ちょっと変わった俺の妹
ちょっと変わった俺の妹
俺には妹がいる。血は繋がっていない。義理の妹と言うやつだ。血のつながりはなくても、俺たちは家族になったあの日から、本当の兄妹のように仲良くやってきた。
妹は、それはもう人懐っこい性格をしていて、いつも俺の後ろをついて来た。そんな妹が可愛くて、一緒に遊んでやったあの頃が懐かしい。
それはもう数年前のこと。俺は東京の大学に入るために上京し、東京で就職した。といっても、元からアフェリエイトで稼いでいており、その技術が見込まれてウェブデザイナーになったという感じかな。
ぶっちゃけ、仕事は家で行っている。会社に行くようなことは一切ない。
だから他に働いている人よりも割と自由に仕事をしているっていうのが、今の俺。こんな事して何で大学に行ったんだと言われることもあったけど、学んだ知識が以外と役に立っている。技術を勉強して、その情報関連を記載したサイト、そこにもっと参考になりそうな広告などを乗っけると、人は意外と見てくれる。
技術が世界を支えているわけだしな。それは当たり前か。
だがある日、東京で一人、自由に生活しているところに最悪の連絡がきた。
俺の両親が死んだ。
飛行機の事故だったという。海外出張に出かける俺の父親に母親がついていき、一緒に乗っていたであろう行きの飛行機。それが爆破テロにあって、墜落した。
俺は子供みたいに泣いてしまったさ。
割と自由に働けたんだ。実家に戻って仕事をするという選択肢もあった。もっと話すことができたはずだ。
でも、後悔しても、もう遅い。死んでしまったものは蘇らないのだから。
ただ一つ、救いというべきものがあった。それは妹の存在だ。家族が全ていなくなるということがなかったのが心の救いとも言えよう。
俺の妹は両親が死んでしまったことにより、実家で一人になってしまった。
親戚の人もどうするか、悩んでいたみたいだったが、ここは兄として俺が何とかしなければならないと思ったんだ。
「俺、割と自由に仕事ができるから実家に戻るよ。働いているし、妹一人ぐらい面倒見れる。だから、俺に任せてくれ」
親戚の人たちも、俺の言葉に納得してくれた。俺が学生だったら聞いてくれなかったと思うが、一応俺は働いている。ちゃんと給料をもらって生活していた。
それに、妹が俺に懐いていることを親戚の人たちは知っている。突然環境が変わるより、戻ってきてくれた方が妹にもいいと思ったからこそ、納得してくれたのだと思う。
血はつながっていなくても、家族。だからこそ、俺は精一杯やらなければならない。
親戚の人が納得してくれたあと、俺は急いで東京に戻り、実家に向かう準備をした。
全ての準備を終えて、俺が実家に戻ってきたのは、葬式から数日後のこと。
引越しのトラックはまだ来ていないが、俺は一足先に実家に戻った。
なるべく一人にさせてあげたくない。両親が死んで辛いのは妹も同じだ。
だからこそ、早く戻ってきたわけだが、様子を見るに、電気がついていない。もしかしたらどこかに出かけているのかもしれない。
ドアの鍵を開けて中に入る。静寂に包まれた玄関、電気のついていない部屋は寂しさを漂わせている。
いつもなら、母親が「おかえり」と言ってくれるのだが、もういない。
なんか、寂しいな。こんな寂しいところに、数日間だけど妹を一人にしてしまったと思うと、ちょっと辛くなる。
寂しがっていると思うし、まだ両親が死んで辛いと思っているはずだ。甘えてきたら受け止めてあげよう。
玄関で靴を脱ぎ、リビングに向かうと、ガラス越しにうっすらと明かりがついているように見えた。部屋の電気ではなく、おそらくスタンドライトをつけているのかもしれない。
「うひ、うひひひひひひひいひ、ひひ、ひひひひ」
……リビングから怪しい笑い声がする。これは妹のひばりの声だ。
もしかして、ショックでおかしくなってしまったのか?
不安に思い、そっとドアを開ける。ひばりは謎の箱を机の上に置き、真っ黒いカバーを付けた本を見て、顔を赤らめてにやけていた。
これは一体どういうことだろう。
「おい、ひばり」
「おおおおお、お兄ちゃん!」
やっと俺の存在に気がついたひばりは、慌てて立とうとし、足をぶつけてしまった。
その痛みで、つい本を投げてしまい、ぶつけた時の衝撃で机の上にあった箱が転倒する。
中に入っていたものが、床に落ちて散らばった。
これは、ボルトとナットか?
床に散らばった無数のボルトとナットがなぜこんなところにあるのか、意味がわからない。
それに、ひばりが持っていたこの本。これは一体。
俺は本を手に取って、パラッと中を開いてみた。
「ちょ、お兄ちゃん。それ見ちゃダメ、私のえっちい本を見ないでぇぇぇぇぇ」
悲鳴をあげるひばりは、これがえっちい本だと言った。それが俺には理解ができなかった。
この……ボルトとナットの写真集をえっちい本と言う意味が。
「ちょっと返して、お願い返してよぉぉぉぉ」
泣き喚くひばりを少し哀れに思い、そっと本を返してあげる。
「あうあう、見た、見ちゃった? 見ちゃったよね。うわぁぁぁん、お兄ちゃんに見られたぁぁぁ」
あ、うん。そんなに泣くことか?
たしかに、恥ずかしいものを見られたら泣きたい気持ちになるだろうが、これはボルトとナットの写真集だぞ?
「うう、なによ。変な顔をして……」
「いや、なんていうか。見られて泣くほどのものなのか?」
「え、嘘でしょ。お兄ちゃん!」
目を見開いて、俺の服を掴むひばりは、信じられないと連呼する。
いや、俺のほうが信じられないよ。
「お兄ちゃんにはボルトとナットのエロさがわからないの。何のために大学に行ったの!」
まさか、ボルトとナットのエロさがわからないことで、何のために大学に行ったのか言われる日が来るとは思わなかった。
人生いろいろあるんだな。
「仕方ないから教えてあげる。ボルトとナットはね、非処女と非童貞なのよ!
この子らはね、タップやダイスといったものに、初めてを強制敵に奪われるの。それがこの子らの溝。噛み合うために作られた溝は無理やりやられた証。そんな彼ら、彼女らが袋に詰められて、いろんな場所で売られ、そして出会うの!
運命の出会いをした二人は、ゆっくりと、ギシギシ言いながらしっかり絡み合い、二人は一つになるのよ。
こんな素晴らしくエロいこの二人を見て、お兄ちゃんは何とも思わないの?」
「えっと……なんて言えばいいんだ、これ」
どうやら、両親が死んだショックで妹はおかしくなってしまったらしい。それも、斜め上すぎる感じに。
どうしよう。かつてない不安が心の奥底から沸き上がってくるようだ。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「な、なんだよ」
俺を呼びながら近づくひばりに、無意識で一歩下がってしまう。
でも、ここで下がって何が兄だ。俺は面倒を見ると言っただろう。
少し不安に思いつつも、俺は一歩前に出た。
「へへ、おかえり」
突然のことに慌てて気がつかなかったが、ひばりの顔が少し腫れており、少し泣いただけじゃつかないような涙の跡が残っていた。多分、ずっと泣いていたんだな。やっぱり両親が死んでしまったショックは大きい。
だから、自分の好きなものを見て、寂しさを紛らわそうとしていたのかもしれない。
一人でいたところに俺は戻ってきた。ただひとりでいるより、兄であっても家族と一緒にいるほうが嬉しいんだろう。
それを証明してくれるかのような、嬉しそうな笑顔をひばりはしていた。
帰ってきたならこれを言わなければならない。家族であるならこれを言わなければならない。ちょっと変わった妹になってしまったけど、高校を卒業して、しっかりとした大人になるまで面倒を見るという思いを込めて。
「ああ、ただいま、ひばり」
笑顔で俺はそう言った。
妹は、それはもう人懐っこい性格をしていて、いつも俺の後ろをついて来た。そんな妹が可愛くて、一緒に遊んでやったあの頃が懐かしい。
それはもう数年前のこと。俺は東京の大学に入るために上京し、東京で就職した。といっても、元からアフェリエイトで稼いでいており、その技術が見込まれてウェブデザイナーになったという感じかな。
ぶっちゃけ、仕事は家で行っている。会社に行くようなことは一切ない。
だから他に働いている人よりも割と自由に仕事をしているっていうのが、今の俺。こんな事して何で大学に行ったんだと言われることもあったけど、学んだ知識が以外と役に立っている。技術を勉強して、その情報関連を記載したサイト、そこにもっと参考になりそうな広告などを乗っけると、人は意外と見てくれる。
技術が世界を支えているわけだしな。それは当たり前か。
だがある日、東京で一人、自由に生活しているところに最悪の連絡がきた。
俺の両親が死んだ。
飛行機の事故だったという。海外出張に出かける俺の父親に母親がついていき、一緒に乗っていたであろう行きの飛行機。それが爆破テロにあって、墜落した。
俺は子供みたいに泣いてしまったさ。
割と自由に働けたんだ。実家に戻って仕事をするという選択肢もあった。もっと話すことができたはずだ。
でも、後悔しても、もう遅い。死んでしまったものは蘇らないのだから。
ただ一つ、救いというべきものがあった。それは妹の存在だ。家族が全ていなくなるということがなかったのが心の救いとも言えよう。
俺の妹は両親が死んでしまったことにより、実家で一人になってしまった。
親戚の人もどうするか、悩んでいたみたいだったが、ここは兄として俺が何とかしなければならないと思ったんだ。
「俺、割と自由に仕事ができるから実家に戻るよ。働いているし、妹一人ぐらい面倒見れる。だから、俺に任せてくれ」
親戚の人たちも、俺の言葉に納得してくれた。俺が学生だったら聞いてくれなかったと思うが、一応俺は働いている。ちゃんと給料をもらって生活していた。
それに、妹が俺に懐いていることを親戚の人たちは知っている。突然環境が変わるより、戻ってきてくれた方が妹にもいいと思ったからこそ、納得してくれたのだと思う。
血はつながっていなくても、家族。だからこそ、俺は精一杯やらなければならない。
親戚の人が納得してくれたあと、俺は急いで東京に戻り、実家に向かう準備をした。
全ての準備を終えて、俺が実家に戻ってきたのは、葬式から数日後のこと。
引越しのトラックはまだ来ていないが、俺は一足先に実家に戻った。
なるべく一人にさせてあげたくない。両親が死んで辛いのは妹も同じだ。
だからこそ、早く戻ってきたわけだが、様子を見るに、電気がついていない。もしかしたらどこかに出かけているのかもしれない。
ドアの鍵を開けて中に入る。静寂に包まれた玄関、電気のついていない部屋は寂しさを漂わせている。
いつもなら、母親が「おかえり」と言ってくれるのだが、もういない。
なんか、寂しいな。こんな寂しいところに、数日間だけど妹を一人にしてしまったと思うと、ちょっと辛くなる。
寂しがっていると思うし、まだ両親が死んで辛いと思っているはずだ。甘えてきたら受け止めてあげよう。
玄関で靴を脱ぎ、リビングに向かうと、ガラス越しにうっすらと明かりがついているように見えた。部屋の電気ではなく、おそらくスタンドライトをつけているのかもしれない。
「うひ、うひひひひひひひいひ、ひひ、ひひひひ」
……リビングから怪しい笑い声がする。これは妹のひばりの声だ。
もしかして、ショックでおかしくなってしまったのか?
不安に思い、そっとドアを開ける。ひばりは謎の箱を机の上に置き、真っ黒いカバーを付けた本を見て、顔を赤らめてにやけていた。
これは一体どういうことだろう。
「おい、ひばり」
「おおおおお、お兄ちゃん!」
やっと俺の存在に気がついたひばりは、慌てて立とうとし、足をぶつけてしまった。
その痛みで、つい本を投げてしまい、ぶつけた時の衝撃で机の上にあった箱が転倒する。
中に入っていたものが、床に落ちて散らばった。
これは、ボルトとナットか?
床に散らばった無数のボルトとナットがなぜこんなところにあるのか、意味がわからない。
それに、ひばりが持っていたこの本。これは一体。
俺は本を手に取って、パラッと中を開いてみた。
「ちょ、お兄ちゃん。それ見ちゃダメ、私のえっちい本を見ないでぇぇぇぇぇ」
悲鳴をあげるひばりは、これがえっちい本だと言った。それが俺には理解ができなかった。
この……ボルトとナットの写真集をえっちい本と言う意味が。
「ちょっと返して、お願い返してよぉぉぉぉ」
泣き喚くひばりを少し哀れに思い、そっと本を返してあげる。
「あうあう、見た、見ちゃった? 見ちゃったよね。うわぁぁぁん、お兄ちゃんに見られたぁぁぁ」
あ、うん。そんなに泣くことか?
たしかに、恥ずかしいものを見られたら泣きたい気持ちになるだろうが、これはボルトとナットの写真集だぞ?
「うう、なによ。変な顔をして……」
「いや、なんていうか。見られて泣くほどのものなのか?」
「え、嘘でしょ。お兄ちゃん!」
目を見開いて、俺の服を掴むひばりは、信じられないと連呼する。
いや、俺のほうが信じられないよ。
「お兄ちゃんにはボルトとナットのエロさがわからないの。何のために大学に行ったの!」
まさか、ボルトとナットのエロさがわからないことで、何のために大学に行ったのか言われる日が来るとは思わなかった。
人生いろいろあるんだな。
「仕方ないから教えてあげる。ボルトとナットはね、非処女と非童貞なのよ!
この子らはね、タップやダイスといったものに、初めてを強制敵に奪われるの。それがこの子らの溝。噛み合うために作られた溝は無理やりやられた証。そんな彼ら、彼女らが袋に詰められて、いろんな場所で売られ、そして出会うの!
運命の出会いをした二人は、ゆっくりと、ギシギシ言いながらしっかり絡み合い、二人は一つになるのよ。
こんな素晴らしくエロいこの二人を見て、お兄ちゃんは何とも思わないの?」
「えっと……なんて言えばいいんだ、これ」
どうやら、両親が死んだショックで妹はおかしくなってしまったらしい。それも、斜め上すぎる感じに。
どうしよう。かつてない不安が心の奥底から沸き上がってくるようだ。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「な、なんだよ」
俺を呼びながら近づくひばりに、無意識で一歩下がってしまう。
でも、ここで下がって何が兄だ。俺は面倒を見ると言っただろう。
少し不安に思いつつも、俺は一歩前に出た。
「へへ、おかえり」
突然のことに慌てて気がつかなかったが、ひばりの顔が少し腫れており、少し泣いただけじゃつかないような涙の跡が残っていた。多分、ずっと泣いていたんだな。やっぱり両親が死んでしまったショックは大きい。
だから、自分の好きなものを見て、寂しさを紛らわそうとしていたのかもしれない。
一人でいたところに俺は戻ってきた。ただひとりでいるより、兄であっても家族と一緒にいるほうが嬉しいんだろう。
それを証明してくれるかのような、嬉しそうな笑顔をひばりはしていた。
帰ってきたならこれを言わなければならない。家族であるならこれを言わなければならない。ちょっと変わった妹になってしまったけど、高校を卒業して、しっかりとした大人になるまで面倒を見るという思いを込めて。
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笑顔で俺はそう言った。
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