カオティックアーツ

日向 葵

11:再戦

あれから、数日がたった。あれから化物の出現情報は出ていない。
 その間、楓はクレハと強力してカオティックアーツを作成していた。
 魔法、聖法。楓の世界とは異なる技術が存在するため、楓だけでは作成が難しかった。
 そこで、クレハにお願いして魔法技術をカオティックアーツに取り入れた。
 魔法技術の理解が不十分な楓でも、今のカオティックアーツに取り入れることは容易だった。

 容易だったのは【インフィニティ】に魔法技術を試しに入れたことがあったからなのは言うまでもない。

 しかし、ここで問題が発生した。
 カノンの親は聖呪痕という呪いのような聖法で苦しんでいる。
 それをどうにかするためには、蓄えられたエネルギーの発散と聖呪痕の解呪が必要不可欠である。
 他者にかけられた聖法が使用するエネルギーを拡散させる技術がなかったのだ。

 本来、魔女が魔法を使うときに、元の形に戻るため魔力を発散させる工程を含むと、楓はフレアから聞いていた。
 しかし、それは自分自信が使った魔法であって、他者が使ったものではない。
 そのため楓はカオティックアーツの作成に苦戦していた。

 そこで、クレハにお願いして、魔法について詳しく教えてもらい、それらしいものを完成させた。
 試作段階であり、体にどれぐらい影響があるのかわからない。

 「お前ら、例の化物が出現したらしいぞ。今すぐ準備しろ」

 不意に、フレアが化物……カノンの親が現れたことを告げる。

 「っち、まだ試作段階だけど仕方がない。この作り方ならいけるはずだ。やるしかない!」

 楓は、この時のために作成したカオティックアーツを【ディメンションリング】にしまい、駆け出した。



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 森の中は異常な静けさだった。
 普段なら、鳥の鳴き声でも聴こえてくるだろう。
 その音すら聴こえない異常な森の中を楓たちは進む。

 目撃された情報によると、この先にカノンの親がいる。
 楓たちは気を引き締めて、進んでいった。

 この森にはいくつか開けた場所がある。
 そこに、【あれ】はいた。

 漆黒の毛並み、真紅の瞳。でかいからだにすべてを引き裂く鋭い爪。
 前に会った時は金色の色がすこし混ざっていた。
 しかし、楓たちの目の前にいるのは全くの別物だ。
 カノンの種が【ライオネイラ】というらしいが、カノンの親は【ライオネイラ】の面影すらなくなっている。
 あれは、負の感情に取り込まれた化物だった。

 「GAAAAAAAAAAAAAA!」

 森全体に漆黒の獣の叫び声が響く。
 完全に聖樹痕に飲み込まれたカノンの親をみて、クレハ、フレア、ティオが絶句する。
 そんな中、楓は一人前に出た。

 「俺のカオティックアーツに不可能はない。俺がお前を救ってやる」

 怯えもせず、立ち向かう姿をみて最初に動いたのはクレハだった。

 「楓ばっかりいい格好させられないわ。私だって助けたい。私の魔法に不可能はない!」
 「フレアさん、ティオ。カノンを守りながら援護を」
 「あれは私たちで…」
 「「絶対に救って見せる!」」

 ティオとフレアはカノンを抱いてすこし下がる。
 フレアは閃光、つまり光を司る魔女であり、攻撃よりも援助の方が得意だっだ。

 「お前ら、少し目を潰れ。かの場所に力集まりて、輝き出せ【ライティング】」

 突然、漆黒の獣の前に魔法陣が現れる。
 そこから出てきたのは球体の何か。
 漆黒の獣はいきなり出たそれに驚き、警戒するように見てしまった。

 その球体は突然輝き出す。

 「キャイン」

 その輝きを見てしまった、漆黒の獣は突然の光にのたうち回る。

 フレアの指示によって、【ライティング】の光から逃げた楓とクレハは、次の行動にでた。

 「まずはあいつの動きを止めなくちゃ。敵を囲う木々たちよ。束縛せよ【ティムバー・リストリクションズ】」

 周りの木々が漆黒の化物を襲う。
 回復仕切っていない漆黒の獣は簡単に木々に束縛される。
 しかし……

 「GAAAAAAAAAAAAAA」

 バキバキという音がして、木々の束縛から抜け出した。
 そして、クレハに襲いかかる。
 鋭い爪がクレハを引き裂こうとしたとき、楓が間に入った。

 楓は、【ディメンションリング】から【インパクト・アブソープション・マークⅡ】を取り出し、相手の攻撃を防ぐ。

 「ガード!」

 【インパクト・アブソープション・マークⅡ】の衝撃エネルギー変換機能が作動する。
 漆黒の獣が振り下ろした、爪による攻撃から生まれる、衝撃はエネルギーに変換されて、盾が吸収する。
 しかし、この機能で吸収できるのは衝撃だけ。
 相手の爪の攻撃を完全に向こうにすることができない。

 漆黒の獣の爪により、盾がガリガリと音を立てる。

 「楓。ナイスよ。カノンのため、これで死んじゃいやよ。雷よ。降り注げ」

 楓がガードしたことにより、漆黒の獣と距離を取ったクレハが呪文を唱える。
 クレハの言葉で楓は後ろに下がる。

 「【サンダーボルト】」

 空に魔法陣が浮かび、空が輝き出す。

 バガーン!

 漆黒の獣に雷が落ちる。
 しかし、これだけで怯む漆黒の獣じゃない。

 黒焦げになりながら、真紅の瞳で楓たちを睨む。

 「援護魔法をかける。じっとしていろよ。閃光よ。その光により敵を惑わせ【エクレール・ミラージュ】」

 ほわっとした光が楓たち全員を包み込む。
 それ以外に効力があるように見えない。

 突然、漆黒の獣は何もないところを攻撃した。

 「【エクレール・ミラージュ】は光を使った幻影を見せる魔法だ。スキは作った。動きを止めろ!」

 フレアは叫ぶ。
 それに答えるかのように、楓とクレハが動き出す。

 「己の影に苦しみ、束縛されよ【シャドウ・リストリクションズ】」

 自称月光の魔女、万能型の魔女であるクレハが得意とする束縛魔法の一つ、【シャドウ・リストリクションズ】が炸裂する。

 漆黒の獣の影がゆらゆらと動きだし、漆黒の獣自身に襲いかかる。
 影が次第に絡みつき、束縛した。

 「楓、動きを止めたわ!」
 「ナイスタイミングだ」
 「次は、楓。おねがい!」

 楓は手袋型のカオティックアーツwを取り出す。
 相手に溜まった呪いのようなエネルギー。それを発散させるために作ったカオティックアーツ【インパクト】

 束縛されて動けない漆黒の獣に触れた。

 「あんたに溜まった汚いエネルギー。まとめて吹き飛ばすぞ。インパクト!」

 ドン、と漆黒の獣に衝撃が走る。
 それと同時に、黒く汚れたエネルギーが獣から勢いよく噴出する。
 それと同時に漆黒の獣の姿が変わる。
 金色の毛並み、金色の瞳をもつ獣【ライオネイラ】の姿に……
 どうやら、黒く変色したのは呪いによって溜まったエネルギーが原因らしい。

 「中のエネルギーは抜き取った。ティオ。お前が最後を決めろ!」
 「うん、任せて。お兄さん」

 ティオが弓矢を構える。
 ティオが使う矢は、この時のために作った特製品。
 クレハと楓が、エネルギーを発散させるためのカオティックアーツを作っている時に作った、聖呪痕を解呪するための【破魔の矢】。
 それを、金色の色にもどったカノンの親に向かって撃つ。

 その矢はカノンの親にある痣、聖呪痕を貫く。
 パリンと何かが崩れるような音がして、痣が次第に消えていった。

 カノンの親を無事に助けることが出来た。

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