異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?

23話 脅威 VI




「どういう事なんだ?化け物になりたくなかったらって。」

「進化について説明しましょう。まず前提として進化というスキルは私たち神達でさえ欲しがるようなスキルなのですよ。」

「まじで?」

「まじです」

冗談かと思ったがガチトーンのミスラを前にして信じないわけにもいかない。

「貴方の覚えたての鑑定スキルでは詳しくはわからなかったでしょう。ならば教えましょう。そのスキルが如何に壊れているものなのかを」

そう口にしてミスラはまるで神が人にお告げをする様な立ち振る舞いで.....あ、神か。

「進化。それはその者の次元を一つ超えることが出来るスキル。次元。例えば、私は転生の神ですが、私が進化したらきっと、人の生死を自由自在に操ることが出来てもおかしくはありません。神王の命でさえも。」

ミスラの言ったことが本当だとしたら、まじもんのチートスキルだ。

「次元を超える。というのはただ単に強くなるだけじゃないって事か?」

「少なくとも一つや二つ、世界に影響を及ぼす何かを手に入れることは確かでしょう。」

ミスラは影響を及ぼす何かと言った。力だけではない。進化は限界突破とは違う....ってことかもしれない。

「もうだいたい分かったようですね。貴方はへっぽこな癖に理解は早いようです。」

「一言多いけど一応分かった。んで、1番の問題だけど、そんなスキルをなんで俺に渡した?」

「....力の授け方には二つの方法があります。1つ目は私が自ら選んで渡す方法。2つ目はランダムで渡す方法。1つ目は確実に事故は起こらないのですがスキルと言っても膨大な量があります。そこから探し当てるなんて何十日かかるか分かりません。

そして2つ目の方法は一見適当にしか見えませんがこれはその者の能力に見合ったスキルを渡すことが出来るのです。そして私が使ったのは2つ目の方法です」

「それで...失敗したと.....?」

「そうですね。まぁ失敗したのは人選の方ですが」

「いや、でもどう見たって俺にそんな能力見あってはいないだろ?」

「.......ここからは私の口からは言えません。あなたが混乱して記憶に支障がきたしたら元も子もないので」

「何か、俺の価値が変わるほどの事を記憶喪失してるってのか....?」

ミスラの言葉に引っ掛かりは覚えるがそこまで違和感は無かった。

「それと同じようなものです。いつか必ず思い出す日が来るのであまり深く考えないほうがいいです」

「.......まぁ、話せないって言うんならその話はいいよ。じゃあつまりミスラは俺が今、このスキルを使わないと、神王の命をも脅かすかも知れない力を手に入れる可能性があるから、早めにこのスキルを使わせに来たってことか?」

「それだけではないですが、早めに使わせたい。またはスキル自体を返してもらいたいって感じです。まぁ後半のは不可能なのですがね」

とんでもない話になった。俺はそもそも神王を倒したいなんて思ってないし、世界最強になりたい訳でもない。この世界でも死なない程度に強ければ、他には特に望むものはない。

「いいよ。なら使うよ。」

「そうですか。では早速お願いします。それにここで進化すればダンジョンから抜けるのは容易でしょうし私からしたら一石二鳥です。」

「あっそ。んで?どうやって使うんだ?」

「使いたいと願ってスキル名を発せば出来るはずです。」

「それだけか。じゃあ.....『進化』」

俺がそう口にするとどこからともなく光の粒子みたいな現れて俺の周りをグルグルと回ってついには─────


弾けて消えた。


「「.......」」

今の消え方....本当に進化したの?どう考えても途中でキャンセルされた感じのエフェクトだったんですが....

一応念の為ステータスカードを見てみると。

「進化....できてなかったっぽいぞ?」

スキル欄には進化という文字が残っていた。使ったら消えるはずだからさっきのはやっぱりキャンセルしてたのか....

「....もう1回やってみて下さい。」

「分かった。『進化』」

そしてまた光のエフェクトが俺の周りをグルグルとしだして.....また弾けた。

「....ちょっと鑑定してみてください」

そう言うミスラに従い、俺はスキル『進化』を鑑定する。


進化   : 1度だけ生物として進化できる。進化した後はこのスキルは消える。
発動条件    : スキル所持者が己の限界を超えた時、発動することが出来る。


......あーぁ.......こりゃ化け物になるの確定ですわ。

限界を超えた時って...つまり少なくともレベルをカンストさせないと使えないってこと....?

「どうです?」

「.......レベル100じゃないと使えないらしいぞ.............」

「.............困りましたね....こんな条件があったなんて....」

「.....まぁ神王に敵対しないっていう契約書くらいは書いてやるぞ?」

流石に不憫だし。

「そうするしかないですね...」

「でも不思議だな。俺を抹消しようとかは思わなかったのか?その方が手っ取り早いだろうに。」

「そんな事したらたとえ神と言えども即地獄行きですよ。」

神が地獄に落ちるとかシュールすぎる....

「あ、それと聞いていなかったことがあるんだけどさ、俺ってこの世界で、何をさせるために転移させられたの?」

シーン  とミスラは無表情なりにも驚いて口が半開きになっていた。

「まさか、言いそびれたとかじゃないよな?」

「.....あ.......いえ、まぁ少しうっかりしていたのかもしれないですね。」

あれ?誤魔化してこない。いつもなら自分に落ち度がある時はだいたい誤魔化すのに。

「ユウにこの世界に来てやってもらいたかったことは──魔王の討伐です。」

「ベタだな......」

「煩いですよ。目的は魔王討伐ですが敵は別です。」

「....魔王以上の敵がいるってのか?」

「いますとも。なんたってその魔王を生み出した者ですから。」

「めちゃくちゃだな。なんなんだそいつは?」

「神ですよ。邪神として崇められてますけどね。この世界にはガイアスという神が存在しています。     ん、そこまでは知っているようですね。」

「軽くエスパー発動しないでくれる?」

「貴方の顔に何も反応が無かったら大体は知っている事か聞こえていない。というのが一瞬でわかる顔だからいけないのです。」

「俺そんなに分かりやすいか!?」

「....えーでは話を戻します。」

逸らしたのは誰だよ.......俺だよ...。

「この世界の住人は神がガイアスだけだと思っているようですが、実はもう一人います。それが邪神イブリス。この神は認知度はそこまで無いですけど一部の人はこの名前を知っていて崇めるにとどまらず降臨させようとさせています。」

「でもこの世界に降臨するには力を失うんだろ?」

「そうですね。ですがある物があれば力を持ったままこの世界に降臨できます。」

そしてミスラは少しばかり険しい顔になる。

「ある物....ってのは?」

「.......生贄です。それも膨大な数の」

「...降臨させれたとしてそれを企てた奴らになんのメリットがあるんだ?」

 神が降臨したとしても別にこちらに従う訳でもないだろうし。
 邪神なら下手をすればこの世界を滅ぼそうとしてしまうんじゃないか?

「ユウは神を信仰した事がありますか?」

「....いや、無いな。」

 神頼み。なんてものはしたことがあったが特別この神に!ってのは無いしおふざけ半分だ。
 信じちゃいなかったからな。神なんて。

「ならば分からないでしょう。それを信仰している人の気持ちは。
  神を信仰している者は大体が皆、その神に会ってみたい。見てみたい。声を聞いてみたい。と思うのです。その感情に流されて、後先を考えない者がいるのですよ。」

「まるでアイドルだな。」

「私を見てアイドルだなんて。理想の押し付けはやめた方がいいですよ?」

「こんな無表情のアイドルがいでも誰も見向きもしねぇよ安心しろ。」

またダンジョン内に絶叫が響き渡った。



***


「学ばないですね。貴方も。」

「ここで折れたらなんか負けた気がするからな....」

そろそろ俺電気吸いすぎて10万ボルト放てるかもしれない。

「それで?じゃあ俺は神殺しをしろって事か?」

「どちらかと言うと阻止する方向性ですが、まぁそうですね。そういう事になる予定でした。ですが変更です。貴方はこの件には触れないで下さい。」

「おいおい、良いのか?神をも殺せる力になる事もあるんだろ?有力な戦力じゃないか。やるかやらないかは置いといて」

「...........」

 何故か眉間に皺を寄せて俺をじーっと見ているミスラだったがそれも一瞬で直ぐにいつもの無表情の顔に戻って話し始めた。

「...貴方は自国をも滅ぼす爆弾で助けられたとして。爆弾を使ったその国からフレンドリーな感じで不利な同盟を結ぼうと言われて断れますか?」

「.....出来ないな。」

「そうでしょうね。別にユウを疑うわけではありませんが自国を滅ぼす力が隣人にあるというだけで威圧になるものなのです。
  なのでユウはこの件からは何もしないでください。というか進化のスキルを使わずに平和に生きていてほしいです。」

「ふむ、確かにそうかもなじゃあ俺は平和に...........平和に.......生きて....ほしい.....?」

なんか...おかしくなかったか?
 邪神の件には手を出さないで欲しいというのは分かったけど。
 
平和に生きていて...というのは..別にどうでもいい事じゃ....?

「.....あ........い、いえ.....これはっ....言葉の綾というか...違うんです。貴方が思っているようなことは決して──」

ミスラが言い終える前にその頭に手を持っていき、撫でる。

「まぁ、ありがとな。」

「い、いや...だからぁ.....!うぅ...」

 撫でられて赤面しているミスラ。やっぱこいつは無表情だけど感情は豊かだな。

 あれ?ミスラって可愛いんじゃね?
ふむ、こらからはもう少しミスラに優しくしてやろうかな。

「ぃ」

「い?」

「...ぃ.....いい加減にしてくださぁぁい!!!!」

「ギャァァァァ!!」

何故か前よりめちゃくちゃ痛いぃぃぃぃ!!!

そしてこの時祐は、こいつやっぱ可愛くない。と思うのだった。







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