クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

居場所

 松本が全員を起こし、事情を説明するのを僕は呆然と見ていた。ほどなくして説明が終わると、クラスの皆が一斉に僕を見る。皆の目からは並々ならぬ殺意が感じとれる。

 そのクラスの輪から筋肉質な男が一人出てきた。特長的な坊主頭、正義まさよしだ。その巨体が目前に迫ると、僕は威圧感からたじろいだ。


「お前が今回の元凶か?」


「ち、ちが…」


「嘘つくな!俺は確かに聞いた!やっと人が殺せるって!」


 松本が叫ぶとクラスがざわつく。


「そ、そんなのデタラメだ!言ってない!」


「人殺しの言った事を信じろなんて無理な話だ。」


 正義が言ったことにクラスは賛同する。多勢に無勢、これ以上何を言ったところで信用なんて勝ち取れない。


「お前はあっちへ行け、俺たちはこっちへ行く。」


 どこを指しても草原だが、正義は僕と真逆の方向へ向かうことだけは分かった。


「わ、分かった。」


「じゃあな。二度と顔を見せるな。」


 そう吐き捨てた正義に僕は背を向けて歩きだす。この見渡す限りの草原の先にはなにがあるのかなんて分からない、なにもないかもしれない。それでも歩く、もしかしたら自分の居場所があるかもしれないから。



 だいぶ歩くと目の前に森がある。一本一本、木の幹は太くどっしりとしている。中は霧がかかっていてよく見えない。ここは避けよう、そう思ったが見渡す限り草原だ。悩んだあげく、森を選んだ。森があるなら川もある、食料がある。生きるために必要なものはそろっていると考えた。僕は大きく深呼吸をする。


「よし。」


 そして森へと歩みを進めた。


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