クラスにハブられた僕は罪を背負いながら頑張ります

煮干

自己満足

 あれから月日は経ち、僕は高校生になった。


 今は親元を離れて暮らしている。地元では僕は人殺しとして、皆にいじめられた。小学校から中学校まで飽きることなく毎日だ。だから高校では誰も僕を知らない学校を選んだ。誰も僕を知らない、新しい自分にだってなれる。そう思っていた。



 自己紹介をして、多少なりとはクラスに馴染めただろう。そう思っていたその日の放課後に事件は起きた。


「おい皆!このクラスに殺人鬼がいるらしいぜ!松町まつまちの友達からメールがきた!」


 心臓が早鐘をうつ。ダメだ、思い出すな……。


「えっーと、死んだのは…新田優・・・。あれ?新田にったってお前と同じだな。」


「しらな......!?」


 いいかけたその瞬間、あの事件がフラッシュバックする。たちまち気分が悪くなり、トイレに向かうために教室を出ようとすると誰かに押し戻された。


「逃げないでで自首しろよ!」


 その瞬間、クラスの皆が賛同の声を上げる。それはどこか松町でのいじめを思い起こさせる。脳裏にこびりついて離れない忌まわしい記憶を思い出して、たまらず僕は発狂した。


クラスはしんと静まり返る。皆が驚き、呆気にとられている隙に僕は荷物をまとめて教室から飛び出した。雨が降っているのに傘もささずに走った。


家についた頃には全身ずぶ濡れになっていた。幸いにも雨で、泣いていたことは誰も気づいていなかった。でも、誰かに気づいてもらいたかった......。



 お風呂に入り、濡れた服も着替える。お湯の効果なのか、気持ちはだいぶ落ち着いた。ベッドに横になり、天井を見上げる。まだ寝るには早い時間だが、今日はとても疲れた。だんだんと眠くなり、寝てしまった。



 目が覚めると知らない場所にいた。辺りは草原で、近くにクラスの皆が倒れている。悪夢かと思ったが違うようだ。手の甲をつねると痛みが走った。


 だとしたらここはどこなんだろう?


「おい!なんだよここ!」


 誰かが目を覚ましたらしい。見ると松本まつもと辺りを見渡していた。その時ちょうど目が合い、松本は近づいてきた。


「俺たちをどうする気だよ!?」


 胸ぐらをつかまれてつま先立ちになる。


「僕もわからない......。」


 松本は舌打ちして、乱暴に僕を放した。


「お前は誰も起こすなよ!人殺し・・・にさせたら何をされるか分かったものじゃないからな!」




目が覚めると、日光が目に直撃する…日光?

僕は飛び起きると辺りを見渡した。草原…何もない…夢?

頬をつねると痛い、夢じゃない。

不思議なことにクラスのみんなここにいる。誘拐だとしたらここはどこだ?

「おい!なんだよここ!」

松本が声を荒らげる。僕を見るやいなや近づいてきた。

「俺たちをどうする気だよ!?」

胸ぐらをつかまれる。拳が鎖骨にあたって痛い。

「僕もわからない...。」

松本は舌打ちして、乱暴に僕を放した。

「お前は誰も起こすなよ!人殺し・・・にさせたら何をされるか分かったものじゃない...。」

人殺し...その言葉は僕の胸に深く突き刺さる。

―人殺し―

頭の中で優がそう叫ぶ。

―人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し―

今度は連呼する。たまらず耳を塞いで座りこんだ。

「ごめんなさい...許して…。」

誰もいないのに僕は、僕自身がつくった優に謝った。そんなのただの自己満足でしかないと分かっているのに。


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