悪役令嬢と百合の楽園
悪役令嬢と百合の楽園
「お前との婚約を破棄させてもらう」
突如言い渡されたその言葉に、わたしは呆然と立ち尽くすしかなかった。まるで胸の奥を抉られたような、そんな気持ちになる。悲しくて、ほろりと溢れる涙。それをみんなが嘲笑う。
ああ、わたしはどこで間違えたんだろう。いくら考えたところで、私には分からなかった。
******
ある日の昼のこと。私、アミア・フォン・レイルスフィンはお忍びで城下町を歩いていた。一応この国の宰相であるらしいお父様。だけどお家事情は全く知らず、わたしはただ、プラム王太子様に嫁いで王妃になるのですよと言われて育ってきた。
世間知らずな上に、家のことも全く知らないまま、ただ言われたことをこなしているだけの日々は退屈で、たまに家を抜け出していた。
民のことを知るのは、王妃になる私にとって必要なことよね、と心の中で言い訳をして、出店で売られている串焼きを一つ買う。
かなり行儀がわるけど、郷に入れば郷に従えというもの。周りの人達と同じように、直接口につけて頂く。
滴り落ちる肉汁で服が汚れないように、ちょっと齧っただけなのに、口の中で広がる肉の旨味がタレと絡まりあって、とても美味しい。いつも食べている上品な味わいの料理とはちょっと違う美味しさがここにあった。
わたしは思わず微笑んでしまう。なぜか私のことをチラチラ見る方たちがいたので、ちょっぴりドキッとした。
もしかして、私の正体がバレたのでしょうか。どうしましょう。無理やり家に連れ戻されるのは嫌だわ。
残りの串焼きを口の中に詰め込んで、わたしはその場から逃げようとする。
すると、いきなり後頭部に衝撃が走った。
勢いに負けてわたしは前に転んでしまう。体に擦り傷ができ、久しぶりの痛みを感じた。
だけどそれは些細なこと。わたしは後頭部の痛みである記憶が蘇ってきた。
それは、私が地球と呼ばれる世界の女子校生だった。ただ、ちょっと普通とは違う女の子だったみたい。
普通の女の子なら、友達を作って遊びに行ったり恋をしたり、勉強したりいろんなことをする。趣味としてBL漫画を書いている人もいれば、乙女ゲーにはまっている子もいたっけ。
そしてわたしは……ギャルゲーにハマっていた。
ギャルゲーは神だ。可愛らしい女の子とイチャイチャする奇跡のゲーム。ドキッとした恋愛イベントなんかもあって、ワクワクが止まらない。私にとって乙女ゲーなんて面白くもなんともない。男に言い寄られて何が楽しんだろう。逆ハー? は、笑わせるな。やるならハーレムだろう。
ただ、ギャルゲーにも納得できない部分がある。だってあれは主人公が男なんだもん。ほんと嫌だ。
ここまで言えばわかるだろう。わたしは同性愛者だ。俗にいうレズビアンってやつ。わたしは女の子が大好きだ!
好きで好きでたまらない。愛しているといっても過言ではない。
そんな私はなんかポックリ死んじゃったみたい。原因? 不明。思い出せる最後は下校中に忘れ物をしたことに気がついて振り向いたってところ。その後ブラックアウトして、今記憶が戻った。そんな感じ。完全に意味不明。わけがわからない。
そして、この世界、何かに似ていると思ったら、私が唯一やった乙女ゲーだ。
同類っぽい女の子に渡されたゲームだったからやってみたけど、下級貴族の主人公が平民から王族まで選り取りみどりな男どもに言い寄られるお話だった。実にくだらない。まぁ、貸してもらったわけだから、血の涙をながしながら全コンプしたけどね。
んで、もう一つ気がついたことがある。今の私はあのクソゲーの悪役令嬢というやつらしい。実に最悪だ。あいつは確か、エンディング前に国を追い出されたっけ。
どうしよう……結末が見える人生ってなんか最悪。
そこまで考えたところで、服を引っ張られた。私はふと振り向くと、小さな女の子が涙目上目遣いで私を見ていた。
「ごめんなちゃい……」
「ズッキューン、なんかきちゃいました!」
「ふぇ……」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。えっとどうしましたの」
「私が投げたボールが当たったので……」
そう言ってほろりと涙を流す女の子。きっと怒られると思っているんだろう。確かに、わたしの足元にボールが転がっている。うん、わたしの後頭部の衝撃はこれが当たったからか。
それにしても……この子、超可愛い。お持ち帰りしたーい。どうしよう、どうしよう。なんか泣きそう出し、とりあえず頭を撫でておこう。
私はそっと頭の上に手を当てて、優しく撫でた。腰を下ろし、少女と同じ視線に合わせて微笑んだ。
「ズッキューン、こんなかわいい女の子なら許しちゃうよ~」
「ふえ、ふえ?」
「もう、可愛いな~。もっと撫でちゃうぞ。うしうし」
「あわわわわわ~」
とまぁ、こんなことがありまして、私は女好きの心を取り戻した。
その後の人生はバラ色だった。可愛い女の子に囲まれた夢のような生活。ちょっとセクハラしたところで訴えられない。何だって私は大貴族だ。一応王太子のと婚約があるので、あまりひどいことはできないけど、それなりに好きにやっていた。
大きくなって、学園に入り、私は恋に落ちる。
相手はユーリアという下級貴族の娘で、前世の記憶から思い返すと、あの乙女ゲーの主人公!
なにあれ、めっちゃ可愛い。もうたまらん。私と結婚……だめだ、婚約破棄でもされな、じゃなくて、同性で結婚できる制度がない。
ガッチョビーン、この世界はなんて苦しい場所なんだ。
でも私はめげない。あの子にちょっかい出しまくろう。
そう思った後のわたしの行動は早かった。ちょっとした嫌がらせから始まり、どのルートに言っても恥をかかないようにさりげなくマナーを教え、ユーリアにいっぱい構った。ちょっと困った顔が可愛らしいと感じてしまい、段々やめられなくなる。
すると、変な噂が流れ始めた。
なんと、プラム王太子とユーリアがちょっといい感じになっているのが気に食わなくて、嫌がらせをしているとかなんとか。
ちくせう。私はそんな小さなことで嫌がらせをしているわけじゃない。ちゃんとあの子の将来を考えながらも、困った顔が拝めるよう気を使ってやっている。そこらへんを声を上げて言いたい。
というわけで、噂なんて気にせず続けていると、まぁ、あれに行き着くわけだ。
ーーそう、婚約破棄。
******
私は悲しくて、嗚咽を漏らし、項垂れる。私は知らなかった。真面目にやったことのないゲームだから忘れていることも多かったんだけど、まさかあの嫌がらせの数々がシナリオ通りだなんて……。
本当に胸をえぐられるような気分だ。
だって、プラム王太子の隣には……ユーリアがいるのだから。
クソ、私はどうして男に生まれられなった。私はただ、ユーリアを愛していただけなのに。
ほんと……一体どこで間違えた。
まさか、私がユーリアを好きになったのが間違いなのか。そうだったらこの世界を呪ってやる。絶対に私みたいな人種はいるはずだ。女の子が女の子を好きになって何が悪い。ひどいよこんなの……あんまりだ。
「今更後悔しても遅い。散々ユーリアに酷いことをし、貴族にあるまじき行為をした。婚約破棄は当然だろう。それに、貴族としての地位も剥奪。この国から出て行ってもらう」
「うう……ううう……」
大粒の涙を流し、床を濡らす。それを見た周りの貴族連中は笑う、笑う。欠陥品の馬鹿者と。わたしのお父様すら大きなため息を吐いて、軽蔑した眼差しを向ける。わたしの妹なんて、生理的嫌悪感が丸出しだ。
血縁者なんだから、ちょっとぐらい哀れんでもいいだろう。
貴族って結構ドライなんだな。もう私には関係ないけどさ……関係ない?
そうだ、わたしの本音をぶちまけよう。わたしの愛がユーリアに伝われば……状況は変わるはず!
「ユーリア、聞きなさい!」
「な、なんですか! アミア様」
「おい、アミア! またユーリアに何かするつもりか。往生際が悪いーーーー」
「こいつとの婚約破棄など、どうでもいい!」
私はプラム王太子を指差して言ってやった。この発言が意外だったらしく、周りがざわつく。くだらない雑魚どもを私は無視して、一番大切なユーリアを見つめた。
わたしの視線に気がついたのか、ビクッと体を震わして、涙目になる。
うう、私の心に訴えかける作戦か。なかなか成長したじゃない。だけど、私はそれぐらいではめげない!
「正直、私はあれとの婚約破棄されてとっても嬉しいわ。私には、ずっと好きな人がいたから。だけど……だけどあれとユーリアがくっつくのは許せない」
「な、なんでですか。私に散々嫌がらせをして、アミア様は私に一体何がしたいんですか。すっごく怖くて……辛くて……」
「しょ、しょうがないじゃない! 困った顔のあなたが可愛いんだもの! それに、あれは貴族として当たり前のことでしょう。あなたが恥をかかないように、それで言って困った顔をするようにやるのは大変だったんだから」
「……なんだその言い方は、ユーリアに対して無礼ーーーー」
「お前は黙れ、男が口を開くな!」
「なぁ!」
驚愕するプラム王太子。うわ、ざまぁ。
男なんてお呼びじゃないんだよ。さっきっから私とユーリアの間に割り込んで、邪魔ばっかり……これだから男は。
「ユーリア…………私は」
「アミア様……」
「私はあなたのことが好き、大好き。一目見た時から私はあなたに恋をしていた。だから私とーーーー」
「ごめんなさい」
「きゃうん、そんなユーリアも可愛いんだから」
うっはー、超可愛い。なんで一つ一つの動作が可愛いの。やんやん。
「あの~プラム王太子様……アミア様が……」
「ああ、とても気持ちわるいな」
「なんですと!」
「……このどうしようもないダメ人間を、即刻この国から追い出せ」
プラム王太子が憲兵に指示を出し、私は拘束される。ズルズルと引きずられて、あの場所から連れ出された。
え、まって、なんでこうなるの。しかも部屋から出すだけじゃない。
あ、このままだと城下町に……あ、いや、人に視線が、恥ずかしい、ガビョーン。
んで、私は一文無し、ザ・貴族様な服装で追い出されたとさ。
このあとどう生きればいいんだろう。うーん……そうだ!
私がユーリアを寝とればいいんじゃない。
だけど私ひとりだと無力。できることなんてたかがしれている。私には力が必要なんだ……。
よし、百合による百合のための楽園を、わたしの理想郷を作ろう!
こうして私は旅に出た。ただひとりの……わたしの大好きな人のために。いや、わたしのハーレムエンドのために!
このあと、私は世界を脅かす(繁殖的な意味で)魔王となって、世界を百合に染めていくんだけど、その話はまたどこかで。
突如言い渡されたその言葉に、わたしは呆然と立ち尽くすしかなかった。まるで胸の奥を抉られたような、そんな気持ちになる。悲しくて、ほろりと溢れる涙。それをみんなが嘲笑う。
ああ、わたしはどこで間違えたんだろう。いくら考えたところで、私には分からなかった。
******
ある日の昼のこと。私、アミア・フォン・レイルスフィンはお忍びで城下町を歩いていた。一応この国の宰相であるらしいお父様。だけどお家事情は全く知らず、わたしはただ、プラム王太子様に嫁いで王妃になるのですよと言われて育ってきた。
世間知らずな上に、家のことも全く知らないまま、ただ言われたことをこなしているだけの日々は退屈で、たまに家を抜け出していた。
民のことを知るのは、王妃になる私にとって必要なことよね、と心の中で言い訳をして、出店で売られている串焼きを一つ買う。
かなり行儀がわるけど、郷に入れば郷に従えというもの。周りの人達と同じように、直接口につけて頂く。
滴り落ちる肉汁で服が汚れないように、ちょっと齧っただけなのに、口の中で広がる肉の旨味がタレと絡まりあって、とても美味しい。いつも食べている上品な味わいの料理とはちょっと違う美味しさがここにあった。
わたしは思わず微笑んでしまう。なぜか私のことをチラチラ見る方たちがいたので、ちょっぴりドキッとした。
もしかして、私の正体がバレたのでしょうか。どうしましょう。無理やり家に連れ戻されるのは嫌だわ。
残りの串焼きを口の中に詰め込んで、わたしはその場から逃げようとする。
すると、いきなり後頭部に衝撃が走った。
勢いに負けてわたしは前に転んでしまう。体に擦り傷ができ、久しぶりの痛みを感じた。
だけどそれは些細なこと。わたしは後頭部の痛みである記憶が蘇ってきた。
それは、私が地球と呼ばれる世界の女子校生だった。ただ、ちょっと普通とは違う女の子だったみたい。
普通の女の子なら、友達を作って遊びに行ったり恋をしたり、勉強したりいろんなことをする。趣味としてBL漫画を書いている人もいれば、乙女ゲーにはまっている子もいたっけ。
そしてわたしは……ギャルゲーにハマっていた。
ギャルゲーは神だ。可愛らしい女の子とイチャイチャする奇跡のゲーム。ドキッとした恋愛イベントなんかもあって、ワクワクが止まらない。私にとって乙女ゲーなんて面白くもなんともない。男に言い寄られて何が楽しんだろう。逆ハー? は、笑わせるな。やるならハーレムだろう。
ただ、ギャルゲーにも納得できない部分がある。だってあれは主人公が男なんだもん。ほんと嫌だ。
ここまで言えばわかるだろう。わたしは同性愛者だ。俗にいうレズビアンってやつ。わたしは女の子が大好きだ!
好きで好きでたまらない。愛しているといっても過言ではない。
そんな私はなんかポックリ死んじゃったみたい。原因? 不明。思い出せる最後は下校中に忘れ物をしたことに気がついて振り向いたってところ。その後ブラックアウトして、今記憶が戻った。そんな感じ。完全に意味不明。わけがわからない。
そして、この世界、何かに似ていると思ったら、私が唯一やった乙女ゲーだ。
同類っぽい女の子に渡されたゲームだったからやってみたけど、下級貴族の主人公が平民から王族まで選り取りみどりな男どもに言い寄られるお話だった。実にくだらない。まぁ、貸してもらったわけだから、血の涙をながしながら全コンプしたけどね。
んで、もう一つ気がついたことがある。今の私はあのクソゲーの悪役令嬢というやつらしい。実に最悪だ。あいつは確か、エンディング前に国を追い出されたっけ。
どうしよう……結末が見える人生ってなんか最悪。
そこまで考えたところで、服を引っ張られた。私はふと振り向くと、小さな女の子が涙目上目遣いで私を見ていた。
「ごめんなちゃい……」
「ズッキューン、なんかきちゃいました!」
「ふぇ……」
「あ、いえ、なんでもありませんわ。えっとどうしましたの」
「私が投げたボールが当たったので……」
そう言ってほろりと涙を流す女の子。きっと怒られると思っているんだろう。確かに、わたしの足元にボールが転がっている。うん、わたしの後頭部の衝撃はこれが当たったからか。
それにしても……この子、超可愛い。お持ち帰りしたーい。どうしよう、どうしよう。なんか泣きそう出し、とりあえず頭を撫でておこう。
私はそっと頭の上に手を当てて、優しく撫でた。腰を下ろし、少女と同じ視線に合わせて微笑んだ。
「ズッキューン、こんなかわいい女の子なら許しちゃうよ~」
「ふえ、ふえ?」
「もう、可愛いな~。もっと撫でちゃうぞ。うしうし」
「あわわわわわ~」
とまぁ、こんなことがありまして、私は女好きの心を取り戻した。
その後の人生はバラ色だった。可愛い女の子に囲まれた夢のような生活。ちょっとセクハラしたところで訴えられない。何だって私は大貴族だ。一応王太子のと婚約があるので、あまりひどいことはできないけど、それなりに好きにやっていた。
大きくなって、学園に入り、私は恋に落ちる。
相手はユーリアという下級貴族の娘で、前世の記憶から思い返すと、あの乙女ゲーの主人公!
なにあれ、めっちゃ可愛い。もうたまらん。私と結婚……だめだ、婚約破棄でもされな、じゃなくて、同性で結婚できる制度がない。
ガッチョビーン、この世界はなんて苦しい場所なんだ。
でも私はめげない。あの子にちょっかい出しまくろう。
そう思った後のわたしの行動は早かった。ちょっとした嫌がらせから始まり、どのルートに言っても恥をかかないようにさりげなくマナーを教え、ユーリアにいっぱい構った。ちょっと困った顔が可愛らしいと感じてしまい、段々やめられなくなる。
すると、変な噂が流れ始めた。
なんと、プラム王太子とユーリアがちょっといい感じになっているのが気に食わなくて、嫌がらせをしているとかなんとか。
ちくせう。私はそんな小さなことで嫌がらせをしているわけじゃない。ちゃんとあの子の将来を考えながらも、困った顔が拝めるよう気を使ってやっている。そこらへんを声を上げて言いたい。
というわけで、噂なんて気にせず続けていると、まぁ、あれに行き着くわけだ。
ーーそう、婚約破棄。
******
私は悲しくて、嗚咽を漏らし、項垂れる。私は知らなかった。真面目にやったことのないゲームだから忘れていることも多かったんだけど、まさかあの嫌がらせの数々がシナリオ通りだなんて……。
本当に胸をえぐられるような気分だ。
だって、プラム王太子の隣には……ユーリアがいるのだから。
クソ、私はどうして男に生まれられなった。私はただ、ユーリアを愛していただけなのに。
ほんと……一体どこで間違えた。
まさか、私がユーリアを好きになったのが間違いなのか。そうだったらこの世界を呪ってやる。絶対に私みたいな人種はいるはずだ。女の子が女の子を好きになって何が悪い。ひどいよこんなの……あんまりだ。
「今更後悔しても遅い。散々ユーリアに酷いことをし、貴族にあるまじき行為をした。婚約破棄は当然だろう。それに、貴族としての地位も剥奪。この国から出て行ってもらう」
「うう……ううう……」
大粒の涙を流し、床を濡らす。それを見た周りの貴族連中は笑う、笑う。欠陥品の馬鹿者と。わたしのお父様すら大きなため息を吐いて、軽蔑した眼差しを向ける。わたしの妹なんて、生理的嫌悪感が丸出しだ。
血縁者なんだから、ちょっとぐらい哀れんでもいいだろう。
貴族って結構ドライなんだな。もう私には関係ないけどさ……関係ない?
そうだ、わたしの本音をぶちまけよう。わたしの愛がユーリアに伝われば……状況は変わるはず!
「ユーリア、聞きなさい!」
「な、なんですか! アミア様」
「おい、アミア! またユーリアに何かするつもりか。往生際が悪いーーーー」
「こいつとの婚約破棄など、どうでもいい!」
私はプラム王太子を指差して言ってやった。この発言が意外だったらしく、周りがざわつく。くだらない雑魚どもを私は無視して、一番大切なユーリアを見つめた。
わたしの視線に気がついたのか、ビクッと体を震わして、涙目になる。
うう、私の心に訴えかける作戦か。なかなか成長したじゃない。だけど、私はそれぐらいではめげない!
「正直、私はあれとの婚約破棄されてとっても嬉しいわ。私には、ずっと好きな人がいたから。だけど……だけどあれとユーリアがくっつくのは許せない」
「な、なんでですか。私に散々嫌がらせをして、アミア様は私に一体何がしたいんですか。すっごく怖くて……辛くて……」
「しょ、しょうがないじゃない! 困った顔のあなたが可愛いんだもの! それに、あれは貴族として当たり前のことでしょう。あなたが恥をかかないように、それで言って困った顔をするようにやるのは大変だったんだから」
「……なんだその言い方は、ユーリアに対して無礼ーーーー」
「お前は黙れ、男が口を開くな!」
「なぁ!」
驚愕するプラム王太子。うわ、ざまぁ。
男なんてお呼びじゃないんだよ。さっきっから私とユーリアの間に割り込んで、邪魔ばっかり……これだから男は。
「ユーリア…………私は」
「アミア様……」
「私はあなたのことが好き、大好き。一目見た時から私はあなたに恋をしていた。だから私とーーーー」
「ごめんなさい」
「きゃうん、そんなユーリアも可愛いんだから」
うっはー、超可愛い。なんで一つ一つの動作が可愛いの。やんやん。
「あの~プラム王太子様……アミア様が……」
「ああ、とても気持ちわるいな」
「なんですと!」
「……このどうしようもないダメ人間を、即刻この国から追い出せ」
プラム王太子が憲兵に指示を出し、私は拘束される。ズルズルと引きずられて、あの場所から連れ出された。
え、まって、なんでこうなるの。しかも部屋から出すだけじゃない。
あ、このままだと城下町に……あ、いや、人に視線が、恥ずかしい、ガビョーン。
んで、私は一文無し、ザ・貴族様な服装で追い出されたとさ。
このあとどう生きればいいんだろう。うーん……そうだ!
私がユーリアを寝とればいいんじゃない。
だけど私ひとりだと無力。できることなんてたかがしれている。私には力が必要なんだ……。
よし、百合による百合のための楽園を、わたしの理想郷を作ろう!
こうして私は旅に出た。ただひとりの……わたしの大好きな人のために。いや、わたしのハーレムエンドのために!
このあと、私は世界を脅かす(繁殖的な意味で)魔王となって、世界を百合に染めていくんだけど、その話はまたどこかで。
コメント