財宝の地図

はお汰

幸せの形

船を造りはじめて4年が経った頃、入江に立派な船が出来上がった。それをうけて酒場ではちょっとした騒ぎになったらしい。

「あいつが船を作り終えそうだってのは本当かい?!」

「ああ。昨晩入江に行ってみてきた。今度のはひょっとかするかもしれないぞ」

「正直ここまでやるとは思わなんだ。よくも1人であそこまで」

かつての友達が口を揃えて、初めて感心したそうだ。しかしその様子が気に入らないのだろう、年長者は黙っていなかった。俺のひとり遊びが周りを巻き込んでる様子を、若い衆が道楽をたのしんでると腹を立てた。

「あれは面白くないな。非常に面白くない。道楽息子が船を造り上げたそうだぞ。」

「水面に浮かべてみろ。あれもたちまちに沈むぞ。」

「今回ばかりは変に出来がよくて、沖の方で沈まなければいいがな…。」

「それでは、すぐに沈むように穴でも開けておいてやろうか」

薄汚い笑い声を上げて、酒場で悪巧みをする年長者たちに、おさげの看板娘が言ってくれたそうだ。

「確かにあれはうつけだ。あいつのやることは道楽です。……けれどあなたがたが企むそれはなにかの役に立ちますか?それも……道楽じゃないですか?」

若い娘に痛いところを突かれて、年寄り共は舌をまいたそうだ。


そして先刻、遂に荷物を積めばいよいよ出航できるという所まで来た。
出来れば天候に恵まれた日に出航したいものだと、入江に建てた小屋でこれからの事をかんがえていると、おさげの娘が夕飯時に飯をこしらえて持ってきてくれた。
やけに神妙な顔でいるなぁと思ったら、久々に長い事を話し始めた。

「どうしても行くんだね。」

「行くさ。行ってこの地図が正しかったと証明するのさ。」

「海に出て領主様の船に出くわしたら命はないよ。年寄り共が宝の地図のこと密告したって噂だから。……その歳で死にたくないでしょ?」

娘は一層顔を強ばらせた。こんな大人しい子も、そんな顔ができるんだなぁと、感心するほどだ。

「……死にたくはないが、1度見えちまった夢を諦めて、ここで騙し騙し生きてくのは死ぬより嫌なんだよ。」

  諦めて、死ぬまで息をしてることが幸せじゃないと分かってしまった。
父が「幸せか」と問うた時「幸せだ」と答えたあの頃の俺は、もうそこにはいなかった。

「……それならもう止めない。死んだって知るものか。」

そう言い捨ててきびすを返したが、立ち去る前にもう一言二言残していった。

「出るなら早い方がいい。今晩荷物を積んで、明日の朝にでもさっさと行ってしまえ。」

「……生きて帰ってこなきゃ、あんたはずっと大ホラ吹きだ。笑いモノだ。……必ず戻って来て、皆を見返しなよ。」



女に泣きべそをかかれては、期待を裏切るわけにいくまい。だから俺も大風呂敷おおぶろしきを広げてやった。

「飯の用意してまっていろ。あの年寄り共がおっぬ前に戻ってきてやらぁ。」



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