カオティックアーツ
36:実力テスト 楓編
楓は、【ディメンションリング】からいつでもカオティックアーツを出せるようにして、聖導士の前に立った。
傍からみたら何も構えていないその姿に、聖導士が激怒した。
「あなた、やる気あるの」
「ん、言っていることの意味がわかりませんね。俺はやる気十分ですよ」
「ふざけないで!」
「別にふざけているわけじゃないんですが……」
「なんの構えもしないで立っているだけなんて、どうぞ攻撃を当ててくださいって、言っているようなものじゃない」
「じゃあ、これが俺の構えなんですよ」
楓が何か反応するたびに、聖導士がヒートアップする。
そもそも楓は研究者兼技術者であり、【ライトワーク】でも戦うことをメインとしていなかった。
楓が戦うときは【ディメンションリング】からカオティックアーツを取り出して、高火力でぶっ放すのが基本なので、構えなど存在しない。
武器依存型の戦い方なのだ。
どうやら、それが聖導士の気に触れたらしく、楓に罵詈雑言を言ってきた。
構え以外にもいろいろ指摘して、完全に罵ってくる聖導士。
聖導士の理不尽なもの言いにブラスがブチ切れそうだったので、静かに宥める楓だった。
「ふん、どうせ実力もない人が冒険者になろうとしているんでしょう。仕方がないから、さっさと終わらせることにしましょう」
「やっと、始まるのか……」
なかなか始まらない実力テストに苛立ちを覚えてくる楓だった。
楓は、待たせているクレハたちに申し訳ないなと思い、早く終わらせるために、【ブーストリング・マークⅡ】を装備する。
「では、楓さんの実力テストを始めます」
受付嬢の開始の合図と同時に、聖導士がいきなり聖法を放つ。
「我、光神様に祈り申し上げる。我が前に立ちふさがりし、邪悪なるものに裁きという祝福を【ホーリージャッジメント】」
聖導士が放った聖法【ホーリージャッジメント】は、楓から見たらフレアの閃光魔法【エクレール・フロウ】としか見えないものだった。
そのため、簡単によけることができたが、あえてよけなかった楓は、【ディメンションリング】から新しいカオティックアーツを取り出した。
新しいカオティックアーツ【ハーフ・エナジー・グラトニー】は、インパクトと同様、手袋型であり、対魔法・聖法ように作ったものだ。
それを、【ブーストリング・マークⅡ】と連動させて、聖導士が放った聖法に触れた。
聖導士が放った魔法は、楓が触ると、嘘のように掻き消えていく。
「い、いったい何が起こった……」
聖導士は困惑した。
神に祈りをささげて、敵を穿つ聖なる力。
それが聖法のはずなのに。
それをものともせずにかき消した楓に、聖導士は恐怖を覚えた。
楓が聖法に触れると、【ブーストリング・マークⅡ】が、ゆっくりと光りはじめた。
「これを作っておいて正解だった。【ブーストリング・マークⅡ】のチャージ時間がすごく短縮できる」
「っち、わけのわからないことをブツブツと!」
全ての攻撃を、【ハーフ・エナジー・グラトニー】によって、放ったすべての聖法をかき消された聖導士。
楓はニヤリと笑い、【ディメンションリング】から【インフィニティ・マークⅣ】の低出力版を取り出す。
「ここがお前の死に場所だ!」
「や、やめろおおおおおおおお」
ドドドドドドドドド!
鳴り響く銃声。
荒れ狂う砂煙。
聖導士は、楓のカオティックアーツに滅多打ちにされていた。
【インフィニティ・マークⅣ】の威力は、普通の人の打撃ぐらいの威力になっている。
当たれば当然痛い。
しかし、楓は【ブーストリング・マークⅡ】まで装備しており、折角下げた出力が無駄になっていた。
現在の威力としては、岩も砕いてしまう高レベル武闘家の拳なみになっている。
その威力の弾を、低出力にしたことで連射になった【インフィニティ・マークⅣ】。
  もちろん、聖導士に向けて超連射する。
「す、ストーップ。もうやめてください。聖導士さんが泣きながら気絶して、もう動けないですから。ちょ、やめてって言っているでしょ!」
なら早く終了宣言しろよ、とか思っていた楓だが、相手が気を失っていることにすら気が付いておらず、少しやりすぎたかなと思った。
ブラスは誇らしげな顔をしていたが、前衛冒険者は完全に呆れていた。
「ちょっとやりすぎじゃないのか?」
「といわれましても、こっちからじゃ、聖導士さんの姿が見えないですし」
楓はそう言って、受付嬢に話を振る。
受付嬢はというと、明後日の方向を見て口笛を吹いていた。
「そんなことより、よくやったな楓!」
楓が勝ったことがよほどうれしいのか、ブラスは楓に抱き着いた。
「ブラス。抱き着くな。暑苦しい」
「やっぱり、お二人ってそういう関係……」
「そこ、変な妄想しない! 早くランク決めて下さい!」
「ひゃう。すいませ~ん」
腐った考えのせいで、悪寒が走っている楓は、一刻も早くこの場所を離れたかった。
下手をすると、ブラスに襲われそうだからだ。
早く、早くと楓が思っていると、受付嬢が、楓に振り向いた。
「ふふ、ランク決定しました。今回の実力テストの結果は、Bランクです!」
「Bか。なかなか……」
「こんな結果。納得できるか!」
ブラスが受付嬢を問い詰める。
この時点で、受付嬢は涙目だった。
「か、楓はすごかっただろ。なんでBなんだよ。おかしいだろ!」
あまりにも残念なことを始めたので、ブラスの頭を【インフィニティ・マークⅣ】低出力版で殴った。
力強く殴りすぎたのか、ブラスは気絶してしまう。
楓は、ブラスを引きずって持っていくことにした。
一応、それ用のカオティックアーツも取り出してだ。
「あ、あの。助けていただいてありがとうございます」
「身内が悪さしたからな。こちらこそすいません。俺たちはみんなのところに戻らなければいけないので」
「では、また私が案内しますね」
「よろしくお願いします」
こうして、受付嬢と楓たちは、この場を去った。
残されたのは、目を覚ました聖導士と、前衛冒険者だった。
とりあえず、最後に二人が思ったことは、「あの武器、打撃もいけるんだな……」だった。
傍からみたら何も構えていないその姿に、聖導士が激怒した。
「あなた、やる気あるの」
「ん、言っていることの意味がわかりませんね。俺はやる気十分ですよ」
「ふざけないで!」
「別にふざけているわけじゃないんですが……」
「なんの構えもしないで立っているだけなんて、どうぞ攻撃を当ててくださいって、言っているようなものじゃない」
「じゃあ、これが俺の構えなんですよ」
楓が何か反応するたびに、聖導士がヒートアップする。
そもそも楓は研究者兼技術者であり、【ライトワーク】でも戦うことをメインとしていなかった。
楓が戦うときは【ディメンションリング】からカオティックアーツを取り出して、高火力でぶっ放すのが基本なので、構えなど存在しない。
武器依存型の戦い方なのだ。
どうやら、それが聖導士の気に触れたらしく、楓に罵詈雑言を言ってきた。
構え以外にもいろいろ指摘して、完全に罵ってくる聖導士。
聖導士の理不尽なもの言いにブラスがブチ切れそうだったので、静かに宥める楓だった。
「ふん、どうせ実力もない人が冒険者になろうとしているんでしょう。仕方がないから、さっさと終わらせることにしましょう」
「やっと、始まるのか……」
なかなか始まらない実力テストに苛立ちを覚えてくる楓だった。
楓は、待たせているクレハたちに申し訳ないなと思い、早く終わらせるために、【ブーストリング・マークⅡ】を装備する。
「では、楓さんの実力テストを始めます」
受付嬢の開始の合図と同時に、聖導士がいきなり聖法を放つ。
「我、光神様に祈り申し上げる。我が前に立ちふさがりし、邪悪なるものに裁きという祝福を【ホーリージャッジメント】」
聖導士が放った聖法【ホーリージャッジメント】は、楓から見たらフレアの閃光魔法【エクレール・フロウ】としか見えないものだった。
そのため、簡単によけることができたが、あえてよけなかった楓は、【ディメンションリング】から新しいカオティックアーツを取り出した。
新しいカオティックアーツ【ハーフ・エナジー・グラトニー】は、インパクトと同様、手袋型であり、対魔法・聖法ように作ったものだ。
それを、【ブーストリング・マークⅡ】と連動させて、聖導士が放った聖法に触れた。
聖導士が放った魔法は、楓が触ると、嘘のように掻き消えていく。
「い、いったい何が起こった……」
聖導士は困惑した。
神に祈りをささげて、敵を穿つ聖なる力。
それが聖法のはずなのに。
それをものともせずにかき消した楓に、聖導士は恐怖を覚えた。
楓が聖法に触れると、【ブーストリング・マークⅡ】が、ゆっくりと光りはじめた。
「これを作っておいて正解だった。【ブーストリング・マークⅡ】のチャージ時間がすごく短縮できる」
「っち、わけのわからないことをブツブツと!」
全ての攻撃を、【ハーフ・エナジー・グラトニー】によって、放ったすべての聖法をかき消された聖導士。
楓はニヤリと笑い、【ディメンションリング】から【インフィニティ・マークⅣ】の低出力版を取り出す。
「ここがお前の死に場所だ!」
「や、やめろおおおおおおおお」
ドドドドドドドドド!
鳴り響く銃声。
荒れ狂う砂煙。
聖導士は、楓のカオティックアーツに滅多打ちにされていた。
【インフィニティ・マークⅣ】の威力は、普通の人の打撃ぐらいの威力になっている。
当たれば当然痛い。
しかし、楓は【ブーストリング・マークⅡ】まで装備しており、折角下げた出力が無駄になっていた。
現在の威力としては、岩も砕いてしまう高レベル武闘家の拳なみになっている。
その威力の弾を、低出力にしたことで連射になった【インフィニティ・マークⅣ】。
  もちろん、聖導士に向けて超連射する。
「す、ストーップ。もうやめてください。聖導士さんが泣きながら気絶して、もう動けないですから。ちょ、やめてって言っているでしょ!」
なら早く終了宣言しろよ、とか思っていた楓だが、相手が気を失っていることにすら気が付いておらず、少しやりすぎたかなと思った。
ブラスは誇らしげな顔をしていたが、前衛冒険者は完全に呆れていた。
「ちょっとやりすぎじゃないのか?」
「といわれましても、こっちからじゃ、聖導士さんの姿が見えないですし」
楓はそう言って、受付嬢に話を振る。
受付嬢はというと、明後日の方向を見て口笛を吹いていた。
「そんなことより、よくやったな楓!」
楓が勝ったことがよほどうれしいのか、ブラスは楓に抱き着いた。
「ブラス。抱き着くな。暑苦しい」
「やっぱり、お二人ってそういう関係……」
「そこ、変な妄想しない! 早くランク決めて下さい!」
「ひゃう。すいませ~ん」
腐った考えのせいで、悪寒が走っている楓は、一刻も早くこの場所を離れたかった。
下手をすると、ブラスに襲われそうだからだ。
早く、早くと楓が思っていると、受付嬢が、楓に振り向いた。
「ふふ、ランク決定しました。今回の実力テストの結果は、Bランクです!」
「Bか。なかなか……」
「こんな結果。納得できるか!」
ブラスが受付嬢を問い詰める。
この時点で、受付嬢は涙目だった。
「か、楓はすごかっただろ。なんでBなんだよ。おかしいだろ!」
あまりにも残念なことを始めたので、ブラスの頭を【インフィニティ・マークⅣ】低出力版で殴った。
力強く殴りすぎたのか、ブラスは気絶してしまう。
楓は、ブラスを引きずって持っていくことにした。
一応、それ用のカオティックアーツも取り出してだ。
「あ、あの。助けていただいてありがとうございます」
「身内が悪さしたからな。こちらこそすいません。俺たちはみんなのところに戻らなければいけないので」
「では、また私が案内しますね」
「よろしくお願いします」
こうして、受付嬢と楓たちは、この場を去った。
残されたのは、目を覚ました聖導士と、前衛冒険者だった。
とりあえず、最後に二人が思ったことは、「あの武器、打撃もいけるんだな……」だった。
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