蘇ったら、世界が平和になっていた!?

日向 葵

突然現れた変な奴

 ミランダお姉ちゃんに脅されて、やってきました採取ポイント。
 ふふ、いっぱい採取しちゃうぞ~

 という訳で、薬草採取を開始します。
 いつも通り、ベルフェに聞きながら、適当に草をむしっていく。
 取れるものは、雑草、雑草、雑草、毒のあるどくけしそう、雑草、雑草、猛毒な上薬草、雑草、雑草、薬草……

 あれ、雑草多すぎじゃね?
 まぁいいや。ちゃんと根元から抜いているけど、地面に埋め直してあげれば問題ないよね。
 でも、あれだね。
 採取依頼も気を付けないと。
 討伐依頼は生態性を壊すレベルで狩りを進めちゃったけど、これって採取も同じじゃん。
 やりすぎ注意ってね。

 そんなわけで、薬草を生態性を壊さないレベルで採取していると……
 ふと、あることに気がついた。

 あれ、採取って言っても、取れるのって薬草だけじゃん。
 他のものって猛毒なんでしょ。
 あれ? こんなんでいいのだろうか?

『そればかりは仕方がないんじゃないですか?』

 それもそうだけど、同じものを採取していても、面白くないでしょ。
 それに、やりすぎるとミランダお姉ちゃんに怒られちゃう。

『それこそ大丈夫ですよ。
 だって、薬草も雑草とほとんど変わらないですし』

 え、薬草って雑草なの。
 一体、どういうこと?

『いや、薬草というのは、怪我に効果がある毒を持った雑草のことを、薬草というんですよ。
 ベルゼ様、知らなかったんですか。
 プギャー』

 ……うぜぇ

『いやん、そんなに怒らないでくださいよ。
 でもですね、とってもいい情報があるんですよ』

 いい情報とはなんぞや?

『その前に、私の疑問を解消したいので、質問に答えてもらっていいですか?』

 じゃあいいや。そのいい情報とやらは。

『えーいいじゃないですか。質問ぐらい』

 仕方ないな~
 で、一体何が聞きたいの?

『それはですね、ベルゼ様が心の中で言っている事と、実際に話している時の……人格というか、性格というか、全く違いますよね。 どうしてです?』

 え、そんなに違う?

『ええ、全く違います。ミランダとかラピスと話しているとき、幼さといいますか、子供っぽさが感じられます』

 ……無自覚だった。
 そんなに子供っぽかったかな。私って魔王に向いてない?

『いやぁ~そんなことないですよ。
 実力もありますし、威厳のある王より、可愛らしい王の方が愛されますよ!』

 そんなこと言っても、私は信じないよ!
 だって、私の悪魔のお友達って、いないもん。
 ベルフェがデタラメを言っていることぐらい分かるんだぞ。プンプン!

『あ~今狙ってやりましたね。
 ここに私とベルゼ様しかいないのに……』

 なんかごめん。
 あ、ベルフェに謝ってしまった。私、もうダメかもしれない。

『な、私に謝ることがどうしてそうなるんですか!』

 もういいや、いい情報教えて。

『はう、落ち込んだベルゼ様、かわゆす。
 いい情報というのはですね。希に人に害をなさない、ちゃんとした上薬草が発見される時があるんですよ。
 しかも、この辺で』

 え、マジで!

『マジマジですよ。高価格で取引される高級薬草がそれです。
 早速探しに行きましょう!』

 よーし、上薬草を見つけてやるぞ!


***


 と意気込んで探してみたのはいいんだけど、全く見つからない。
 なんで、どうして!
 私の何がいけないの。

『まぁ、こんなものじゃないですかね。
 だって、滅多に見つからない高級品ですし。
 探してすぐに見つかるようなものじゃないですよ』

 うう、もうちょっと奥にいってみれば見つかるかも知れない。
 絶対に見つけてやる!

『あ、絶対に見つからないフラグが立ちました。
 ご愁傷様です、ベルゼ様』

 そそそ、そんな事ないもんね!
 ぜぜぜ、絶対に見つけるんだから!

『はぁ、頑張ってください』

 でも、一体どこを探せばいいんだろう?
 ここら辺はあらかた探しちゃったし。
 悩んでいると、心地よい風が吹いていることに気がついた。
 静かで、心地の良い風は、私の心を落ち着かてっくれる。
 焦らず、ゆっくり探せばきっと見つかるよね。

「よし、こっちね!」

 風のゆくままに進めば、上薬草にありつける。
 私はそう信じるよ!

『また、非科学的な……』

 非科学的な存在が何言っているんだか。
 そもそも、この世界で発達しているのは、魔法であって、科学はそんなに発達していないよ。

 風のゆくままに進んでいると、茂みが音を立てて揺れだした。
 茂みは、揺れるだけで、何かが出てくる気配がない。
 何これ、ちょっと怖い。
 え、揺れたら、動物なり、魔物なり出てきてよ。

 揺れた茂みを警戒しながら見ていると、光の粒子みたいな何かが集まってきた。
 集まった光の粒子は、次第に形を成した。

「ぴよぴよ」

 なんだこいつ。
 真っ白い毛並みとうさぎのような耳を持っているけど……
 それに、ヘンテコな仮面をつけてるよ。
 ぷっぷーワロス。
 ただ、とっても気になるのは体の方かな。
 突然現れた変な奴は、体を多いかぶすような感じのマントをつけているんだよ?
 マントの中がどうなっているのか、気にならない方がおかしいよ。

『ベルゼ様。風の魔法を使ってめくってやれば……』

 ナイスだよ、ベルフェ。その方法で行こう!

「という訳で、吹き飛べマント!
 鉄拳制裁」

『ま、魔法じゃなくて物理!』

 私が放った拳により起こった風圧で、変な奴のマントがめくれた。
 魔法より、物理の方がいい場合もあるのだよ。ベルフェ君?

 で、気になるマントの中はどうなっていたかというと……
 なんと、猫が二足歩行したような、不思議な体だった。
 空間移動で、後ろ側を覗いてみる。

「ぴよ!」

 ヘンテコな奴は、私が瞬間移動をしたせいで驚いているけど、気にしない。
 私は、お前の尻尾がどうなっているのか見たいだけなんだよ。

「ぴよよよよ」

 ヘンテコな奴は、まるでスカートの中を見られたような反応をする。
 ちょっと罪悪感を感じるけど、私にも言わせて欲しいことがある。

「お前、うさぎなのか猫なのか鳥なのかネズミなのか、はっきりしてよ!」

 そう、この変な奴の尻尾は、ミミズのような形をした、ドブネズミの尻尾だった。

 き、気持ちわるいもん見せつけやがって。
 討伐して……あ、ダメだ。ミランダお姉ちゃんに怒られる。
 生態性を壊してしまう。
 でも、こんな気持ちわるい魔物を野放しにしとくわけには……

『あ、これなら存在を消しても大丈夫ですよ。
 だってこれ、精神生命体、いわゆる精霊とかいうやつですから』

 え、でも精霊も魔物と一緒でしょう?
 だったら、消しちゃダメじゃん。

『いえ、精霊って自然現象なんですよ。
 土地に溜まった魔力が一定以上貯まると、魔力暴走を起こして、精霊が現れたり、変な現象が現れたりするんですよ。
 ベルゼ様、知らなかったでしょう!』

 うん、教えてくれたのはありがたいんだけど、なんかムカつく。
 消し去りたい気分だよ?

『お、お願いですから、消し去るのは、その精霊だけにしてくださいね』

 ……っち。

『お願いですよぉぉぉぉ』

 仕方ない。ベルフェを消し去るのはまた今度ということで。
 なんか、『私が消されるようなことが起こりませんように』と、ベルフェが祈っているけど、ま、いっか。

「ぴ、ぴよぴよ~」

 精霊は、私の実力を全く理解していないのか、魔力を纏った拳を放ってきた。
 普通の人間がくらったら、上半身が吹き飛ばされるであろう威力の拳なんだけど、私には関係ない。

「その魔力、いただきます!
 喰らい尽くせ【暴食】」

 私の生まれついて持っている異能【暴食】が精霊が纏う魔力を喰らい尽くす。

 ほら、私って暴食の悪魔じゃん?
 だから、なんでも食べれるんだけど……
 この精霊の魔力、めちゃくちゃマズイ。
 やばい、吐きそう……
 最初はそうでもなかったのに……
 なんで、どうして……

 精霊をちゃんと見てみると、精霊の体が消えかかっていた。
 そういえば、精霊って、土地に一定魔力が溜まった時に起こる自然現象だっけ?
 てことは、魔力の塊じゃん!
 【暴食】なんて使ったら、一緒に食べちゃうよ。
 そりゃ不味くて当たり前だ。
 だって、暴走した魔力だもん。
 あれって苦いのよ……

「もういらない!
 消し飛べ、鉄拳制裁!」

 私の拳が消えかかった精霊を吹き飛ばした。
 木々をなぎ倒し、岩にぶつかり、ようやく止まった精霊は、光の粒子となって消えていった。

 現れたときと消えていく時が同じって……
 芸がないのね、精霊って。
 自然現象だから仕方ないか。

『ベルゼ様、また光の粒子が集まってきているんですけど……』

 あ、ホントだ。
 もしかして、また出てくんの。
 面倒くさ。

 でも、実際に現れたのは、ちょっと大きめの宝箱。
 こ、これは一体……

『あ、精霊って、アイテムをドロップするんですよ?
 とっても珍しいので、高値で取引されます』

 え、珍しいの!
 中身はなんだろう。

 宝箱の中身を開けてみると、うさみみヘアバンドと、にゃんこ仮面、ぴよぴよマントとネズミのしっぽムチが入っていた。

 うさみみヘアバンドは、ふわふわして可愛らしいし、ぴよぴよマントは、ひよこの気分が味わえそう!
 それに、にゃんこ仮面は可愛いよ。
 でもね、ねずみにしっぽムチは気持ちわるい。
 捨てたい、でも、珍しいもの。
 だから捨てられない!

『あの、ベルゼ様。
 上薬草、どうしますか?』

 もうそんなのどうでもいい。
 珍しいものが見つけられてとっても嬉しいな。
 やっほう!

『あ、はい。ベルゼ様が嬉しそうなら、それでいいです……
 ですが、上薬草が後ろにあるんですけど……』

 ん、そんなことはどうでもいいや。
 ふっふ~ん。可愛いなぁ、精霊アイテム!

 私はあまりの嬉しさに、喜びながら、フリーゼルに帰宅した。
 で、フリーゼルに到着して、ベルフェが言っていたことを思い出して、激しく後悔したよ。
 はぁ、あの時とっておけば良かったよ。
 上薬草……

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