クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

異物を排除する森

 森の中は外から見た以上に霧が濃く、 一寸先も見えないため慎重に進む。景色もさっきからずっと木だけで、同じところを延々と歩いているような気さえする。川のせせらぎも、動物の鳴き声も聞こえない。時間を把握しようと見上げるが、葉っぱが邪魔で分からない。だんだんと怖くなり、自然とはや歩きになっていた。


 プツン、という音が聞こえた次の瞬間、霧の向こうから矢が現れた。避けることはできず、左肩に深々と刺る。激痛のあまり悲鳴をあげて、片ひざを地面についた。


 抜かなきゃ、そう思い、右手で矢をつかんで力一杯引っ張っる。少量の血が飛び散ったが、すんなりと矢は抜けた。だが、抜くときの痛みにまた悲鳴をあげてのたうち回った。


 やっと痛みになれ、起き上がる。今ごろになって警鐘が鳴らされたがもう遅い。ここまで来たら引き返す道は分からない。とどまって死を待つという方法もあるが、まだ生きることを諦めたわけじゃない。今は進むの一択だ。今度は慎重に目を凝らして進む。幸いにも肩を負傷しただけですんだが、もしもう少しずれていたら…考えただけで恐ろしい。



 少し歩くと目の前に人がいた。もしかしたら同じように迷っている人かもしれない。


「あ、あの、すいま......!?」


 振り向いたその人の顔は見覚えがあった。キリッとした目、整えられた黒髪......間違いなく優だ。優は霧の中へ走って消えてしまった。僕も後を追って走った。この森が危険だということは充分理解している。けれども今は目の前にいるのが優か優じゃないのかを知りたかった。もし優なら謝って、仲直りして、二人で一緒にまた遊びたい。今、こうして優を追いかけているのも鬼ごっこをしているようで楽しい。だが、そんな時間も終わりを告げた……。


 激痛に僕はまた悲鳴をあげた。今度は僕の右足に虎ばさみがガッチリと食い込んでいた。何とか外せたが、この足で優を追いかけることは不可能だ。あきらめて、この森を出ることだけ考えよう。


 右足を引きずりながら左足をだすと、カチッという不気味な音が響いた。死んだ......そう思っていた瞬間、霧の中から現れた優に突き飛ばされた。爆発とともに僕は気を失った。



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