クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

一時の幸福、消えない罪悪感

 ――待って!そっちはダメ!


 声を出そうとしても声がでない。必死に手を伸ばしたが届かない。遠ざかる優を追いかけることもできず、ただ見ているだけしかできない自分の無力さをさいなんだ。


「優!」


 飛び起きると、全身が痛んだ。たまらずうめき声をあげてうずくまる。


「こら!勝手に起きるな!」


 声の方を見ると、耳がとがり、ショートヘアーの少女がいる。腰に手をあて、前屈みになると胸が強調された。慌てて僕は目をそらした。助けてくれたであろう人をよこしまな目で見るなんて許されるはずがない。


「た、助けてくれてありがとうございます」


「いいよいいよ。にしても君は本当にすごいね。まさか虎ばさみからの爆破の罠を生き残るなんて......もはや奇跡だね」


「いえ、あの時優が助けてくれたんです。先を走っていた優が戻ってきて......それで......」


 少女は不思議そうに首をかしげる。


「それはないね。だってあれも幻覚魔法の罠だから。それに霧と一緒で人に触れることなんてできないはずだ。もしできたとしたらそれは君が魔法に何らかの作用を及ぼさない限り無理だね。君はどこから来たんだい?」


「に、日本です」


 少女は腕を組み、頭を捻って考える。


「日本か…知らないなぁ。名前は?」


「新田望にったのぞむです」


「ノゾム君か…良い名前だね。僕はリア、見ての通りエルフだよ。ノゾム君の言う日本を教えてほしいなぁ……代わりに僕の知っていることを全部教える!どう!悪い話じゃないでしょ!?」


 リアの顔が近くなり、とっさに顔をそらす。元来がんらい女性の免疫の薄い僕にとっては刺激が強すぎる。


「わ、分かりました。全部教えるので離れてもらえないでしょうか……恥ずかしいです……」


「真っ赤かになっててかわいいねぇ。エッチな事も教えてくれる......?」


 耳元で呟かれた瞬間、顔が熱を帯びた。


「そ!それはダメ!なんです............」


 リアは吹っ飛んで、腹を抱えてゲラゲラと男勝りな笑いをする。


「ノゾムかわいい!以外にチビだしいじりがいあるよ!」


 チビ......人殺しとばかり言われて触れられることのなかった最大のコンプレックス。


「そ、それでもリアさんよりはあります!」


「うっそぉ!?私は百七十よ。ノゾムは?」


 負けた......。

「百六十五です......」


 またリアは笑う。人として最低だと言いたかったが、種族が違う。


「やっぱりチビじゃん!もう腹筋壊れちゃう!」


「僕寝ます!」


「あ!寝るなぁ!今夜は話し合うんだらね!」


「怪我人をいたわってください!」


 布団がはがされそうになるのを僕は必死におさえた。もしとられたら笑っている顔を見られてしまう。だって、こんなに話したのは久しぶりで嬉しかったから。でもいつかは言わなきゃいけない。僕が人殺しだということを......。


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