家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

7話 一度あることは二度ある


 疲れきった様子で家の帰路を歩いていた。

「今日は普通で頼むぞ......母さん達......」

 完全なフラグにしか聞こえないが、俺は祈る。祈り続ける。


 家に着いた。

「よし!」

 玄関のドアを開ける。

「みんな!ただ......」

「春ちゃん、お帰り!お母さんと一緒にお風呂入ろ♡」
「......冗談きついぞ、母さん」
「春くん!今日は一段と遅いよ!何してたの?」
「春。ガールフレンドでも出来た?」
「瑠美姉、後で話すよ。それと瑠奈姉、勝ってな事言わないでくれ。みんなの視線が痛いから」
「たーくん、遅いよ!お姉ちゃん心配したんだよ!」
「俺は里姉の方が心配だよ......」
「春お兄ちゃん、お帰り!早速だけど、お兄ちゃんの部屋のベッドの下から見つけた絵本読んで!」
「はいはい。お風呂入った後で......ん?今何て言った?」

 俺のベッドの下......?..................ぇ?......それって......俺が亜紀斗に借りたRー18本!?何故知っている......!?

「へ、へぇ〜。ベッドの下から見つかったのか〜。それはお母さんにも読んでほしいな〜」
「あ、あはは......」
「そうだよね〜。春くんも男の子だもんね〜」
「瑠美姉から殺気を感じるのは気のせいでしょうか?」
「春。私を使っても......良いんだよ......?」
「ボクニハナニモキコエナイ」
「たーくんの浮気者!」
「もうやめてくれ〜!」
「みんなどうしたの?」
「え?い、いや、何でもない!何でもない!さぁ、ご飯食べようね。ご飯」
「うん!」
「ご飯〜ご飯〜」








「ふぅ〜。危ない危ない。危うく俺の秘蔵
コレクションが見つかるところだったぜ」

 まぁ妹には見つかってるんだけどな......。

「しっかし、よく見つけたなぁ真子」

 可愛い妹ながら恐い存在だな。
 もっと高いところに隠そう。

「よしっ!これで大丈夫だろ。さぁて風呂でも入るか」


 風呂場へ向けて階段を降りると、リビングでこそこそと話し声が聞こえる。
 数秒後、じゃんけん大会も始まった。

 はぁ〜。またか?また、俺の寝床に潜り込んで来るのか?
 対策を考えないと......。
 うーん......しかし、対策が出来ない。部屋には鍵がないのだ。

「まぁ風呂入って考えるか」

 脱衣所で衣服を脱ぎ、頭と身体を隅々まで洗い、湯船に浸かる。

「ふぅ〜。気持ち良い〜」

 至福の時だ。

「そんな事より......対策を考えないとなぁ......」

 うーんと考え込んでいると......

ーガラガラガラッ

 脱衣所に誰か入ってきた。
 風呂入りに来たんだよな?
 こっちからは黒いシルエットしか見えない。もぞもぞと動いている。

「おーい、俺入ってるぞー」
「......」

 返事は返ってこない。
 しかもシルエットは動きを止めない。
 そして気づく......衣服を脱いでいることに。

「ちょ、ちょっと!誰!?何で脱いでんの?」

ーガチャ

 風呂のドアが開いた。

「春。私も入る」

ー正体は瑠奈姉だった

 短めの髪に、真っ白な肌をタオルで隠している。

「何故ここに?」
「勝ったから」
「勝った?」

 何に?........................あ!さっきのじゃんけんか!
 で、でも、あれは夜這いのじゃんけんなんじゃ......?
 ......そうか!報酬を変えてきたのか!
 何て事だ......。

「背中流してあげる」
「いやいいよ、もう洗ったし」
「じゃあ......私の背中流して」
「何でだよ!」
「だって......せっかく......」

 そんな露骨にがっかりされると、可哀想になるんだよ......。

「分かった分かった。流して良いよ」
「本当!?」

 パァっと顔が明るくなり、ガッツポーズをしている。
 俺は湯船に上がり、風呂椅子に座る。
 瑠奈姉は、黄色いスポンジにボディシャンプーを付け、くしゅくしゅと泡立てている。

「いくよ?」
「う、うん」

 丁寧にゴシゴシとスポンジを上下に動かす。
 意外と気持ち良いな。

「どう?」
「あ、ああ。上手だよ」
「良かった」
「......」
「春の背中って......」
「ん?」
「大きいんだね?小さい頃、よく洗いっこしてたけど、昔とは大違い」
「当たり前だろ」
「そうだね。ふふっ」

 小さい頃ね......。確かによく姉ちゃん達と一緒にお風呂入ってたなぁ......。

「懐かしいなぁ。あの頃はまだ姉ちゃん達ペッタンコだったなぁ」
ームカッ!
「......成長が遅くてごめんねぇ!」

ーゴシゴシゴシッゴシゴシゴシッ!

 スポンジを動かす手が速くなる。

「痛い痛い!何?何で!?何だかよく分からないけど、背中かが......燃えるように熱くて痛い!!」



「いやぁぁぁあぁあぁぁ!」











ーその夜。変な声が聞こえると通報があった事は、まだ誰も知らない......。










   今日はこの辺で!






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