僕の言葉はまるで聞こえてない。男はリアを見る。

「くそ女!てめぇからぶっ殺してやる!」

男の手にはあの火の玉、さっきまでのよりも大きい。

「死ねぇぇぇぇ!」

男の手から放たれる。また目の前で失うなんて嫌だ!

頼むから……止まってくれ!止まれよ!

どんなに願っても現実は変わらない。今も時は動き、リアの死が段々と近づいていく。

「やめろぉぉぉぉぉ!」

悲痛な叫びが森に木霊する...。



魔法の基本情報は

動か不動、属性の2つです


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