財宝の地図

はお汰

まやかし

この町で大人になって、一生領主に首輪を繋がれて働く人生を嘆いた。しかし周りを見れば、そう憂う者はおれだけじゃないことがわかった。それを仕方の無いことだと、思考停止で領主に鞭を打たれることを受け入れていた。

……この地図を見るまでは。

これだけの資本があれば、貧困に喘ぐこの町を救える。それどころか領主対等に交渉し、支配を逃れて独立することすら夢ではないかもしれない。

若き俺は、町の長にこの事を伝えたのだ。何よりもまず先に町のみんなに知らせなくては、と思ったからだ。

「それで、その財宝が有れば、領主殿のもとを独立し、さらに豊かな暮らしができると?」

「そうですとも。くたびれた身体に尚も鞭を打たれ働き、その成果をすすられ、僅かに頂いた幸せを噛み締めて生きる今の暮らしを変えられるのです。」

この事実を広く知らしめ、皆の力を分けてもらおう…と、俺は町の長と年長者を集めて、地図を片手に熱弁を奮った。

「さしあたっては、財宝の島にたどり着き帰って来れる強靭な船をつくりましょう。町の男衆の協力を頂ければ心強い。」

そして……と、俺が続けようとした時に、とある年長者が遮った。

「これから冬を越すと言うのに、そんなことをしている暇があるのかね。」

それを皮切りに口々に年長者が意見をこぼし初めた。

「それに、こんな長い距離を往復できるような丈夫な船を、領主様のお力無しにつくれるのか。」

「そんなもの、お許しにならないだろう。すぐに役人達の視察が入って、その地図ごと奪われておしまいだ。」

「そもそもだ。そもそもその地図に書いてあることは真実なのか?誰も見たことない財宝なのだろう?では誰がその存在を確かめたのかね。」

「こんな苦労をして行ったとして、骨折り損のくたびれ儲けとあっちゃ、お前の父親とお前は末代まで笑いものだぞ」

仕舞いには笑い話にされる始末。呆気に取られて、怒る気力もなかった。
結局、そんな地図は忘れてしまえ。そんな道楽にかまけている暇はない。……という意見に纏まってしまった。

それでも諦めきれず、町の人々に言いふらし回った。しかし、誰に言っても夢物語だと笑い飛ばされた。

その日俺は父とよく通った山上の見晴台に久々に登り、この港町を眺めた。
夕日が水平線に沈む頃合いで、景色は大変立派だが、町は焼け焦げたように黒く見えた。

そこには、傷だらけの老人も子供も駆り出されて畑作を営んでいる。50にもなった母が看板娘として酒場で働いている。皆一様に汗をダラダラ流しながら、疲労に顔を歪ませながらそれでも笑っているのだ。

それが不気味に見えた。

けれども皆、こんな生活の中にも幸せを見つけて、それなりに楽しくやっているらしい。この生活を続けていても、あの年寄りのように長生きできるのだろう。

俺には、その幸せはもうまやかしにしか見えないが、それで皆がいいのと思うのならそれでいいのだろう。


この時、俺は決めた。
1人でもこの財宝を見つけてやる。両手に金銀財宝を抱えて帰るのだ。そして皆を見返してやるのだ。宝の地図は真実だったぞ、と。

「財宝の地図」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く