家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

6話 会長顔の里姉


 一人の女子生徒が壇上に上がる。
 綺麗な夜空を幻想させる繊細な黒髪に、モデル並みのスタイルを誇り、まさに美少女といえる。
 俺の姉、里見姉さんだ。
 昨日や今朝の事が嘘のようなキリッとした顔に眼鏡をかけ、超大真面目の生徒会長だと一目で分かる。
 里姉......。本当に薬とか使ってないよね......?俺は心配だよ......。姉さんが変な麻薬売りの人に騙されてるんじゃないかって心配だよ......。

「皆さん、おはようございます。暑い中集まって頂きありがとうございます。各自、担任の先生から聞いているかもしれませんが、今から約一ヶ月後に校内文化祭を控えています。今日は、その事についてお話しさせて頂きます。......まずー」

 生徒会長の里姉は、次々と文化祭の事について説明をする。無駄なく分かりやすいように工夫しながら。

 説明していた事は、文化祭の出し物についてだ。
 食中毒の危険があるため、生物なまものなどが禁止で、スーパーなどで買い物をしたい場合はそれぞれの予算内で済ます事、とのことだ。
 まぁ安全面は重視しないとだよね。

「これで説明を終わります」

 里姉はステージから降壇した。

「それでは解散となります。本日の放課後から出し物についての話し合いを、各クラスで始めてください」

 文化祭の説明が終わり、俺達は体育館を出た。
 出て早々に亜紀斗は文化祭の事ではなく、里姉について話し始めた。

「良いよなぁ春鷹は。あんな美人の姉がいて。この幸せ者め」
「あ、あはは......」

 里姉の家での生活を見たら、亜紀斗はなんて言うのだろうか。

「近衛って、他にも姉さんいるんでしょ?家族が多いのは羨ましいなぁ」
「そうか?ワイワイうるさいぞ」
「良いじゃん、賑やかで」
「確か、姉3人に妹1人だったよな?」
「そうだよ」
「この野郎〜。春鷹のくせに〜」
「俺は悪くない。色々言いたいなら、俺の親に言ってくれ」
「分かった、今日行く。春鷹の姉3人をくださいって頼むわ」
「亜紀斗は一生、俺の家に上がる事はないだろう」
「ひどい!」

 お前のようなイケメンに......俺の姉はやらんぞ!......なんか、親みたいだな。






ー放課後

「それでは、一ヶ月後の文化祭についての話し合いを始めます。委員長の伊藤さん、お願いしま〜す」
「はい」

 我ら3組のクラス委員長、伊藤さんが前に出る。
 あまり話した事はないが、成績は学年2位だという。

「これから、文化祭についての話し合いを始めます。出し物について、何か案がある人はいますか?」
「はい!」

 元気良く手を挙げたのは、俺の前の席にいる亜紀斗だ。

「はい。白野君」
「サッカーが良いと思います!」
「却下」
「えー!?何で!?」

 それ、朝に俺が否定したよな......?

「すいません、否定するのが早すぎました。......教室で、どのようにサッカーをするんでしょうか?」
「あぁん?そんなの決まってんだろ。......ゴール2つを対称に置いて、ボール蹴れば良いんだよ」
「却下」
「何でだよー!?」

 少しは変えろよ。そのまんまじゃねぇか。

「違う案がある人は、手を挙げて下さい」
「はい」

 次に手を挙げたのは柔風だ。

「はい。柔風さん」
「喫茶店!」
「良いですね。さっきのサッカーとかいう意見とは真逆ですね」
「ありがとう!」
「何だと!......負けない!俺は絶対諦めない!」

 このサッカー馬鹿が!円堂 ○にでもなったつもりか!
 柔風の案が黒板に書かれる。



 その後も案は沢山出された。
 お化け屋敷、映画館、休憩所、クラブハウスなど、色々と出た。
 最終決定はまた後日との事だ。これで今日はさよならだ。

「起立!注目、礼」
「「「「さようならー」」」」
「は〜い。さようなら〜」

 次々と生徒が出て行く。俺たちもそれに続く。

「帰ろぜ〜春鷹」
「おう」
「じゃあね。また明日、近衛、白野」
「バイバイ。近衛君、白野君」
「また明日な」
「じゃあな」

 亜紀斗と一緒に生徒玄関へ向かう。

「なぁ。俺の案、何がいけなかったんだ?」
「自分で考えろ」
「えー......うーん。........................おっ!分かったぞ!」
「ほう。早いな」
「みんな、サッカーが嫌いなんだ!」
「......」



 俺は確信した。こいつは......













 ー馬鹿だ。







     今日はここまで〜
 

 

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