太陽を守った化物
第十三話~美味しい飲み物には秘密がある~
「ただまー! やってやったぜ! キャハハハハハハ」
「ねぇ、一番やられていたはずのルーイエがなんでこんなに元気なのかしら」
「パルミナ……。それを私に振らないで」
ニーズとの騒動を終えたハクレイたちは、バッソたちが待つ宿に戻った。
ただ、ルーイエが元気すぎた。腕と足を裂かれて死にかけていたはずなのに、三人の中で一番元気だ。
しかも、いつも以上にテンションが高い。何がルーイエをそうさせるのか。
ハクレイは元気なルーイエを見てちょっとばかし震えている。なんだか、かわいそうな雰囲気を漂わせ始めた。それに気がついているパルミナはハクレイを励ましつつ、現状に呆れていた。
バッソたちは、なぜか疲れきっているパルミナとハクレイ、そして元気なルーイエに一体何があったのか! と思いつつも話を始めることにする。
「クソったれども。死龍会はどうなった」
「見逃してもらった。あいつ、結構いいやつ!」
「そうね。ハクレイの言う通りだったよ。頭おかしかったけど。頭おかしかったけど!」
「あいつは私のライバルになりそうなんだよな。私は負けないぜ! ハクレイちゃんを…………絶対に落とす! ハクレイちゃん一筋に……私はなる!」
「ルーイエ、死ねばいいのに……」
「なぜ!」
通常通りの三人に、バッソは呆れてため息を吐く。バカ騒ぎするルーイエにゲンコツを食らわせて、今後の作戦について話し始めた。
「明日、リーナスの糞どもを消しに行く。基本的な作戦は、敵の警備を抹殺する陽動部隊と本陣を抹殺する襲撃部隊に分ける。襲撃するのは、ハクレイとパルミナ。お前らだ」
「…………抹殺するのに陽動?」
「しっ! 突っ込んじゃダメ。いつものことだから」
「おい、聞こえてんぞ、白いのと爆発娘。てめぇらから始末してやろうか、あぁ」
「「ひぇ!」」
「怯えるなら最初っから言わなければいいのに。馬鹿っすね」
「んもう! バッソ隊長に睨みつけられて、羨ましいわ~」
「デル! てめぇ、気色悪いんだよ、クソッタレ!」
バッソに睨みつけられて嬉しそうにするデル。グランディは、気色悪いと思いつつも、作戦内容はハクレイたちが戻ってくる前に教えられているので、ハゲもといい、デルを連れて部屋から出た。
ホモなデルがいたら、話が進まなくなるという判断からだろう。
「うぜぇのはいなくなった。話の続きだ。といっても大体のことは言ったがな。俺とグランディ、デル、ルーイエであの家にいる邪魔者を全て排除する。その間に……いや、これを言う前にハクレイには飲んでもらいたいものがある」
そう言ってバッソが取り出したものは、透明な液体のはいった瓶だった。どう見ても水のようにしか見えないものなのだが、これを飲んだからなんなのか、ハクレイはよく分からずに首をかしげる。
とりあえず受け取って、瓶の蓋を開けて匂いを嗅いでみた。だけどなんにも感じない。怪しいところが何もない透明な液体。
バッソは本当に何がしたいのだろうか。
ハクレイはよくわからないなーと思いながら、とりあえずそれを飲んでみた。
「ーーっ! なにこれ……っ! 口に入れた瞬間にぴりっとしたような、しゅわっとしたような、変な感触! それに、水のように味がしないと思っていたのに、ほんのりと甘いような酸っぱいような。なんだろう。すごく美味しい!」
「そ、そうか……」
バッソの微妙な表情に首をかしげながらも、美味しい謎の液体を飲み干した。
これは、間違いなく売れる。獣の直感がそう告げていた。
まだ飲み足りないなーと思うハクレイは、バッソにおかわりを要求する。
微妙な顔をしながら、ハクレイに新しい謎の飲み物を渡す。
それをハクレイは美味しそうに口に含んだ。
「……ハクレイ、何も異常はないか?」
ハクレイは透明な液体を口に含みながらコクコクと頷く。
「…………まさか、本当にパルミナの毒を飲み干すなんて。しかもおかわりまでするなんて予想外すぎる……」
「ぶふぉ」
「うお、きたねぇ」
ハクレイは吹いた。それはもう盛大に吹いた。それはそうだろう。美味しいなと飲んでいたものがまさかの毒だったとは。
だけど、それ以上に騒ぐ奴らがいた。
もちろんだが、パルミナだ。
「ちょ、ちょっとバッソ隊長! ハクレイに何飲ませているのよ! それって私の体液ってことになるじゃない! 体液以外に普通に分泌できるけど……私が分泌した記憶なんてないし……。一体誰が……っ!」
「へへ、へへへ。寝ている間にちょっと」
「ルーイエ……っ! 貴様か!」
「ちょ、ごめんってば、パルミナ! って、首は、ぐええええ」
「許すもんか! ぶっ殺してやる!」
せっかくニーズから生きて帰れたのに、死にそうになっているルーイエ。実に哀れだ。
そんな騒がしい二人とは違い、ハクレイとバッソは静かに睨み合う。というより、ハクレイが一方的に睨みつけて、バッソは「ちょっとやりすぎたか……」といった感じに、手を頭の後ろにやり、ぽりぽりとかいた。
「……なんで毒?」
「おい、その人の殺せそうな睨みをやめろ。クソッタレ」
「…………なんで毒?」
「いい加減にーー」
「…………なんで毒?」
「…………その、悪い」
「ん? わかった。だからなんで毒?」
ハクレイの怒りにバッソは多少狼狽えている。少し、隊長としての威厳とかを失いそうな雰囲気がある。それでもバッソは、偉そうにしながらハクレイに向かってこう言った。
「このあとの任務では、お前とパルミナで組んでもらう。だが爆発でどうこうしてもらうつもりはない。毒殺でターゲットを殺してもらうことになるんだが、その間にパルミナが襲われちまえば、ひとたまりもねぇ。だから毒を撒き散らしても対応できるようにハクレイ、てめぇがパルミナを守ってやれ。今回はそういう作戦だ。だが、パルミナが毒を撒き散らすってことは、守っているやつも毒に侵される。毒に耐性を持つやつじゃないといけねぇから試した。悪いか!」
「いや、だからって飲ませる必要は……」
「ある!」
「う、うん。わかった。バッソ隊長」
バッソの迫力に負けたハクレイは渋々納得する。
「死ね! 変態は死ね!」
「あ、それヤバイやつ! ああああああああああああああ」
パルミナから紫色の怪しげな粉のようなものがぱらぱらと落ちていく。ルーイエの顔に。
それを直で浴びたルーイエは、口では言い表せないような危ない表情をしながらビクンビクン跳ねていた。
二人はたのしそうだなーと、ハクレイは思う。だけどこれは間違いだ。二人は絶対に楽しんでいない。
「おい、パルミナ! そのへんにしとけ」
「いくらバッソ隊長が言ったって無駄、絶対にやめない! ルーイエのあとはバッソ隊長にも毒を食らわせてやる! 寝ている間に体液を奪わせるってどんな変態ですか!」
瞳に大粒の涙を浮かべ、わめき散らす被害者の肩を、ハクレイがそっと叩く。
「パルミナ……。大丈夫、辛いのは最初だけ」
「な、なんか慰められた!」
「大丈夫、辛いのは最初だーー」
「二度は言わなくていい……。ハクレイはいつもパルミナにちょっかい出されてるものね。ハクレイも苦労しているんだ。ルーイエに何かされたら言いなさい! 私の毒で死ぬより辛い目に合わせるあらさ」
「ん、お互いに頑張ろ」
ちなみにルーイエはパルミナとハクレイに踏みつけられながら、毒でモザイク必須な状態になっている。毒による細胞破壊と触手のちからによる再生で、はっきり言って気持ち悪い感じだ。これにはバッソも笑うしかない。
「これ……明日の作戦は大丈夫なのかよ」
ことの原因を作ったバッソには引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。
「ねぇ、一番やられていたはずのルーイエがなんでこんなに元気なのかしら」
「パルミナ……。それを私に振らないで」
ニーズとの騒動を終えたハクレイたちは、バッソたちが待つ宿に戻った。
ただ、ルーイエが元気すぎた。腕と足を裂かれて死にかけていたはずなのに、三人の中で一番元気だ。
しかも、いつも以上にテンションが高い。何がルーイエをそうさせるのか。
ハクレイは元気なルーイエを見てちょっとばかし震えている。なんだか、かわいそうな雰囲気を漂わせ始めた。それに気がついているパルミナはハクレイを励ましつつ、現状に呆れていた。
バッソたちは、なぜか疲れきっているパルミナとハクレイ、そして元気なルーイエに一体何があったのか! と思いつつも話を始めることにする。
「クソったれども。死龍会はどうなった」
「見逃してもらった。あいつ、結構いいやつ!」
「そうね。ハクレイの言う通りだったよ。頭おかしかったけど。頭おかしかったけど!」
「あいつは私のライバルになりそうなんだよな。私は負けないぜ! ハクレイちゃんを…………絶対に落とす! ハクレイちゃん一筋に……私はなる!」
「ルーイエ、死ねばいいのに……」
「なぜ!」
通常通りの三人に、バッソは呆れてため息を吐く。バカ騒ぎするルーイエにゲンコツを食らわせて、今後の作戦について話し始めた。
「明日、リーナスの糞どもを消しに行く。基本的な作戦は、敵の警備を抹殺する陽動部隊と本陣を抹殺する襲撃部隊に分ける。襲撃するのは、ハクレイとパルミナ。お前らだ」
「…………抹殺するのに陽動?」
「しっ! 突っ込んじゃダメ。いつものことだから」
「おい、聞こえてんぞ、白いのと爆発娘。てめぇらから始末してやろうか、あぁ」
「「ひぇ!」」
「怯えるなら最初っから言わなければいいのに。馬鹿っすね」
「んもう! バッソ隊長に睨みつけられて、羨ましいわ~」
「デル! てめぇ、気色悪いんだよ、クソッタレ!」
バッソに睨みつけられて嬉しそうにするデル。グランディは、気色悪いと思いつつも、作戦内容はハクレイたちが戻ってくる前に教えられているので、ハゲもといい、デルを連れて部屋から出た。
ホモなデルがいたら、話が進まなくなるという判断からだろう。
「うぜぇのはいなくなった。話の続きだ。といっても大体のことは言ったがな。俺とグランディ、デル、ルーイエであの家にいる邪魔者を全て排除する。その間に……いや、これを言う前にハクレイには飲んでもらいたいものがある」
そう言ってバッソが取り出したものは、透明な液体のはいった瓶だった。どう見ても水のようにしか見えないものなのだが、これを飲んだからなんなのか、ハクレイはよく分からずに首をかしげる。
とりあえず受け取って、瓶の蓋を開けて匂いを嗅いでみた。だけどなんにも感じない。怪しいところが何もない透明な液体。
バッソは本当に何がしたいのだろうか。
ハクレイはよくわからないなーと思いながら、とりあえずそれを飲んでみた。
「ーーっ! なにこれ……っ! 口に入れた瞬間にぴりっとしたような、しゅわっとしたような、変な感触! それに、水のように味がしないと思っていたのに、ほんのりと甘いような酸っぱいような。なんだろう。すごく美味しい!」
「そ、そうか……」
バッソの微妙な表情に首をかしげながらも、美味しい謎の液体を飲み干した。
これは、間違いなく売れる。獣の直感がそう告げていた。
まだ飲み足りないなーと思うハクレイは、バッソにおかわりを要求する。
微妙な顔をしながら、ハクレイに新しい謎の飲み物を渡す。
それをハクレイは美味しそうに口に含んだ。
「……ハクレイ、何も異常はないか?」
ハクレイは透明な液体を口に含みながらコクコクと頷く。
「…………まさか、本当にパルミナの毒を飲み干すなんて。しかもおかわりまでするなんて予想外すぎる……」
「ぶふぉ」
「うお、きたねぇ」
ハクレイは吹いた。それはもう盛大に吹いた。それはそうだろう。美味しいなと飲んでいたものがまさかの毒だったとは。
だけど、それ以上に騒ぐ奴らがいた。
もちろんだが、パルミナだ。
「ちょ、ちょっとバッソ隊長! ハクレイに何飲ませているのよ! それって私の体液ってことになるじゃない! 体液以外に普通に分泌できるけど……私が分泌した記憶なんてないし……。一体誰が……っ!」
「へへ、へへへ。寝ている間にちょっと」
「ルーイエ……っ! 貴様か!」
「ちょ、ごめんってば、パルミナ! って、首は、ぐええええ」
「許すもんか! ぶっ殺してやる!」
せっかくニーズから生きて帰れたのに、死にそうになっているルーイエ。実に哀れだ。
そんな騒がしい二人とは違い、ハクレイとバッソは静かに睨み合う。というより、ハクレイが一方的に睨みつけて、バッソは「ちょっとやりすぎたか……」といった感じに、手を頭の後ろにやり、ぽりぽりとかいた。
「……なんで毒?」
「おい、その人の殺せそうな睨みをやめろ。クソッタレ」
「…………なんで毒?」
「いい加減にーー」
「…………なんで毒?」
「…………その、悪い」
「ん? わかった。だからなんで毒?」
ハクレイの怒りにバッソは多少狼狽えている。少し、隊長としての威厳とかを失いそうな雰囲気がある。それでもバッソは、偉そうにしながらハクレイに向かってこう言った。
「このあとの任務では、お前とパルミナで組んでもらう。だが爆発でどうこうしてもらうつもりはない。毒殺でターゲットを殺してもらうことになるんだが、その間にパルミナが襲われちまえば、ひとたまりもねぇ。だから毒を撒き散らしても対応できるようにハクレイ、てめぇがパルミナを守ってやれ。今回はそういう作戦だ。だが、パルミナが毒を撒き散らすってことは、守っているやつも毒に侵される。毒に耐性を持つやつじゃないといけねぇから試した。悪いか!」
「いや、だからって飲ませる必要は……」
「ある!」
「う、うん。わかった。バッソ隊長」
バッソの迫力に負けたハクレイは渋々納得する。
「死ね! 変態は死ね!」
「あ、それヤバイやつ! ああああああああああああああ」
パルミナから紫色の怪しげな粉のようなものがぱらぱらと落ちていく。ルーイエの顔に。
それを直で浴びたルーイエは、口では言い表せないような危ない表情をしながらビクンビクン跳ねていた。
二人はたのしそうだなーと、ハクレイは思う。だけどこれは間違いだ。二人は絶対に楽しんでいない。
「おい、パルミナ! そのへんにしとけ」
「いくらバッソ隊長が言ったって無駄、絶対にやめない! ルーイエのあとはバッソ隊長にも毒を食らわせてやる! 寝ている間に体液を奪わせるってどんな変態ですか!」
瞳に大粒の涙を浮かべ、わめき散らす被害者の肩を、ハクレイがそっと叩く。
「パルミナ……。大丈夫、辛いのは最初だけ」
「な、なんか慰められた!」
「大丈夫、辛いのは最初だーー」
「二度は言わなくていい……。ハクレイはいつもパルミナにちょっかい出されてるものね。ハクレイも苦労しているんだ。ルーイエに何かされたら言いなさい! 私の毒で死ぬより辛い目に合わせるあらさ」
「ん、お互いに頑張ろ」
ちなみにルーイエはパルミナとハクレイに踏みつけられながら、毒でモザイク必須な状態になっている。毒による細胞破壊と触手のちからによる再生で、はっきり言って気持ち悪い感じだ。これにはバッソも笑うしかない。
「これ……明日の作戦は大丈夫なのかよ」
ことの原因を作ったバッソには引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
104
-
-
127
-
-
2813
-
-
3087
-
-
1359
-
-
58
-
-
768
-
-
70810
-
-
26950
コメント