家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

35話 久しぶりの学校ってなんか緊張するよね


6月23日金曜日  朝7:00


ーピピピッピピピッ

「お、下がった」

 春鷹は自室のベッドから起き上がり、脇に挟んでおいた体温計に目を向けている。

「4日も休んじまったよー」

 ベッドから降り、大きく伸びをする。
 ほとんど寝ていたせいか、背中からポキポキと音が鳴った。

「春ちゃん、おはよう!熱はどう?」
「母さん、おはよう。もう下がったよ」
「ホント!?大丈夫?まだ寝てた方が......」
「大丈夫だって。流石に1週間は休みたくないから」
「......分かった。でも、あんまり無理はしないでね」
「うん」

 母さんの後をついていき、朝食を食べる為リビングへ向かう。

「あ!お兄ちゃんおはよう!もう大丈夫なの?」
「心配かけてごめんよ、もうお兄ちゃんは大丈夫だ」
「ホントに!?良かったー」
「春、本当なの?」
「たーくん、病み上がりだから今日も寝てた方がいいんじゃないの?」
「姉さん達もありがとう。でも、もう心配はいらないよ」
「そう......ならいいけど......」

 なんて気のいい姉と妹たちなのだろうか、春鷹は本気でそう思っていた。
 だけど、もう一つ思っていたことがある。

「か、母さん、瑠美姉は?」
「瑠美ならもう大学行っちゃったよ、朝から講義があるんだって。なんか大荷物で出て行ったよ」
「そ、そうなんだ......」

 4日前に話をした以来、一度も瑠美姉とは会話をしていなかった。せめて顔を合わすのが食事の時だけ。春鷹が風邪で寝込んでいた時も、瑠美は見舞いにも来なかった。
 別に恨んでいるわけでもない。憎んでいるわけでもない。
 ただ......少し寂しかったのかもしれない。いつもノーテンキで明るい性格のムードメーカーと、スキンシップをとっていないだけでこんなにも寂しいものなのだろうか。

「何か用があったの?」
「え?あー、いや、なんでもない」

 瑠美の存在の重要さに気づく。
 もちろん、仲直りはしたい。
 でも、面と向かった時、春鷹はなんと言ったらいいか分からなかった。掛ける言葉を探していた。
 けど......見つからなかった......。










「うぅ〜んん!はぁ〜」

 外に出るなり、俺は今日二度目の大きい伸びをした。
 4日ぶりに吸う外の空気は絶品だった。

「たーくん、一緒に行こ」
「うん」








「よっ」
「おぉー、春鷹!4日ぶりだな!」
「お前は朝から元気だな」
「当たり前だろ!それが俺の売りでもあんだよ」
「そうかそうか」
「それより、大丈夫なのか?風邪の方は」
「あぁ。もうすっかり治ったよ」
「よっしゃ。じゃ、勉強教えてくれ!」

 そういえば、期末テストも来週か。
 やべ、休んでた分の勉強しないと。

「分かったよ」
「お!近衛じゃ〜ん!」
「近衛君!もう平気なの?」

 俺の数少ない友達の中の2人、柔風と大星が教室に入るなり声を掛けてきた。

「大丈夫だよ。心配かけて悪かったな」
「まったくよー」
「よかった......」

 柔風は相変わらずボーイッシュだな、大星の優しさは世界一です。

「は〜い。朝のホームルームを始めるから、みんな席着いてね〜」

 4日ぶりに聞く宇佐美先生のフワフワした喋り方。なんだか懐かしく感じた。

 先生の訳の分からない話はいつも通り聞き流した。みんなそうだと思う。でも、最後には、来週は期末テストだから勉強するようにだとか言っていた気がした。

「近衛くん、もう風邪は大丈夫なのかしら?」

 朝のホームルームが終わるなり、クラス委員長の伊藤さんが声を掛けてきた。
 クラスの人の体調管理も委員長の仕事なのだろうか?いや、ただ単に心配してくれているだけか。心配してくれているのは有難いが、これで何回目だろうか。

「安心してくれ、大丈夫だよ」
「そう。なら、今度の期末テスト......」

 な、なんだ?

「私が絶っっっっ対に勝つ!!」
「お、おう......が、頑張れ」

 それじゃと言って行ってしまった。
 伊藤さんも朝から元気だな。

「はぁ」
「どうしたんだ?ため息なんかついて」
「なんでもないよ」







 PVが5500を突破しました!ありがとうございます!皆様の応援を胸に抱きつつ、これからも日々精進していきます!


 それと、本編についてですが、自分の中でも結構後半のシナリオが完成しております。でも、なんていうか、進展していくのが難しいんですよ。いや、ホントに、マジで。
 投稿頻度はあまり芳しくありませんが、何卒よろしくお願いします。
 ではまた。



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