喫茶店リーベルの五人姉妹+1
第八話『水紋に弟子入りってこれなんなの?……中編』
あれから二人に色々話していると、態度が豹変した。変わりすぎて僕もびっくりしているよ。どれぐらい変わったかっていうと、こんな感じかな。
「水紋さん、マジパネェーっす」
「ほんと、ほんと、どうしたらそんなパネェー存在になれるんですか。私もそんな風になりたーい」
さっきっからパネェーを連呼し続ける、秋山さんと遠野さん。まるで壊れた人形のように同じ言葉を繰り返す。
僕が話した内容なんて、大したことはない。ただ菜乃華のために作っているお弁当の話とか、ほつれた服を直したとか、自分でデザインした服を作ったとか、そんな感じ。
書店で参考になりそうな本を買えば誰だってできるレベルの内容なんだけど。
どうしてこんなに讃頌されているんだろう。
「菜乃華……」
「ごめん水紋。ウチに振らないで。こんなことになるなんて予想外すぎてなんも言えねぇ」
「菜乃華がそこまで言うんだったら仕方ないのかな?」
さてさて、僕はこの二人をどうすればいいんだろうか。なんかテンションMAXの興奮状態にあるんだけど。あまり関わりたくないし、早く帰りたくなってきた。でも菜乃華も困り果てた表情をしている。友達を放ておくことなんてできないけど、相手にするのがめんどくさい的な感じ。
僕は二人と友達でもなんでもないからな。部外者なので立ち去りたい。
こっそり帰っていいかな?
あ、菜乃華にバレて睨まれた。怖! とても女の子がする表情じゃない。これは帰してくれそうに無いかも。
「ねぇ、望愛」
「うん、私も同じこと考えているよ」
「そうね、私たちに希望を与えてくれる女神が降臨したんだから」
「やれることをやるっきゃないよね」
なんかいやなフラグが立った気がする。このあとの展開、なんか見えてきたな。女子力向上委員会とか立ち上げられて、色々教えて的なことになりそう。あ、この内容は百合さんから借りた漫画の内容そのままだ。
あるはずないっか。
そんなことを一瞬だけでも思ったのが馬鹿だった。あるはずないわけがない。
秋山さんと遠野さんは全く同じタイミングで膝を地面につける。深く頭を下げて手を地面につけた。
俗に言う土下座というやつ。
「「私を弟子にしてください!」」
「え、なんで……」
「私たちに浮いた話がないっていうのは知っているよね」
「その原因は壊滅的な女子力にあると思うんだよぉ」
「「そこで、私に女子力を伝授していただきたく……」
「え、嫌だけど……」
「そこをなんとかお願いしますよ、水紋様」
「肩、肩揉みますから。なんならそれ以上のことをしてもいいですから!」
「ちょ、秋山さん! いきなり足を掴んでこないでよ。あと様とかで呼ばないで! 遠野さんもいきなり肩揉まないでよ! てかなんなの、それ以上のことって!」
「水紋……」
菜乃華が呆れた感じに見つめてくる。こう、漫画とかで言うジト目ってやつだ。若干怒っているような気がする。
「ちょ、菜乃華! なんでそんな目で見るのさ。僕は何もしていないよ。てか助けてよ!」
「この変態……近寄るな! ウチの気持ちも考えずベタベタと……鬼畜娘め!」
「一体何を言っているの。それに僕は娘じゃない。男だ!」
「あんたはウチたちのおもちゃなのに……」
「その表現は間違っている!」
菜乃華までなんだよ。助けてくれたっていいじゃないか。僕が女の子にあれやこれやされて、抵抗できないので不甲斐ないところはあるけどさ。それにおもちゃってなんだよ、こんちくしょう。
「ほら二人共、そろそろやめなさい。水紋の弟子になるなら、まずウチの許可を取るのが筋ってもんでしょう」
「「それはたしかに!」」
「いや、なんでだよ」
「ふっふ~ん、まずは水紋師匠って呼ぶことを許可しようかしら」
「「わかったわ、菜乃華!」」
「僕の意思は何処へ……」
「そんなもの、水紋にはない」
「そ、そんな~~~~~」
そういうわけで、僕にふたりの弟子ができました。と言って、菜乃華が勝手に言い出したことなんだけどね。そもそも女子力向上ってどうすればいいんだよ。
僕は男だし、女子力なんてなんにもないはずなんだけど……。
「とりあえず、ウチがすべてまとめるから、あんたは教えることだけ考えなさい」
「それより僕は止めて欲しかったんだけど。なんで菜乃華は許可しちゃうのさ」
「だってそのほうが面白そうだし……。今度のネタに使わせてもらうわ」
「さいですか……」
「とりあえず、帰りましょうか。女子力向上のために、まずは料理でもしましょう」
「そんじゃ、リーベルのキッチンを使えばいいか」
「そういうこと。二人共、一緒に行くわよ」
「「サー・イエス・サー」」
そんなわけで、僕たちは安らぎを与えてくれる喫茶店リーベルに向かうことになった。僕と菜乃華の場合は家に帰るだけだから、そんな大それたことじゃないんだけどね。
◇
「第一回、女子力向上委員会料理教室!」
「「わ~」」パチパチ。
うわぁ、やる気しない。拳を握り締めて気合を入れている秋山さんと遠野さん。それを面白おかしく見ている菜乃華。扉の向こうで赤まむしを握り締めている真麻ちゃん。
そして、料理を教えることになった僕という謎の集まりが完成した。
特に真麻ちゃん。あれは怖い。絶対に赤まむしを投入してこようとしている。それに扉の影からニタァとしているところがかなり怖いんだけど!
「あの、水紋師匠。私のことは美香と及びくださいませ」
「あ、そうだよね。私のことも望愛って呼んでください、水紋師匠」
「ったく、不本意ながら了承するよ。そうしないと……菜乃華に何をされるかわからないからね」
「ちょっとまって、ウチに何されるって思っているの?」
「それは……その……赤まむし的な?」
「あああ、赤まむしって、あんた一体何を考えているのよ!」
菜乃華がよくわからない叫びを上げると、ギィーっと音を立てて扉が開く。なんでそんな音がするのか意味不明だけどね。
扉の奥からは、さっきっからこっちをずっと見ていた真麻ちゃんがてとてと近づいてきた。
「はいこれ、赤まむし!」
「あ、うん。ありがとう」
「へへ、これで頑張ってね。菜乃華お姉様もきっと喜ぶから」
「え、何を!」
「それは……えへへへへへ」
「笑ってごまかさないでよ!」
渡したいものを渡して満足したのか、真麻ちゃんは意味深な言葉を言い残して自分の部屋に戻って行った。
手に残されたのはあやしげな光沢をしている赤まむし。
そして頬を真っ赤に染めて膨らませる菜乃華がいた。
「この、馬鹿ァァァァっァ」
「なんでーーぶへぇ」
菜乃華に殴られる。ここはキッチン。かなり危ない。なんとか踏ん張って耐えた僕ってかなり偉いと思う。それはそうととっても痛いな。菜乃華のやつ、思いっきり殴りやがって。
「ったく、馬鹿水紋。変態はこれだから嫌なのよ」
「僕はなんにもしていないじゃないか!」
「赤まむしを手にもって何を言うんだか」
「赤まむしは精力剤だけど、変な効果なんてないかんね!」
「なんであんたがそんなこと知っているのよ」
「真麻ちゃんからいっぱい聞かされたからね。覚えるほどに……」
「あの子、どっからそんなこと調べてくるのよ」
「将来が不安……」
「たしかに……」
「ここは手を取り合いましょうか」
「そうだね。喧嘩しても仕方ないし、何より真麻ちゃんをまともな女の子にしないといけない」
僕と菜乃華は手を取り合い、熱い握手をする。
それを暖かい眼差しで見つめる二人がいた。もちろん、美香と望愛だね。そして、こんなことを言われてしまった。
「「すでに子持ちだったんだ……」」
「「ちゃうからね!」」
とりあえず、いつになったら料理教室が始まるんだろう……。
「水紋さん、マジパネェーっす」
「ほんと、ほんと、どうしたらそんなパネェー存在になれるんですか。私もそんな風になりたーい」
さっきっからパネェーを連呼し続ける、秋山さんと遠野さん。まるで壊れた人形のように同じ言葉を繰り返す。
僕が話した内容なんて、大したことはない。ただ菜乃華のために作っているお弁当の話とか、ほつれた服を直したとか、自分でデザインした服を作ったとか、そんな感じ。
書店で参考になりそうな本を買えば誰だってできるレベルの内容なんだけど。
どうしてこんなに讃頌されているんだろう。
「菜乃華……」
「ごめん水紋。ウチに振らないで。こんなことになるなんて予想外すぎてなんも言えねぇ」
「菜乃華がそこまで言うんだったら仕方ないのかな?」
さてさて、僕はこの二人をどうすればいいんだろうか。なんかテンションMAXの興奮状態にあるんだけど。あまり関わりたくないし、早く帰りたくなってきた。でも菜乃華も困り果てた表情をしている。友達を放ておくことなんてできないけど、相手にするのがめんどくさい的な感じ。
僕は二人と友達でもなんでもないからな。部外者なので立ち去りたい。
こっそり帰っていいかな?
あ、菜乃華にバレて睨まれた。怖! とても女の子がする表情じゃない。これは帰してくれそうに無いかも。
「ねぇ、望愛」
「うん、私も同じこと考えているよ」
「そうね、私たちに希望を与えてくれる女神が降臨したんだから」
「やれることをやるっきゃないよね」
なんかいやなフラグが立った気がする。このあとの展開、なんか見えてきたな。女子力向上委員会とか立ち上げられて、色々教えて的なことになりそう。あ、この内容は百合さんから借りた漫画の内容そのままだ。
あるはずないっか。
そんなことを一瞬だけでも思ったのが馬鹿だった。あるはずないわけがない。
秋山さんと遠野さんは全く同じタイミングで膝を地面につける。深く頭を下げて手を地面につけた。
俗に言う土下座というやつ。
「「私を弟子にしてください!」」
「え、なんで……」
「私たちに浮いた話がないっていうのは知っているよね」
「その原因は壊滅的な女子力にあると思うんだよぉ」
「「そこで、私に女子力を伝授していただきたく……」
「え、嫌だけど……」
「そこをなんとかお願いしますよ、水紋様」
「肩、肩揉みますから。なんならそれ以上のことをしてもいいですから!」
「ちょ、秋山さん! いきなり足を掴んでこないでよ。あと様とかで呼ばないで! 遠野さんもいきなり肩揉まないでよ! てかなんなの、それ以上のことって!」
「水紋……」
菜乃華が呆れた感じに見つめてくる。こう、漫画とかで言うジト目ってやつだ。若干怒っているような気がする。
「ちょ、菜乃華! なんでそんな目で見るのさ。僕は何もしていないよ。てか助けてよ!」
「この変態……近寄るな! ウチの気持ちも考えずベタベタと……鬼畜娘め!」
「一体何を言っているの。それに僕は娘じゃない。男だ!」
「あんたはウチたちのおもちゃなのに……」
「その表現は間違っている!」
菜乃華までなんだよ。助けてくれたっていいじゃないか。僕が女の子にあれやこれやされて、抵抗できないので不甲斐ないところはあるけどさ。それにおもちゃってなんだよ、こんちくしょう。
「ほら二人共、そろそろやめなさい。水紋の弟子になるなら、まずウチの許可を取るのが筋ってもんでしょう」
「「それはたしかに!」」
「いや、なんでだよ」
「ふっふ~ん、まずは水紋師匠って呼ぶことを許可しようかしら」
「「わかったわ、菜乃華!」」
「僕の意思は何処へ……」
「そんなもの、水紋にはない」
「そ、そんな~~~~~」
そういうわけで、僕にふたりの弟子ができました。と言って、菜乃華が勝手に言い出したことなんだけどね。そもそも女子力向上ってどうすればいいんだよ。
僕は男だし、女子力なんてなんにもないはずなんだけど……。
「とりあえず、ウチがすべてまとめるから、あんたは教えることだけ考えなさい」
「それより僕は止めて欲しかったんだけど。なんで菜乃華は許可しちゃうのさ」
「だってそのほうが面白そうだし……。今度のネタに使わせてもらうわ」
「さいですか……」
「とりあえず、帰りましょうか。女子力向上のために、まずは料理でもしましょう」
「そんじゃ、リーベルのキッチンを使えばいいか」
「そういうこと。二人共、一緒に行くわよ」
「「サー・イエス・サー」」
そんなわけで、僕たちは安らぎを与えてくれる喫茶店リーベルに向かうことになった。僕と菜乃華の場合は家に帰るだけだから、そんな大それたことじゃないんだけどね。
◇
「第一回、女子力向上委員会料理教室!」
「「わ~」」パチパチ。
うわぁ、やる気しない。拳を握り締めて気合を入れている秋山さんと遠野さん。それを面白おかしく見ている菜乃華。扉の向こうで赤まむしを握り締めている真麻ちゃん。
そして、料理を教えることになった僕という謎の集まりが完成した。
特に真麻ちゃん。あれは怖い。絶対に赤まむしを投入してこようとしている。それに扉の影からニタァとしているところがかなり怖いんだけど!
「あの、水紋師匠。私のことは美香と及びくださいませ」
「あ、そうだよね。私のことも望愛って呼んでください、水紋師匠」
「ったく、不本意ながら了承するよ。そうしないと……菜乃華に何をされるかわからないからね」
「ちょっとまって、ウチに何されるって思っているの?」
「それは……その……赤まむし的な?」
「あああ、赤まむしって、あんた一体何を考えているのよ!」
菜乃華がよくわからない叫びを上げると、ギィーっと音を立てて扉が開く。なんでそんな音がするのか意味不明だけどね。
扉の奥からは、さっきっからこっちをずっと見ていた真麻ちゃんがてとてと近づいてきた。
「はいこれ、赤まむし!」
「あ、うん。ありがとう」
「へへ、これで頑張ってね。菜乃華お姉様もきっと喜ぶから」
「え、何を!」
「それは……えへへへへへ」
「笑ってごまかさないでよ!」
渡したいものを渡して満足したのか、真麻ちゃんは意味深な言葉を言い残して自分の部屋に戻って行った。
手に残されたのはあやしげな光沢をしている赤まむし。
そして頬を真っ赤に染めて膨らませる菜乃華がいた。
「この、馬鹿ァァァァっァ」
「なんでーーぶへぇ」
菜乃華に殴られる。ここはキッチン。かなり危ない。なんとか踏ん張って耐えた僕ってかなり偉いと思う。それはそうととっても痛いな。菜乃華のやつ、思いっきり殴りやがって。
「ったく、馬鹿水紋。変態はこれだから嫌なのよ」
「僕はなんにもしていないじゃないか!」
「赤まむしを手にもって何を言うんだか」
「赤まむしは精力剤だけど、変な効果なんてないかんね!」
「なんであんたがそんなこと知っているのよ」
「真麻ちゃんからいっぱい聞かされたからね。覚えるほどに……」
「あの子、どっからそんなこと調べてくるのよ」
「将来が不安……」
「たしかに……」
「ここは手を取り合いましょうか」
「そうだね。喧嘩しても仕方ないし、何より真麻ちゃんをまともな女の子にしないといけない」
僕と菜乃華は手を取り合い、熱い握手をする。
それを暖かい眼差しで見つめる二人がいた。もちろん、美香と望愛だね。そして、こんなことを言われてしまった。
「「すでに子持ちだったんだ……」」
「「ちゃうからね!」」
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