甘々イチゴと滑らかカスタード

mimi

6話「抹茶な気分」

鞠音ちゃんに頼まれたのはお茶会に出て欲しいとのことだった。
「それって私たちに務まる?」
「うん。それと抹茶に合うお菓子を作って来てくれる?宣伝にもなって悪いことじゃないんじゃない?」
これはなんか怪しい。
「で本音は?」
「ここら辺で私の顔が立たないと事情込み込みで大変なことに!」
ますます怪しい。

「うーん。スミレちゃんはどう思う?」
「しょうがない。話に乗るよ。人材が惜しい。」
「しゃぁ!決まり!!!」
予定はこんな感じ
お茶会に友達として私とスミレちゃんが招待される。そこで出すお菓子抹茶に合うお菓子を出す。そこで鞠音ちゃんの人脈を見せるとともにお店の宣伝!

「にしても何作る?」
「わかんないから2人を捕まえたの。」
「あぁ。なるほど、」
「抹茶に合うお菓子、、お茶会には他に誰が来る?」
「んと、確か祖母のお友達、っていうか卸売業のお偉いさんとか、仕事柄絡むことの多いお偉いさんかな。私もよくはわかんないけど。」
「となると大体、、、」

「スミレちゃんいいの浮かんだ?」
「なんとなく。」
「と言いますと?」
スミレちゃんは「はぁ。」っと言わんばかりにため息をした。
「お茶会っていうのは方書き的には交流会だったりするけど今回は別の話。実際のところ鞠音は仮にも令嬢なわけでお茶会は瀬崎家の家系を左右すると言っても過言では無い。でも鞠音は大体不発続きだった。」
「あったってる。」

「で、ここからが本題なんだけど。圧が多くなる事によってなかなかオッケーしてくれる人がいなかった。そんな中起こったのが機能のこと。私達のメンツの中に社会人の嶺杜さんがいた。」
「だったら嶺杜さんを誘えば良かったんじゃない?」
「ちょっと!」
「これじゃあ私の株が下がるじゃん!?補足させて!別に利用する為にとかじゃないからね!?古橋さんの実力とお店の状況と私の状況を考慮した上だから!単に上手い人を連れて来ればいいってもんじゃないの!友達とかも紹介するのもお茶会なの〜!」

ぜはぜは呼吸を整えながらこちらの回答を待っている。
(スミレちゃん。どうする?)
(悪くない条件だから、受けたい。一の意見を聞きたい。)
(私も受けた方がいいとは思うけど、、これで失敗した場合。どう責任とれば!?)
(策はある。それに成功したときの報酬は高い。)
「策はある。だが、一を騙しかけた代償は償ってもらう。」

「だ、代償。」
「スイーツ又は果物の直売してほしい。」
「本当はダメなんだけど、、うちの畑で作られたものを使用しています。ってセールストークになるし、型落ち品なら承諾します!」
だめだ、ついてけない。
「で、で、策っていうのは??」
鞠音ちゃんの目がすっごくキラキラしてる。
「抹茶シフォンケーキ。」
「そんだけ?」
「御老人にはもってこいでしょ?」
おい。

その日の午後。
「よろしくお願いしまーす!」
試作品作りが始まった。
もちろんスミレちゃんは見学です。
「で!シフォンケーキって難しくない?」
「まぁね。でもコツ掴めば簡単に作れるよ?材料は持ってきた?」
「こんなんで大丈夫なの?」
鞠音ちゃん家が管理している食材、卵、小麦粉、粉末の抹茶、ベーキングパウダー、グラニュー糖、サラダ油、水、塩。
「塩はなんで入れるの?」
「その方が甘さが引き立つんだよ。」

「最初ボウルに卵黄と半量のグラニュー糖、サラダ油、水を加えてよく混ぜてね。」
「こんな感じかな?」
腕のスナップをよく聞かせて振る。
「綺麗に出来てるね!でももっと混ぜないと分離しちゃうかも。
「了解!」
「次に抹茶、薄力粉、ベーキングパウダー、塩を袋で混ぜて、さっきのボウルに入れてよくかき混ぜてね。ここで失敗しちゃうと美味しくできないの。」
「ふぇぇ。ギフだよ〜。」

「じゃあ休憩がてらハンドミキサーで卵白を泡立てます!6部たてぐらいかな。」
「はい!」
「あ!いい感じじゃん。残りのグラニュー糖を加えて泡だててみて!?ツノがピンと立つくらいだよ〜!っていい感じ!」
「ふぅ。」
「で!ここからが一番難しんだけど、、」
「うん。泡をつぶさないようにしなきゃなんでしょ?」

「そーなの。」
「私も苦手なんだよね。でも混ぜすぎないように丁寧に混ぜれば大丈夫!ここは時間勝負だから気を抜かないで行こうね!」
「はい先生!」
「次に生地を型に流して型ごと数回トントンと台に落とし空気を抜く。ここも大事だからやりすぎなぐらいでお願い!!!」
「了解!」
「最後に170~180度に熱したオーブンで40~50分焼きます。ここで暫しの休憩だね!」
「やっぱりシフォンケーキは体力勝負だね。もーくたくた〜。」

「お菓子作りは基本体力勝負なんだよね。その分食べても太らなかったり。」
「確かに古橋さん痩せてるね。お菓子得意なのに。」
「私は特別なんだよ。手作りお菓子しか食べないだけ。」
「なんで?」
「昔ね。お母さんの作ったショートケーキがとっても美味しくさ、他のスイーツがそこまで美味しくなく思えたんだよね。なんてゆーか作った人の思いかな。そんなのが感じられるんだよね。」


「お母さん料理上手いの?」
「全然。」
「でも良いなぁ。」
「うち農家だから全然ケーキとか作ってくれないし、家に帰れば作ってもらえたり?」
「うんん。お母さんもう居ないの。事故に遭ってね。」
「ごめん。軽はずみだったね。」
鞠音ちゃんが察したように切り替える。
「今は全然気にしてないよ?むしろお母さんありがとうってゆーか、お母さんがいなかったらこんな料理上達しなかったし。」

あれ。
何言ってんだ?まるで言い訳してるみたい。
「てか、あれはさ。両親が車の前席にたまたま座ってたからで、事故だって偶然が重なったみたいな。だから、だから、、。」
だからって何?
「あのね〜。別にしょうがなかったって感じなんだよね。」
「古橋さん?」
「どーかした?」
「泣いてるよ?」
え?

「泣いてるって。」
目をこすってみる。
「あれ?汗かな、、可笑しいなぁ。」
「本当ごめんね。」
次第に涙が止まらなくなっていく。
「一。」
「大丈夫。」
「おばさんも一が頑張ってるの知ってるよ。だから自分のしたことに責任を持て。ここにいるみんなは一の味方だ。」
そーだね。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫だから続きやろうか。」
「うん。」

気を取り直して、、。
「取り出すよ。」
オーブンの中を見るとしっかりと膨らんだシフォンケーキが。
「古橋さんこれは?ドリルみたいだけど。」
「これはこう!」
シフォンケーキが入った型をひっくり返し、ドリルに差し込む。
「これで粗熱冷めるまで放置なんだけど。換気扇の所に置いとこ。」
生地が冷めるのを待ってから型から丁寧にはずす。
「仕上げに生クリームでトッピングすれば、完成です!」

「美味しそう!」
「だね!」
「早速試食〜!」
「っとその前に。」
でました。スミレちゃんの写真タイム。
「アイスタにあげるの?」
「それもあるけどメニュー表でも。」
「ですよね。」

「改めまして、「いだだきます!」」
作ったお茶と合わせていただく。遅めのティータイム。
一口食べていると抹茶の味がちゃんとしている。初回って事もあって多少パサついてる所もあるが、お茶と合わせると紛れる。
「ちょっとパサついてるかな。」
「そお?美味しいよ。」
「美味しい。」
「よかった〜。」

そして当日。
「はじめまして。9月18日にオープンするカフェの店主兼鞠音さんの友人の加藤スミレです。」
「ご丁寧にありがとう。瀬崎です。これがうちの野菜で作ったシフォンケーキかな。」
「はい。ご賞味ください。」
(ねえねえ。いっちゃん。)
(はいはい。鞠音ちゃん。)
(全然うちらと喋り方違くない?)
(それはね。営業だからだよ。)
(それあり?だったら普段から愛想よくすればいいのに。)
(だよね。)

「おー!これは美味しい。」
「抹茶と合いますね。」
「良い香り。」
「これはきっと素材がいいのよ。流石瀬崎農場。」
「ありがとうございます。」
(いっちゃんが作ったからなのに。)
(そんな事もあるよ〜。)
「鞠音?お客様呼んでる。」
「はーい!」

「あ、いっちゃん今日はありがとう。」
「バイトぐらいだったら輸送の他に接客もするよ!」
「ありがとう!!!是非是非お願いね!」
「バイトの確保成功。」
「スミレちゃん!?」
「win-winだったね。」
「まぁ。そーだね。」
「今日はもうおしまい。お茶会楽しんできたら?」
「スミレちゃんが優しい。」
「明日から試作品バンバン作ってもらうから。」
「厳しい〜。」

コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品